ディープジャパン
原点はアメリカ
成田美名子先生の「サイファ」を初めて読んだ時、幼い私は衝撃を受けました。
こんなにもリアルなアメリカ……街の景色、教育システム、風物、風習など、特にびっくりしたのは「子どもでも個性を活かして働ける」という点だったように感じます。それは主人公で子役から俳優であるサイファだけでなく、手先の器用さとセンスを活かしてアメリカンパッチーワークをする主人公のアニスもそうでした。歌を見込まれ歌手を目指す者もいました。
アメリカとは誰もが夢を持てる土地であり、しかし時に命さえ奪われる危険な国でもあると「サイファ」は教えてくれました。愛おしい人の命が奪われるのは大きな痛手。しかし登場人物たちはそれらを超えて進んで行きます。
そして私の勝手な解釈ですが、成田先生の興味は少しずつ日本へ日本へと向かっていったのではないでしょうか。
日本へと近づいて
次次作である「ナチュラル」では、ペルーの貧困層に生れたミゲールが日本に保護され、日本の生活に溶け込むも謎の男に命を狙われるようになります。家族の理解に恵まれながら、結局過去からの因縁が原因であると判明。しかし、舞台はあくまで日本であり、バスケやペルーのシーンもあるものの、神主である先輩榊原の存在はじめ日本の文化色が強くなってきたなぁ……と私などはビックリしたものです。
そして「花よりも花の如く」なのです。
ディープジャパン
能。
ビックリしたなどと言うものではなかっだです。
しかも「ナチュラル」の登場人物が続きとして出て来ていて、殺人などのシーンは一切ない。
あるのは主人公である能役者の憲人の日常、修行と恋とささやかな、でも重大なトラブル解決の日々。
もちろん能の魅力も余すところなく描かれる。
「恋重荷」と言う段は謡の内容と現実が絡んで特に読みごたえがありますね。
海外公演に向かう姿は描かれるが「あくまで外国、話せない者もいるよ」という設定二リアルを感じました。
能役者としての成長と、一青年としての憲人の成長が背中合わせで描かれていて、今までぼんやりのめがね君と言われていた憲人が、自分の範疇と言うかキャパにない仕事をやり終えた時、妹に(かっこ良くなったみたい?)と思わせるシーンが印象的です。
年頃の男性らしく好きになった女性もいるのですが、ライバル(?)らしき男が現れたり、彼女自身の心の葛藤もあるらしく上手くいかない。
そこを投げださず、じっくりと、時に大胆に向き合っていつしか彼女の辛い過去を解きほぐす手伝いをするようになり……。
彼女とのこれからは分かりませんが、憲人が少なくとも彼女にとって信用に足る人間になったのは確かで、これからの展開が楽しみなマンガです。
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