空に描いた夢
小さな夢が情熱と信念を生む
涙なくしては見終わることができない。それは悲しい涙でも辛い涙でも嬉し涙でもない。人が信念を持って幾つもの苦渋の選択をしながら生きる姿が尊いから。
成すべき事を成しえるのに並大抵の夢見事や情熱では叶えることができない事を誰もが知っている。そして一人では人は何もできない。
対局な二人
報道部での仕事を目指す若き女性ディレクターと、幼き日に見た航空ショーの感激を胸に難関のブルーインパルスパイロットを目指した青年。いわば信念で生きる女と情熱で生きてきた男。共通点は二人とも夢を叶えられていない自分と日々もがき続けている境遇だ。
奇跡と呼ぶべきか必然というべきか
始まりはテレビ局の”制服特集”企画を不本意にも任された報道志望の稲葉リカが航空自衛隊の取材で略して空自の広報室に出入りするところから。
そこには不慮の事故でパイロット免許を失くした空井大佑が夢を断たれた失望感から抜け出せない状態で居た。そんな二人を取り巻く広報室のメンバーの個性的なキャラクターがドラマを楽しくさせる。後に彼ら一人一人も懸命に生きてきたドラマがある事がわかるのだが…。
そしてまた一般人にはわからない空自広報室の「航空自衛隊を理解してもらいたい」という思いで一杯の活動も一見の価値ありだ。ドラマの随所で空井が熱く語る、ブルーインパルスのパイロットになるためにいかに大変な訓練と試験をクリアしなければならないか。
3年を期限にどこに移動させられるかわからない自衛隊員の大変さ。防衛大学で特に女性隊員が苦しみながらも夢と信念を抱き、日々頑張っているか。見ていてとても真似できないとひしひし感じながら、志高い人間の姿にひとりでに涙が溢れてくるのだ。
そんなある意味重いテーマでも最後までドラマをみ終えられたのはキャストの素晴らしさだろう。パイロットへの夢を断たれたが広報室の仕事に夢を持ち始め新たな目標を見つけ奮闘する空井大佑に綾野剛さん、がむしゃらで正義感と信念の塊のような稲葉リカに新垣結衣さん、二人を親のように見守る広報室長の柴田恭兵さんと稲葉の上司に生瀬勝久さん。広報室の面々も、素晴らしいオヤジっぷりを演じる水野美紀さん、チャラ男的存在の要潤さん、ここにも出てたんだ!?と嬉しくなったムロツヨシさん、などなど。
空井と稲葉がお互いを大事に想うあまりに一度は離れてしまうが運命が、いや二人の強い想いが再び二人を結びつける。
それ以上にやはり映像として心に焼き付くのはブルーインパルスの飛行シーンだ。詳しくは書ききれないが、空井と稲葉が離れるキッカケに東日本大震災が起こる。被災者に夢を与えるのもこの鮮やかな飛行シーンだ。今は辛くても空は広く広がっていて未来は自由できっといい事があると思わせてくれるのだ。戦争の為でなく救助活動の為だけでなく、夢を未来を切り開く夢を描くのもパイロットの大きな仕事の一つなのかもしれないと感じたドラマだった。
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