何故この二人にスポットが!?
障害を抱えた登場人物たち
「ONE~輝く季節へ~ 第3巻 雪の章 みさき・澪」におけるメインキャラクターは、作品タイトルが示す通りです。
川名 みさき(かわな みさき)、上月 澪(こうづき みお)における共通点はそれぞれ障害を抱えたキャラクターだといえます。しかし、何故この二人にスポットを当てたのか、その必然性が全く分からないです。視力のない「みさき」と、声のない「澪」では、相互のコミュニケーションが成立しない者同士です。アニメ本編の冒頭で、二人が登場する場面が描かれています。しかし、当然のことながら、コミュニケーションは成立していません。
最も相性の悪い者同士といえるのです。
しかも、主人公と設定されている折原 浩平(おりはら こうへい)に対し、上級生の「みさき」、下級生の「澪」では接点がないように思えます。少なくとも、「みさき」と「澪」は二学年違うことになり、同級生としての接点はないでしょう。そして、幼馴染という関係性でもないと思われます。
そして、アニメ本編の冒頭では、「みさき」と「澪」が同時に登場する場面が存在するも、それ以降は二人が同時登場する場面はありません。コミュニケーションが成り立たないので、同時登場させられないのです。
明らかに無理がある選定をしてしまったように感じられます。
障害を抱えた登場人物という存在は、なかなか他のアニメ作品で見受けられるものではありません。
そういう観点では、とても斬新なものだと受け止めて良いのではないでしょうか。しかし、二人とも同時に扱うという展開に、無理矢理である印象を拭えないように思えます。
本当に目が見えないの?
「みさき」において、アニメ本編の冒頭で、学校の屋上から夕陽を眺めている場面が描かれています。
また、「みさき」が夕日を眺める場面において、冒頭部分だけではなく散見されます。少し疑問に思えてしまう場面で、こういう描写をしていると「みさき」に視力がないことが信じられなくなってしまいます。「きっと見えていないはず」と言い聞かせながら観ていましたが、この描写がアニメ本編をややこしくしてしまっているように思えます。
しかも、冒頭でこの場面を描いていることで、「みさき」は視力のないキャラクターであることを理解するのに時間を要してしまいます。
綺麗な描写にしたい意図は理解できますが、観る側からすると不親切なものではないでしょうか。視力がないにしても幾つかパターンがあるのだと思います。全く見えないのか、視力が極端に弱いのか、それとも限られた色だけ認識できないというものあります。そういった部分が明らかに表されていないことで、余計にややこしくしてしまっているのだと思います。
OVA作品から初めて「ONE~輝く季節へ~ 第3巻 雪の章 みさき・澪」を観てしまうと、理解できないことが多いように感じます。
それだけ初心者には不親切な描写が多く、「ONE~輝く季節へ~」シリーズの起源である恋愛シュミレーションゲームをプレイしていないと飲み込めない展開が多いです。きっと、起源である恋愛シュミレーションゲームをプレイした方に向けられたアニメ作品なのは間違いないことなのでしょう。
そして、そこに特化したOVA作品というのも珍しいものだといえます。
一般的には、OVA作品からコンテンツの魅力に触れてもらい、起源であるゲーム媒体に誘導するものが多いのではないでしょうか。その為、初心者にも理解できるような、コンテンツそのものの紹介を目的にした内容が多いように思います。
よく分からない「澪」の扱い
「澪」という登場人物が、どういった位置付けのキャラクターなのか分からないです。
「ONE~輝く季節へ~」というコンテンツのキーマンである折原 浩平(おりはら こうへい)とは接点があるようです。しかし、恋愛対象なのか、それとも恋愛対象の引き立て役なのか、分からない点は多いようです。
折原 浩平の恋愛対象と設定されていると考えてみても、そういった部分に向けられた気持ちは弱いように描写されています。そして、恋愛対象は別に存在して、その引き立て役として考えてみても、その強調されるべき恋愛対象が見当たらないように思えます。もし仮に、「みさき」がその恋愛対象であり、「澪」は引き立て役だと考えてみても、二人に接点はないように思うのです。
元より相性が悪く、コミュニケーションが成立しない「みさき」と「澪」です。
「ONE~輝く季節へ~」というコンテンツにおいて、「澪」という存在が何なのか、いまいちハッキリしていないように思えます。すなわち、実は居なくても、物語そのものは成立するように感じられるのです。そう考えると、せっかくスポットが当たり登場しているにもかかわらず、とても気の毒なキャラクターだと思えてしまいます。
ただ、折原 浩平の恋愛対象として強い人物は、「澪」ではなく、「みさき」なのであることは理解できます。
- あなたも感想を書いてみませんか?
- レビューンは、作品についての理解を深めることをコンセプトとしたレビューサイトです。
コンテンツをもっと楽しむための考察レビューを書けるレビュアーを大歓迎しています。 - 会員登録して感想を書く(無料)