一度では理解できない詐欺のメソッド!
世界恐慌の頃のアメリカを感じさせる映画
映画の舞台となるのは、世界恐慌時代のアメリカ。人種差別や賄賂などは日常茶飯事、金と権力があれば何でもできた時代に繰り広げられる一流ペテン師たちの一大詐欺を描いた映画だ。
なによりもまず、注目したいのは映画に出てくる街並みや人々の服装!
昔のアメリカはこんなだったのか!古くて汚いけれど、味がありどこか懐かしい…。そんな描写が端々にでてくる。
私のお気に入りは、ポール・ニューマンが演じるヘンリー・ゴンドーフの着こなしだ。
ペテン師仲間と作戦会議をしている時、タンクトップにサロペットをして帽子を被っている姿は本当に格好良くて、見とれてしまうこと間違いなし!
駅や列車、街中のダイナーやトイレなど、当時のアメリカにタイムスリップできるそんな映画だと言えるだろう。
味のある個性派キャストとその演技
昨今のハリウッド映画や邦画では、美しい女優さんと格好いい俳優さんが欠かせない。
しかし、このスティングはスーパーかっこいいイケメン俳優から、なんでこの人なの!?みたいな方まで本当に味のあるキャスティングだ。
私のお気に入りは、ヘンリーゴンドーフの友人であるビリー役を演じるアイリーン・ブレナン。
決して美人だとは言えない彼女だが、演技力やオーラは画面を通じて感じる。
特に娼婦宿にフッカーを探しに来たスナイダー刑事が、ビリーに店内捜索を詰め寄った際、ビール勧めてきた彼女の手にビールをかけるシーンは私のお気に入り。
突然の無礼な行動に全く動じず、表情1つ変えない彼女はまさに娼婦宿をきりもりし、超一流ペテン師ヘンリーをかくまっている女、そのものだ!
実はこのシーン、ビールを彼女の手にかける演技はアドリブだったというのだからやはり彼女の演技力は素晴らしい。
また、どの役の視点で観るのかによってこの映画の捉え方はかわってくるのも魅力だ。
ヘンリー目線で観ると、フッカーはどうしようもなく自信家で傲慢だか憎めない若造であり、ロネガンをだますことへのリスクや恐ろしさを理解し、仲間を取りまとめることへの責任感を感じていることが良く読み取れる。
フッカー目線で観ると、ヘンリーがやることは遠回りな気がしてイライラするし、自分の軽率さからいろんなボロがでるものの必死に隠そうとしてしまう、若者ならではの心情が読み取れる。
ロネガン目線で観ると、底辺から成り上がってきたものならではの、人を信用せず自分の敵は1人残らず潰すという徹底した信念とお金に対する執着心を読み取ることができる。
この楽しみ方ができるのは、個々のキャストの演技力の高さ故であることを否定できない。
あなたは一度で見破れるか!プロの一大詐欺!
この映画の目玉といえば、ヘンリーとフッカーを主として繰り広げられる競馬詐欺だ。
これを一度で理解できる人はペテン師の素質がある人だけだろう。
私は初めてこの映画を見た時、何この映画、つまらない、と思った。なぜなら意味がわからなかったからだ。二度目、三度目と見ていくうちにどういう詐欺なのかの理解が深まっていく。それがこのスティングだ。
あぁ!!!!そういうことね!!!とわかった時の快感と言ったら他の映画では味わったことのない感覚!!!
この感覚を味わうだけでも、この映画を観る価値は言うまでもなく計り知れないのだ。
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