多様性の時代で選ぶ結婚や人生のスタイル - 結婚しないの感想

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結婚しない

3.753.75
映像
3.25
脚本
3.50
キャスト
4.00
音楽
3.25
演出
3.50
感想数
2
観た人
4

多様性の時代で選ぶ結婚や人生のスタイル

4.04.0
映像
3.5
脚本
4.0
キャスト
4.0
音楽
3.5
演出
4.0

目次

いろいろな結婚観

それぞれの事情で結婚していない男女を中心に描く
ハートフルな日常ドラマ。

管野美穂、天海祐希、玉木宏、と
大好きな俳優さんたちの出演だったので
当時リアルタイムで見てた。

結婚適齢期の男女が結婚できるできない、
を取り上げたドラマはよくあるけど、
このドラマはタイトルにもあるように
「結婚しない」という
自発的なニュアンスを含んでるのが、
当時としてはめずらしいような気がして
興味をひかれたのを憶えている。


管野美穂演じる「千春」は、
結婚願望はあるけどなかなかできなくて焦っている35歳派遣社員。

天海祐希演じる「春子」は
かつて上司と不倫関係にあったことが原因で、
一生独身を貫く45歳キャリアウーマン。

玉木宏演じる「純平」は
画家の夢に挫折して人生模索中の32歳アルバイト店員。


みんな妙齢で、自分の人生設計に不安や焦りを抱えていて
だからこそ、「結婚」というものに対しても
真剣に悩んだりもする。


「結婚」を人生設計の大きなポイントとして組み込んでいる人にとっては
そりゃあすごく悩むだろうし、大事なことなんだろうなあ、とは思う。

私個人としては、「結婚」という形態には執着したことがなく、
自分の人生の中であまり重きをおいていない。
その代わり、
「男女のパートナーシップ」ってことには
ものすごく探究欲求があるから、
だからこそ二度も離婚したりもしたのかもしれないけど
興味の対象が違うので、なかなか共感はしづらかった。


特に一番共感できないのは、
千春の会社の同僚のような、
「結婚相手を条件で選ぶ」タイプだ。

よくあるテーマでなじみ深いけど、
私は生まれてこの方、恋人にしろ旦那様にしろ、
「条件」で相手を選ぶということが
まったくできないししたことがないので、
水と油みたいにまるっきり受け入れられない価値観だ。

でも、それが良いとか悪いとかは思ってない。

「条件」を考慮に入れられる感覚があることで
堅実な生き方って創っていけるだろうなあ、と思うし
現代社会は生きやすいだろうと思う。

ただ、自分にはできない、ってだけ。


登場人物の中で一番自分と近いと感じたのは
天海祐希演じる春子、かな。

一生独身を貫こうと決めてるとこは違うけど、
「自分の気持ち」に従って物事を決めていくところとか、
「春子さんはいつも『正しい』ですよね、
でも、世の中正しいだけじゃ成り立たないことだってあるんです!」
と言われてしまうようなところとか。


ただ、全体を通して、
「結婚だけがすべてではない」
ということが根底に流れている気がして
そのニュアンスを、とても自然にリアルに
登場人物の心情とからめて描いているのは
とても共感した。

その中で、千春の母のセリフでとても共感したものがあった。

千春の母は、千春に早く結婚しろしろとうるさかったのだけど、
千春や千春の妹たちの色々を通して、
ドラマ後半でこう千春に言うのだ。


「結婚て、ゴールじゃないのよ。
結婚てね、ひとつの通過点にすぎないのよ。
そこから、いつもの毎日がずっと続いていくの。
だからこそ、いつもと変わらない毎日を
一緒に積み重ねていけるような人と一緒になってほしいな、
って、今は思う。」


そう、私も本当にそう思う。
「結婚」した時も実感したし、
だからこそ、スタイルは人それぞれだと感じた。

「いつもと変わらない毎日」とは
自分らしく、「自分を生きる」毎日でありたいと
私は願った。

「人生をともに歩むパートナー」としては
そういう毎日を共に歩める人、とずっと願ってきて
今はそれを実感しながら毎日を紡いでいるので
やはり自分の幸せにとってそれは大切なことだな、とかみしめているのだけど。

物語は、千春と純平、お互いの想いが通じ合い結ばれるけど
それぞれの道を歩むことを選択し、結婚もしない。

そのハッピーエンドのスタイルが、
こういう恋愛系ホームドラマ物語としては
斬新だと思った。

時代の多様性を顕しているのだろう。

ハッとするような言葉とシーンが印象的

このドラマ、結構平凡なストーリーだし
平凡な日常を等身大で描く、というのが特徴のような気がするけど
その中に、ときおり、ハッとするような言葉の表現があって
当時リアルタイムで見た時にすごく記憶に残って
今でも大切に私の中で生きている言葉がある。

「純平」が「春子」に言うセリフ。

「誰かのことを大切にしたいと思ってる人は
きっと誰かの大切な人なんだと思います。」


この言葉が本当に好きで・・・。


そしてこのエピソードがまた素敵なのだ。


花屋で働いている春子は、

痴呆で自分のことが分からなくなっている祖母に
花束をプレゼントする。
すると祖母から、新しく花束を作ってほしいと頼まれる。
大切な人に渡したいから、と。
後日、祖母に花束を渡すと、その場でその花束を手渡される。
驚く春子に、
「この間花束をいただいたから、あなたに。
花束を受け取ってくださる方に出会えて、本当に良かった」と。


祖母にとって春子は、見ず知らずの人として映ってる。
だからこそ、この祖母の想いの純粋さが沁みるのだ。
血縁や、相手との関係性で判断してるのではなく、
人と人としての、「ありがとう」という想いから、
花束を通してその「想い」をめぐらせている。


このワンシーンが、私はこのドラマの中で一番好きだ。


純粋に相手を想う「想い」と「想い」が巡り合う・・・


そんな紡ぎ合いを、
これからも、大切な人たちと紡いでいきたい。

管野美穂の役者としての幅

個人的に好きな役者さんなので
彼女の出演作品はかなり見ているのだけど
この役は、ほんわかしたやわらかさとか優しい雰囲気が特徴の役どころ。

いろんな役を演じてるけど、こういうタイプも多い。

けど、ほんわか系の役どころでも、

作品によって微妙違う個性を
ちゃんと演じ分けているのがすごいなあ、と思う。


彼女の演技の特徴として
セリフの言い回しでの演じ分けがうまい、と感じる。

醸し出す雰囲気とかオーラもあるけど、
やっぱりセリフの語尾の感じとか、テンポとか、
そういうところに、役柄の個性が出てるような気がする。

「言葉」のセンスがあるのかな、とも。

そんな、彼女の演技の幅を改めて感じられた作品だった。


私も会社務めしてた時はほぼずっと派遣社員だったので
35歳で派遣切りに合う千春の心情は、すごくよく分かるし
その辺のリアリティがとても共感した。

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作中で最終的に誰も結婚の道を選ばなかった「結婚しない」ですが、とてもおもしろかったですね。このドラマを視聴したことをきっかけに、わたしが考えた結婚にまつわるあれこれ、そもそもなぜ結婚しなきゃいけない「結婚宗教」的雰囲気が日本にあるのか、結婚しないメリットについての考察をまとめてみました。 なぜ結婚しなきゃいけないの?そろそろ「結婚教」から解放されてもいいと思う日本女性ドラマの中でも、主人公たちが親や周囲の人々から結婚まだなの?的なプレッシャーに追い立てられている描写がありましたが、どうしてこんなに結婚、結婚とみんな騒ぐのでしょうか?「負け犬」という言葉が過去、流行りましたがこの負けというのも、確か未婚女性のことを指していたように記憶しています。日本は島国だったので、諸外国とのお付き合いも少なく、さらに鎖国を実行していた時代もありますし、とにかく「みんな同じ」であることを極力望む国ですよ...この感想を読む

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