宇宙兄弟のキーマン
キーマン・日々人
2012年放送開始のアニメ『宇宙兄弟』。第一話を観た時、アプローチの面白さと登場人物のリアリティに一気に引き込まれた。作品名を見た時、八割くらいの人が想像するであろうストーリー展開。それを裏切らない人間ドラマ。宇宙への憧れをこれほど上手に表現している作品はないと思う。初めは……お笑い芸人のような主人公・南波六太と弟の日々人が絵的に面白かった。ヒューマンドラマだと思っていたので、少し構えて観ていた。夢を叶えて宇宙飛行士になった日々人に、劣等感を隠せない六太。その心情の複雑骨折ぶりが、悩み多き現代人の姿と重なる。それがどうして、世界で一番なるのが難しい職業である宇宙飛行士を再び目指すのか。きっかけは日々人が母親に頼んで出してもらった、JAXAへの書類というのがおかしい。とにかくやってみることの大事さを、日々人は知っていた。宇宙を目指すには、巨視的で囚われない心が必要なのだと気づかされた。
キーマンその2・シャロン博士
六太を前から引っ張ったのが日々人なら、背中を押したのがシャロン博士だ。二人の夢を育み、天文学者としての豊富な知識で宇宙への好奇心を見守る。夢に縮こまる六太を、ブロックを外すように導く姿は、理想の教師像だ。日々人にも共通することだが、彼女もまた六太の資質を疑っていない。決して強制的ではないのに、素直にものを見ることを教えてくれる人。大きな夢を叶えるには、こういう導き手が不可欠なのだろう。必要な時に必要な助言を得られなければ道を見失いやすい。普通の人々の場合は、もっとわかりにくい人がキーマンになっていることが多いが。
キーマンその3・星加正
六太たち兄弟が少年期にJAXAに出入りしていた頃からの職員、星加にも注目する。彼は兄弟に積極的に関わってきていない。しかし、兄弟が宇宙に熱中する姿を見て、二人が宇宙飛行士になるかもしれない、と予感する。試練を潜り抜け、見事宇宙飛行士となった日々人に会う。遅れて六太も送り出す。フィルター越しに兄弟を観察する職員らと違って、星加は独自の視点から支援する。彼は兄弟の真の理解者なのだ。この人がいなかったら、六太の資質は埋もれたままだったろう。説得に熱弁をふるったのでもないし、必要以上に肩入れもしていない。やはり巨視的なのだ。こうして宇宙兄弟は誕生する。六太の劣等感を紐解き、歴史を作るこれらの人々熱意は物語の推進力となった。
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