ほぼ原作通りで最高のアニメ化
魅力的な原作がアニメ化
推測の範囲ですが、アニメ化されたタイミングで、パチンコメーカーの大一商会よりパチンコ台となっているコンテンツです。よって、パチンコメーカーの意図するところで、アニメ化されたという意味合いが大きいのではないでしょうか。
パチンコ台の販売促進、パチンコ台の稼動促進という宣伝材料だったように思います。
しかし、どういった経緯であっても、忘れられていた名作マンガがアニメ化されて、注目を浴びる切っ掛けになったことは嬉しいことです。また、原作マンガのイメージがそのままのかたちで再現されていたことも喜ばしいことなのではないでしょうか。原作マンガからアニメ化されるのは良いけど、原作のイメージと乖離していてガッカリさせられることは多いです。しかし、「勝負師伝説 哲也」においては、裏切られることがなく、とても良くできたアニメ化のように感じました。
原作マンガの面白さをフルに活かしきったアニメであると思います。特に、賭け麻雀という違法行為を主に扱っているアニメ作品です。そして、ヒロポンという違法薬物を使用する登場人物が、そのままのかたちで出てきたことにも驚かされます。こういうことをアニメという媒体で表現できた、制作してくれたことが嬉しいです。
アニメ「はじめの一歩」と重なる印象
「勝負師伝説 哲也」というアニメ全体でみれば、僅かな部分なのかもしれません。物語の冒頭で、房州さんが玄人を引退して、ダンチをオヒキにする部分です。この辺りから、別のアニメ作品である「はじめの一歩」を観ているような錯覚をさせられるのです。
それは「勝負師伝説 哲也」のダンチ、そして「はじめの一歩」の登場人物、「青木 勝」の声が全く同じであることが大きいです。さらに、アニメ「勝負師 哲也」のダンチが登場する段階で、出てくるもう一人の個性的キャラクターにも起因します。
それは、薬物中毒で危ないイメージを漂わせる印南の存在です。印南の存在が、「はじめの一歩」登場人物の「間柴 了」と重なるのです。関わり合いを持つと危険な印象、そして死神を彷彿とさせる印象は、両者とも同じなのではないでしょうか。
その二つの要素が、アニメ「はじめの一歩」の印象と重ならせるのです。特にダンチ、更に印南という二人が同じようなタイミングで登場することが一層にそう感じさせます。
麻雀を知らなくても楽しめる
物語全編が、ほぼ麻雀勝負で構成されているアニメ作品です。もちろん、原作マンガにも同じことがいえますが、麻雀を全く知らなくても物語を楽しめることに驚かされます。
実は私自身、麻雀をしたことがありませんし、ルールも全く知らないで、「勝負師 哲也」を観ました。そして、それにも関わらず不思議なことに物語や、麻雀そのものの緊張感を楽しむことができるのです。そして、麻雀のことを知らなくても、麻雀のルールが自然と頭の中に入ってくることが不思議に思います。アニメ「勝負師伝説 哲也」を観ていると、ルールを知らなくても、きっとこういう状況なのであろうと、麻雀のルールを知らなくても想像できてしまうことが凄いことのように思います。
この事実が、麻雀の駆け引きというものを、麻雀を知らない視聴者にも分かりやすく伝わるよう、意図的に工夫をしていることが伺えます。
房州というキーマンの存在
坊や哲の麻雀勝負で緊張感を演出していることが、この「勝負師伝説 哲也」という作品の面白さの真骨頂なのでしょう。凄い麻雀を打つ強敵・玄人のカラクリを暴き、勝つ為の方法を模索して、運を引き寄せるプロセスはとてもカッコ良いです。
しかし、主人公のカッコ良さの上をいくのが、房州さんという存在なのではないでしょうか。坊や哲の先生的な存在であり、また、勝負師として技量も物語の中で最強です。そして、房州さんと坊や哲のやりとりが胸を熱くさせます。
房州さんに教わったことを実践して、またダンチにも継承しているように思います。坊や哲の行動や発言は、房州さんから引き継いだことが多いです。まずは、物語冒頭の部分で、房州さんに、坊や哲がタネ銭を持たされず玄人に勝負をさせられ、数回に渡って袋叩きにされる場面があります。そして、自分がされたことを、ダンチの正念場の時に同じようにしているように思います。さらに、印南との麻雀勝負の場面でも、房州さんの技を実践して打ち勝っています。さらに、リサとコンビ打ちしていた時にも、リサの力がなくなった瞬間を見極め、リサの通しとは逆の行動をとった背景にも、房州さんの引退した経験則を活かしたものでした。
房州さんは、坊や哲に直接、言葉や手取り足取りで物事を教えることは少ないです。麻雀牌を触ることを欠かさないこと、そして、サイコロの振り方しか教えていません。しかし、房州さんの発言や行動には、直接の発言や行動の裏側に、意図的な真意があります。こういった房州さんのコミュニケーションの取り方は、現実社会における理想的な上司の姿といえるように思えてなりません。
死ぬ直前まで、坊や哲に自分の全てを伝承しようとした姿が本当にカッコ良いです。きっと房州さんも自分自身の死期を知っていて、最後に麻雀したのだと思えます。そして、もっとも玄人らしい死に方を自ら選んだように感じます。
房州さんという存在が無くして、「勝負師伝説 哲也」は成り立ちません。主人公の坊や哲以上に大きな存在であると言えます。
なんだか、こういう存在に憧れますね。
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