日本ではなかなか観られない密室愛憎劇だが、ちと力不足
エロ目的で観るべからず!
「ららら、乱交パーティの映画だって!?」と期待すればするほどズッコケる映画であることは間違いない。
解説文なんかを読むと「服を着ているシーンが数分しかない」みたいなことが書いてあり、青年歓喜待ったなしだが、それは単に「服を着ていない」だけであって、タオルで隠すところは隠しているのだ。
男女の本質を見出すのはナンセンス
序盤のもどかしい駆け引きは意外と面白く、「それ目的なんだからグイグイ行ってもいいよな?」「でも引かれたらいやだから誰かが切り出すのを待とう」といういかにも日本人的な駆け引きが展開される。欧米だったら既に2回戦が始まっているところだ。
女友達と飲みに行って何となくそれっぽい空気になり、OKサインが出ていないかをくまなく観察する、また女性ならばOKサインを出しまくってるのに男が鈍感で気付かないといった経験は誰しもあると思うが、まさしくあの雰囲気をジリジリと垣間見せられるのだから生々しい。徐々に場の空気が紫色に満ちていく過程が非常にリアル。世間話から始まり、徐々に話題が下ネタに移り、ヒエラルキーの頂点にいるような男女からおっぱじめていく。
紆余曲折あって全員が行為にいたった後は綿密な心理劇などあったもんじゃなく、放送禁止用語のオンパレードだ。しかしながら本作に関しては女優の裸を目的としても、また男女間の心理や本質を見出すにも中途半端。監督のやりたかったことと、結果的にやれたことの齟齬が大きいのではないだろうか。
キャスティングは「見事」の一言
キャスティングは素晴らしく、特に仮眠明けの賢者タイムにおいて、新井浩文と滝藤賢一が男の下ネタあるあるを淡々と語り合うシーンが最高。中村映里子演じるアンニュイ気味な保育士がそれに加わり、何だか修学旅行の夜のような居心地の良さを画面から感じる。
清楚風でありながら喘ぎ声が凄い、というギャップを持つ少女を演じた門脇麦も体を張った好演。本作以降、脱ぐシーンがやたらと多い気がするのは気のせいだろうか。
常連のギャルを演じた赤澤セリ(現赤澤ムック)は舞台での活動も多い演技派の女優で、この豹変ぶりに驚いた演劇ファンも多いことだろう。
この舞台の経営者を演じる田中哲司と窪塚洋介はさすがの安定ぶり。終盤には彼らのドラマも挿入されるのだから、すべての演者に見所があると言ってもいい。
そして何より、ラストで「どーせ池松クンと麦ちゃんがくっつくんだろう?」と予測させておきながらの破断には驚かされる。何という救いのないオチなんだろう。池松クンがストーカーにならないことを祈るばかりである。
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