とっても人間らしいヘクター - ビースト・クエスト 13 牛怪人トーゴーの感想

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ビースト・クエスト 13 牛怪人トーゴー

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とっても人間らしいヘクター

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文章力
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ストーリー
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キャラクター
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5.0
演出
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目次

自分と他人の価値

 ヘクターは自分が助かりたくて、トーゴーに反乱軍の逃げた方向を教えます。自分が助かりたいとはいえ他人を犠牲にしたことに対しヘクターは葛藤しますが、自分の命を救うためには仕方がなかったことだと無理やり納得します。

 人は自分を犠牲にして他人を助けた人に対して称賛を送ります。それは誰もができる行為ではないからでしょう。特にその行為によって多くの人が助かった場合はなおさらです。しかしこれは決して自分のことを粗末に扱ってよいということではありません。そして自分を犠牲にして他人を助けた人が自分を粗末に扱っていたというわけでもありません。人が第一に大切にしないといけないのは自分自身だと思います。それは自分を大切にできない人が他人を大切にできるとは思えないからです。いろんな策を考えたり試したりした結果、誰かが犠牲にならなければ多くの人が助からないという状況で、自分が犠牲になることが一番多くの人を助けることができるという結論にいたった場合にのみ、自分を犠牲にして他人を助けるといった行動をとったとしても、自分を粗末に扱った行為にはならないと思います。つまりただ単に自分が犠牲になっただけでは、自殺行為にしかならなくなり、自分を優先しただけでは、他人を粗末に扱ったということになってしまうのです。

 ではヘクターの行為は本当に仕方のなかったことでしょうか?子どもであるヘクターがトーゴーと戦って勝てることはないでしょう。しかし、反乱軍を見失っていたトーゴーに正直に反乱軍の逃げた方向を教えなくても別の方向を教えるといったこともできたかもしれません。自分を確実に助けるためには反乱軍をトーゴーに襲わせることによって、自分の逃げる時間を稼げたかもしれませんが、仕方がなかったかというと疑問が残る行為だったかもしれませんね。

 恥ずかしいと思う原因

 ヘクターが反乱軍の逃げた方向を教えたとき、自分のした行為に対して「恥ずかしさのあまり顔が赤くなった」と言っています。それはとっさのこととはいえ、他人を犠牲にしたことに対する自分の行為を恥じたからでしょう。ヘクターはその「恥ずかしい」という気持ちを、「仕方がなかった」といってなかったことにしてしまいます。しかし、本当は納得していないため「でも、そうしないとぼくが殺されてたんだ・・・」という言葉で自分を説得してしまいました。

 「恥ずかしい」と思うとき、人は大きなストレスを感じるようです。そのためその「恥ずかしい」という気持ちから早く逃げたいと思ってしまい、その気持ちをごまかしたりなかったことにしようとします。しかし、「恥ずかしい」という気持ちはただ単にストレスを感じさせるためだけにあるのではありません。「恥ずかしい」と思う原因は自分が行った行為が他人と比べたときに、幼稚であったり未熟であったりしたときにおこります。そのため「恥ずかしい」と思わないようにするためには自分が成長することが必要となります。それをごまかしたり、逃げ出したりするとせっかくの成長のチャンスを逃してしまうことになるのです。

 ヘクターはそのせっかくのチャンスを逃してしまったというしかありません。恐怖を感じその場から逃げ出したい一心で、反乱軍の兵士も自分も助かる手段を考えなかったことに対して「恥ずかしい」と感じていたのに、仕方がなかったですませてしまったのですから。

すべてが自分のおこした行動のせい?

 ヘクターの行為は日常誰もが無意識のうちにしている行動です。自分が嫌だと思うことは避け「恥ずかしいことでは?」「卑怯だったのでは?」と思う自分の心を「仕方がない」「悪いのは自分じゃない」「他の人だってしている」と言って黙らせてしまうのです。でも、ここで本当に悪いのは他人に対して行った行為ではありません。本当に悪いのは疑問を投げかけている自分の心を無視した行為です。これらの言葉は自分が成長したいと思うところから発せられていることが多いです。心の底では成長したいと思っているのに、それを自分自身が阻止してしまうのです。ヘクターは誰もが日常やっていることをわかりやすく表現してくれているだけなのです。

 反乱軍の兵士はトーゴーに捕まって殺されてしまったのかもしれません。しかし、それは本当にヘクターが逃げた方向を教えたからなのでしょうか?そして、反乱軍の兵士はヘクターのせいで自分たちが襲われたと思うでしょうか。実は兵士が襲われたのとヘクターとは全く関係はありません。そもそも兵士は反乱軍だったのですから、ヘクターが教えなくてもトーゴーに襲われていたでしょう。ではなぜそれを自分のせいにしてしまっているのか?それは自分の中に助けられたかもという思いがあるからでしょう。自分が考えなければいけないのはその思いに対してです。結果助けられなかったということになってもそれは構わないのです。大事なのは自分が思ったことを「そう自分は思ったのだ」と受け入れることだと思います。

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