いろいろなものに助けられながら生きている人間たち - ビースト・クエスト 5 雪獣ナヌークの感想

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ビースト・クエスト 5 雪獣ナヌーク

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いろいろなものに助けられながら生きている人間たち

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目次

人間同士が助け合うということ

ブレンダンはトムがソリを借りたいというと、ソリを貸すだけでなく操縦まで教えてくれます。それはトムのりっぱな馬を見て、何か使命があって旅をしていると感じたからということでした。ブレンダンは雪原を集団で生活する移動キャンプの一員です。そのため人は助け合っていかなければ生きていくことができないことを、身をもって体験しているのでしょう。そのため困っている人がいれば、手を差しのべるということが自然に身についているのだと思われます。

集団生活をスムーズに行うためには、他人と協力して生活するということが重要となります。自分ができることは自分でするということはもちろんですが、みんなが同じことを同じようにできるわけではありません。簡単にできてしまう人もいれば、なかなかできずに困る人もいるでしょう。しかしできないことがあるからといってすべてできないわけではないし、できることがあるからといってすべてできるわけではありません。移動キャンプの人たちはソリを持っていて雪原を移動することができ、トムはビーストを呪いから解放することができます。自分に何ができるか、何ができないのが、どうしたらできるのかを考えて相手に助けを求めれば、よりスムーズにお互いが助け合えるのかもしれません。

ここで大事なのはあくまでも「助け合う」ということです。助けてもらってばかりでも助けてばかりでも「助け合い」にはなりません。誰もが助けたり助けられたりすることが当たり前の関係でいられることが、他人とうまく共存していく方法なのでしょう。

人間も生物の一員

「人は一人では生きていくことができない」と言われています。それは言葉通りにとれば、他の人の助けがなければ生きていくことができないということでしょう。しかし「自分は誰の助けも借りずに一人で生活している」と思っている人は実はたくさんいるのです。それは物があふれている現代だからこそおこる考えなのでしょう。インターネットがあるからお金を儲けるのも買い物するのも全部ネットですますことができる。他人と実際にかかわっているわけではないので一人で生きているというのです。でもそれらのものを用意しているのは誰でしょう?商品として物が移動する場合はどうしても人を介さなければなりません。「自分は一人で生きていける」という発言は、そういったほかの人の労力を無視している発言でしかないでしょう。

実際サバイバル術にたけている人や、自給自足している人は自分が必要なものは自分で採取したり育てたりしているから他人の助けは必要ではないと思うかもしれません。しかしこの言葉は「人の助けがなければ」という意味なのでしょうか?地球上に生息しているのは人間だけではなく、他の動植物も生息しています。人間同士の助けがなくても他の動植物を摂取しなければ人間は生きていくことはできません。そういう意味でも人は一人では生きていけないのかもしれません。雪原でも移動キャンプは薬草を採取し、売ることで生計を立てています。また雪ひょうに今まで襲われずにいたのは雪獣ナヌークが守っていたからです。人間はもっと自然の恩恵を受けながら生きているということを感じながら生活をしていかないといけないでしょう。

誰かの助けになるか迷惑になるかの分かれ目

目の前の人が困っている場合、助けになりたいと思う気持ちはどこからくるのでしょうか?もちろん純粋に自分の力が役に立てばと思って行動する人もいるでしょう。しかし、「自分が助けてほしかった」という思いから、人をほっとくことができないと思って行動することが一番強いようです。自分がつらかったとき「こういう風に手を差しのべてもらっていたら・・・」という感情です。これは決して悪いことではなく、「こう言ってもらえたら」「こうしてもらえたら」という具体的に自分がしてもらいたかったことを相手にするので、確実に相手の手助けになるのです。また「自分がしてもらってうれしかったから」という思いから、自分も同じような人に出会ったら手助けをしたいと思って行動することも多いようです。ブレンダンがトムにソリを貸し、操縦を教えたのは自分が教えてもらってうれしかったからかもしれませんね。

人は時として、逆にされて嫌だったことを「自分たちもされたから」とか「助けてもらえなかったから」と言って他の人にしてしまうことがあります。これは「してもらってうれしかったからする」ということが「正の連鎖」であれば、こちらは「負の連鎖」でしょう。よく聞くのは「先輩から厳しくされたから後輩にも厳しくする」といった言葉ではないでしょうか。「厳しくされて自分たちが成長できたから、自分たちが憎まれても後輩たちに厳しくする」のであれば問題はないのですが、「なんで自分たちは嫌な思いをしたのに後輩たちだけがいい思いをするの?」という感情からくるのであればそれは「負の連鎖」でしかありません。特に自分より幼い者・立場の弱い者に対し何かを行うときは、どちらの連鎖になるのか考えて行動することで、助けになるか迷惑になるのかが分かれるでしょう。

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