リアリティあるガンアクション、アニメ版ヨルムンガンド
個性際立つキャラたちが織り成すハードな銃撃戦が素晴らしいピカレスク・アニメ
何時の頃からかは覚えていないが、ここ最近の漫画・アニメといえばカワイイ女の子たちが主人公で活躍する作品が多いが、この作品にそういう要素は無い。一切無い。オッサンの乳輪の毛が描かれちゃうようなアニメである(アニメだけでの描写である)。
他の映像作品で例えると、海外ドラマのNCISシリーズやCSIシリーズがアニメになったような雰囲気を持っており、ハードで重厚で乾いていて、毒もチラホラ見られるような作品だ。萌えは皆無だが派手な銃撃戦、クセのあるキャラたちのトークが魅力的な作品だ。ハリウッドや海外ドラマが好きな人ならかなり楽しめたのではないだろうか。
キャラクターたちの魅力
主人公のヨナ、ココの他にココ・ヘクマティアルは私兵部隊を率いており、実力も過去もそれぞれな優秀な人材が揃っている。しかも敵も魅力的だったりするので、限られた文字数でそれぞれの魅力について纏めることは不可能だ。朝になってしまう。ヘクマティアル小隊の主要なキャラだけ挙げても元デルタフォースで小隊のリーダーのレーム、元FRDF(フィンランド緊急展開部隊)のバルメ、その他にもヨナを除いて5名の隊員たちにそれぞれの過去がある。ココの兄のキャスパーも4人の部隊を持っており、チェキータさんが可愛い。
敵キャラで言うと1期ならオーケストラ、カレン・ロウ及び陳国明、2期ならヘックスwithカットスロート、ナイトナインが強くてイケている。それと個人的には原作で言うと最終巻の海兵隊スカウトスナイパー部隊の訓練教官の任務前の演説をアニメで是非ともやって欲しかった、それこそピー音連発でいいから。まぁ番組時間と放送コード的な問題で出来なかったのは当然なのだが…。
ヘックスはエロいが(いきなり脱いだ)、中の人の久川綾もエロい人らしい…。文化放送に縁の深い声優らしいのだが、放送でパーソナリティーを担当していたラジオ番組で数々の逸話を生んだ女性であるらしい。ここでは書いてられないので、興味のある人はネットで検索してみて欲しい。ちなみに私は連載当時、ヘックスのことをセ○クスと呼んでいた。友人も爆笑していたことを今でも覚えている。スピンの部下やRがヘックスのことを六角と言っていたが、ジーニアス英語辞書を見ると魔女という意味がちゃんと載っている。ただし、英語圏で一般的に使われる言葉なのかどうかは分からないが。
その他、殺し屋及び危ない橋を渡る人間たちはレストランを経営したがるような風潮もあった。と言ってもCCAT社とボス・ドミニク一行だけだが。ちなみに剣の達人は刃物裁きが上手い。人間の調理法を心得ているということであり、料理も上手いのかもしれない。ついでに言うと、眠狂四郎や枕竜之介は下の剣術も達人だったらしい。
ココ・ヘクマティアルの目指す「世界平和」
原作でも初めにココは「世界平和のために武器を売っている」と発言している。ところが、ココが目指す世界平和の具体的な内容については物語で最後にならないと明かされない。アニメ(1期)が放送されていた当時の話だが、ココの目指す世界平和について間違った意見を書いていたブログも見受けられた。当時の私はココの考える世界平和の正体について知っていた、あるいはその輪郭は見えていたのでココの思想は残酷であると認識していた。
しかしてその計画の正体は量子コンピューターとHCLIの通信衛星126機を使って人類の航空兵器の使用を世界的に禁止し、最終的に人間と軍事を切り離す強制的世界平和の実現だった。この作品の名前になっている「ヨルムンガンド」とは、ココが付けたこの世界平和の実現計画の名前だった。じつはこの名前は単行本で冒頭に度々書かれている文章に大いに関係があったということでもあり、天田博士は作中で計画の内容とその名前を付けたココの皮肉さのセンスを笑っている。
ちなみに原作の中では「あと20年かけても量子コンピューターは実現しない」というCIA局員の発言もあり(原作連載当時は2010年)、トンデモ設定のような気もする。ストーリー展開が気になっていた読者や視聴者には、例えるならいきなりのチートアイテムの登場に面食らったかもしれない。ここの部分はヨルムンガンドのファンの間でも意見が分かれるかもしれない。
作中の世界平和の実現はありえることだろうか
私は人類が空を飛べなくなった“くらいで”戦争を辞めることは出来ないだろう、と思う。キャスパーも「この世から武器がなくなると、本当に思うか?ココ」と、原作でもアニメでも実に鬼気迫る迫力でココに問いかけている。
作中では人類と戦争に関する話が随所に見受けられる。戦争の民営化、ココが世界を嫌う理由、UAV(無人航空機)の登場による戦争の変化、どんなに武器を憎んでいてもヨナは武器を捨てて生きていくことは出来ないといった話があちこちに散りばめられている。こういった内容の話は重く暗い話であり、平和な日本では普通の神経をした人間であれば深く話したいとは思わないだろう。しかしこういった人間の醜さや残酷な行為のような問題は、たとえ目を背けても確実に存在することである。本作品は楽しめるフィクションのピカレスクであるが、こういったメッセージが込められていることにもぜひ注目したい。
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