ポケモンの裏番組に潜んだ名作 - 今、そこにいる僕の感想

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アニメレビュー数 2,474件

今、そこにいる僕

3.503.50
映像
3.75
ストーリー
3.75
キャラクター
3.75
声優
4.25
音楽
4.25
感想数
2
観た人
2

ポケモンの裏番組に潜んだ名作

4.04.0
映像
4.5
ストーリー
4.0
キャラクター
4.0
声優
4.5
音楽
4.5

目次

ジュブナイル系かと思いきや・・・

軽快なメロディとともに、非常にマンガアニメチックなキャラクターデザインの少年が元気に動き回ることで始まる冒頭。

ここまでは誰もが、主人公シュウが地道に剣道を学び、イケメンのライバルを打ち負かして好きな女の子をゲットする、なんて、よくある青春ジュブナイルストーリーを想像することでしょう。

けれどこの作品、知る人ぞ知るいわゆる“鬱アニメ”の代表なんですよね。

かくいうわたしも、鬱アニメ探索にハマっているときに出会った作品でした。

別に病んでいたわけではないです。

当時出会ったその他の鬱アニメに、エルフェンリート、なるたる、まりんとメラン、灰羽同盟、serial experiments lain、などがありましたが、そのどれもが娯楽としてのアニメを少し逸脱したような、心に小さく傷を作っては入りこんでくるものばかりでした。

中でもこの『今、そこにいる僕』は、コミカルなキャラと実力派声優の演技、荘厳な音楽との相乗効果によって、わたしの最も好きなアニメのひとつとなったのです。

キャラクターについて

まずは主人公のシュウです。

わたし、はっきり言ってこのキャラクターには畏怖に近いものを覚えます。

なぜかって、いきなり異世界に飛ばされて殴られて吊るされても、まだ他人を思える聖人かよと言いたくなる精神力と、常軌を逸しているとしか言いようのないポジティブシンキング。

こんな奴とは友達になりたくないです。

ここまで書いといてなんですけど、わたしはこのキャラクター、非常に好きですよ。

ただ人間臭さがなくて怖いだけで。

あと、初めて会って会話らしい会話もなさないままのララ・ルゥに、あそこまで固執する理由もよく分かりません。

彼の性格と言ってしまえばとても便利な理由付けですが、恋愛感情もないのにやっぱりちょっと怖いです。

余談ですが、わたしは彼のおかげで岡村明美さんは少年声の声優さん、というイメージが付いてしまいました。

だって、すごい上手いんですもん・・・。

次にメインヒロインのララ・ルゥです。

声優は何と当時14歳の名塚佳織さんですね。

台詞少ないですけど。

このキャラクター、誰もが思ったことでしょうが、目が怖い。

確実に本作品のメインヒロインなんですけど、何でこのキャラクターデザインにしたんでしょうか。

人間ではないことの象徴なのか・・・。

作品全編を通して主体性が感じられず、どこまでも謎なキャラクターでした。

サブヒロインでしょうか、サラです。

『今、そこにいる僕』は彼女の物語だ、という意見も聞くほどに、本作品随一の不遇美少女キャラですね。

作品を見たことがない人でも、彼女の不遇エピソードの知識だけはあったり。

作中最も人間味のあるキャラクターでもあります。

まともに喜び、怒り、悲しみ、それに伴った行動をする彼女には、一種の安心感すら覚えますね。

真夜中の砂漠の中ひとり脱獄し、着ているものを脱いで髪もバッサリ切り落とすあのシーンが、本作品の中で一番好きです。

サラたんがんばれ、超がんばれ。

狂王ハムドです。

石井康嗣氏、熱演!!

完全に声優さんがキャラクターを飲んじゃってます。

躁鬱具合が飛び抜けちゃってるこの怪演が癖になることうけあいです。

本作品の次回予告も全て彼がナレーションするのですが、もう次回予告だけでも見る価値あり、ですよ。

1クールアニメながら、他にも魅力的なキャラクターが多数出演するわけですが、全ては紹介しきれませんね。

色々言いましたけど、端役のキャラクターに至るまで丁寧に性格と心理描写がなされていて、おおむね好感が持てることでしょう。

ギャグだけではない大地丙太郎監督の真髄

大地監督と言えば、『セクシーコマンドー外伝 すごいよ!!マサルさん』や『ギャグマンガ日和』などの、ハイテンシンギャグアニメの監督というイメージが強いのではないでしょうか。

また、『こどものおもちゃ』や『フルーツバスケット』、『僕等がいた』など、数々の少女漫画作品のアニメ化を成功させてきた人物でもあります。

彼の手掛けるアニメのギャグシーンには、独特なテンポと早口な台詞まわしがありまして、最近では『神様はじめました』でもその特徴は健在でした。

ですがこの『今、そこにいる僕』では、大地監督特有のハイテンションギャグシーンはほとんど皆無です。

終始シリアスに、単純な笑いではない作品のおもしろさを描ける、大地監督の真骨頂ではないかと感じました。

また、特筆すべきは音楽です。

岩崎琢氏の音楽は、決して作品を邪魔せずに、ここぞと言う場面で確実に盛り上げる、縁の下の力持ち的な役割を果たしていると思います。

特に本作品中で印象深いのは、Standing in theSunset Glowという曲でしょう。

この曲だけでもちょっとググって聞いてみてほしいですね。

鬱アニメとして名高い本作品を救済するかのような名曲ですよ。

いや鬱アニメが悪いってわけじゃないんですけどね、勿論いい作品ではありますが、ハートフルボッコにはなりますので・・・。

『ヨルムンガンド』ハードボイルドなイメージとは違った、幻想的な世界観での作曲をされていますのでそれも必聴です。

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他のレビュアーの感想・評価

救いはないんですか…!?

某動画サイトで『鬱になるアニメランキング』にランクインしていたので一気に観てしまいました。ざっと結末をまとめて見てみます。シュウ→現代日本に戻るものの勝負に勝てずララ・ルゥ→消滅?サラ→望まぬ妊娠、現代日本に帰らずアベリア→針の筵状態ナブカ・ブゥ・シス・タブール・ハムド→死亡見事な総バッドエンドといった印象ですね。アベリアは生き残ったものの、下手すると処刑になってもおかしくない状況ですし。主要人物以外で考えても、その後を考えるとあまり希望が持てないのではないでしょうか。ヘリウッドは独裁者がいなくなって万歳かと思いきや、少年兵の帰る故郷はありません。ハムドの後継者もいないため国家として機能せず、今まで蹂躙してきた他国に報復される可能性があります。その他国も戦争で人口が激減していますし。世界全体で見ても、ララ・ルゥが消滅したことで水の確保が完全に不可能になり、環境破壊は止まりません。人間は...この感想を読む

3.03.0
  • しのかなしのかな
  • 1106view
  • 539文字

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