三ツ星寿司店に密着したドキュメンタリー映画 - 二郎は鮨の夢を見るの感想

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二郎は鮨の夢を見る

2.502.50
映像
3.50
脚本
3.00
キャスト
2.50
音楽
3.00
演出
3.00
感想数
1
観た人
1

三ツ星寿司店に密着したドキュメンタリー映画

2.52.5
映像
3.5
脚本
3.0
キャスト
2.5
音楽
3.0
演出
3.0

目次

ミシュラン三ツ星寿司店の実力やいかに

銀座の名店「すきやばし二郎」。オバマ大統領が訪問したことで、一躍日本中にその名が知れ渡った寿司店だ。

だが、実はそれ以前からも「すきやばし二郎」は、寿司通の間では知らぬ者のいないほど有名なお店だった。

一人前3万円という破格の価格設定。銀座の寿司店には珍しい、つまみも天ぷらもない寿司だけのシンプルなコース。予約は一か月待ち。店内にはトイレもない。なにより店主である小野二郎は、御年80を超えなお現役の職人……。

「すきやばし二郎」の、この伝説と噂が入り混じった話題の数々は、つまりそれだけ、このお店が長年寿司業界の代名詞として君臨してきたという何よりの証拠といえるだろう(なお、ドキュメンタリー映画なのでキャスト評価は3点とする)。

魚、伝統、仕事。寿司の全てを「二郎」が語る

映画のなかで小野二郎の口と「仕事」を通して語られるのは、あくまでも「すきやばし二郎」と寿司に対するこだわりのみだ。

しかし、二郎氏の握る寿司と、弟子たちの技術、そして行動の一つ一つに、時代を築き上げた店の思いが込められている。

たとえば魚。魚は時代を超えていくごとに漁獲量が下がり、「すきやばし二郎」は同じ味を提供するという飲食店の基本原則に乗っ取ることが困難になってきたという。ただ寿司を食べるだけの消費者の我々には、決して見えない苦労が透けてみえるというものだ。

我々は漫然と「寿司は美味しい、銀座の寿司は特に最高だ」などと口走るが、「最高」を維持するために寿司職人たちはどれだけ苦労をしていることか。寿司ネタは海流の変化や、乱獲、世界情勢の変化による消費増・消費減に左右される。さらにいえば、同じ鮪でも産地が違えば味も全く違う。年によって味が異なることさえままある。つまり、今日手に入った鮪と同じものを、明日も提供できる確証はないのだ。そんななかで、三ツ星を維持し続けなければならないプレッシャーといったら相当のものだろう。

伝統にしてもそうだ。食べログなどサイトを覗くと、「二郎さんは上手いが息子さんはいまいち」「今日は二郎さんに握ってもらえてラッキー」などと様々な意見が見られる。彼らは「二郎氏というブランド」を評価する反面、「二郎氏の去ったあとのすきやばし二郎」を憂慮する声が多い。

彼らの心配はもっともで、職人が変われば味が変わる。しかし、「すきやばし二郎」からすれば、二郎が去ったあとでも変わらず店の伝統を守っていきたいと思っているだろう。だが、二郎氏が二人いないように、二郎氏と全く同じ腕の人間は存在しない。伝統を守れるという保証はないのだ。

それらの課題を含めて、寿司というものについて二郎氏は持論を展開している。弟子の下働きがあってこその「一番楽をしている」自分の働き。息子たちへの思い。父親として認識されなかった過去。過去と未来、寿司の将来……。

二郎氏は寿司に生涯を傾けた人間だ。その生きざまは日常生活にも現れ、彼は常に手袋をつけている。寿司職人の命である手を保護するためだ。それほどまで、彼は寿司という仕事を常に意識しているのだろう。

それ故か、彼の語る全ての事柄が、ずっしりと心に染みる。彼は己の人生をもって、「寿司職人とは何か」を体現しているのだ。

寿司の一時代を造り上げた、生きた伝説。職人でなくても、小野二郎氏の生きざまは心に来るものがあるだろう。

声が非常に聞き取りにくいので、字幕が欲しかったのが本音

このように、『二郎は鮨の夢を見る』ドキュメンタリー映画としては非常に見ごたえのある一作だ。

だが、この映画には最大の問題がある。人物たちの声が非常に聞き取りにくいことだ。

もちろん、映画のなかに登場する人物は小野二郎氏や「すきやばし二郎」の職人さんなどご本人なので、本職の俳優や声優でない。聞き取りにくいのは当たり前の話である。特に店主である小野二郎氏は御年85歳(映画公開当時)。声が張らなくなるのは当然のことだ。

この映画はアメリカで制作されたもので、日本には逆輸入された形になる。そのため、字幕がついていない。人物たちが全て日本人なのだから当然だが、やはり声ははっきりと聞き取れないので、字幕が欲しかった。寿司の専門用語も多いので、造形が深くない人間には猶更だろう。

NHKなどのドキュメンタリー番組に慣れているせいか、ナレーションで状況説明がされないのも辛い点だった。「いつ」「誰が」「どこで」「なにをしているのか」がはっきりとわからないまま話が進んでいくのだ。二郎氏が築地にいって目利きをしているなどという最低限の説明がないため、多くの観客は困惑してしまったのではないだろうか。

構成もメリハリがないので、結果的に二郎氏が何を伝えたかったのかいまいちわからないのも致命的だ。

ドキュメンタリーに対するお国柄の違いだろうと言われればそれまでだが、これはあくまでも二郎ファン・二郎に行きたいと思う人が観る映画といえるだろう。

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