ファンも予想外の『バイオハザード』映画化 - バイオハザード マルハワデザイアの感想

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バイオハザード マルハワデザイア

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画力
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ストーリー
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キャラクター
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設定
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演出
4.00
感想数
1
読んだ人
1

ファンも予想外の『バイオハザード』映画化

3.53.5
画力
4.5
ストーリー
3.5
キャラクター
3.5
設定
3.5
演出
4.0

目次

ゲームの漫画化の珍しい成功例

テレビゲームのコミカライズはそう珍しいものでもない。代表的なのは『ドラゴンクエスト』の漫画化であろう。ジャンプで連載された名作『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』や、エニックスで長年続き人気漫画家を多数輩出した『ドラゴンクエスト4コマクラブ』など、数々の作品が作られた。

だが、必ずしもゲームのコミカライズが成功した訳ではなかった。『ドラゴンクエスト』は成功例が多い稀有なタイトルで、その他の作品は(具体例を挙げるのは控えさせていただくが)お世辞にもゲームの面白さを表現しているとは言い難い作品が多く、多くはコミックス一巻二巻で打ち切りになってしまうのである。

この流れはテレビゲームの黄金期ともいえる90年代から00年代にかけて、多く見受けられた。好きなゲームがコミカライズされると聞き、ゲームのファンは胸を躍らせたが、実際の作品はどれもいまいちな出来ばかり。

失望は強まり、やがてはゲームのコミカライズ自体を鼻白んで見てしまう……という悲しい結果が起こってしまう。

故に、多くのゲームファンは『バイオハザード』が漫画化するといっても、大して期待しなかったであろう。筆者もその一人で、連載当初は「どうせ打ち切りになるんだろう……」程度にしか思っていなかった。

『バイオハザード マルハワデザイア』を読むまでは。

まず、その表紙絵にはっと目を覚まさせられる。限りなくゲームのビジュアルに近い作画なのだ。漫画家は星の数ほどおれども、これほどゲームそのまんまの作画を出来る漫画家はいないだろう。立ち絵だけでなく、表情や動きもブレがなく、クリーチャーや背景までしっかりと『バイオハザード』しているのだから恐れ入る。

ストーリーはゲーム『バイオハザード』のスタッフが制作したものだけに、原作とのリンクも完璧、ゲーム『バイオハザード6』へしっかりと繋がる構成になっている。その完成度の高さは素晴らしく、「ゲーム(『バイオハザード6』をやる前に読んでいた方がいい一作」にまで昇華している。

まさしく、ゲームファンの予想を良い意味で裏切った作品なのである。

『マルハワデザイア』をここまで造り上げた意義は大変に大きい

先にも述べたが、ゲームのコミカライズ作品で、上質な作品は大変に少ない。

それは単に「ゲームの雰囲気を壊していない」だとか「ゲームの設定を忠実に再現している」という意味に留まらない。

ゲームをわざわざ漫画にする、「意義のある作品」が少ないのだ。

大抵の作品は、ゲームのストーリーそのままを追いかける。ゲームをプレイしたことのない読者にストーリーを知ってもらい、販促に繋げようという意志があるのかは定かではないが、ともかく多くの作品はストーリーをなぞらえてコミカライズする。

だが、それでは正直読者は物足りない。そもそもコミカライズをもっとも待ちわびているのはゲームのファンであるはずなのに、知っている話を劣化(と断言してもいい)した絵で再度読まされても、面白味を感じないのである。

それこそ『ドラゴンクエスト』の『ダイの大冒険』や『天空物語』のような、作者がゲームの設定を熟知した上で練りこむ作品が、もっとも理想的な漫画だろう。だが、そうした作品は少数派だ。

では『マルハワデザイア』はどうであろうか。

『マルハワデザイア』は先にも述べたように、ゲームスタッフがオリジナルストーリーを作成しているだけあって、ゲームの設定に忠実だ。

重要なのは、ゲームの設定を補完するようなストーリーになっているという点だろう。ゲーム『バイオハザード6』の重要なキーである「Cウイルス」の実験に使われた学園。ゲーム『5』と『6』の橋渡しになる物語だ。ゲームをプレイしたファンも、この漫画を読んで更に『バイオハザード』の世界観に浸っていく……。

このように、ゲームの物語を深めるために設置された「公式」漫画は、意外にも少ないのだ。

そのため『マルハワデザイア』は単なる外伝コミカライズの枠に留まらず、『バイオハザード』ファン必読の一冊になっている。こうしたコミカライズ作品は、非常に珍しい。

『バイオハザード』のような長寿の人気シリーズでしか実行は難しいのかもしれないが、漫画化するならこれぐらいのクオリティーにしてほしいものである。

あえて注文をつけるなら、もう少し漫画の色味を出しても良かった気がする。このストーリーを楽しむなら、それこそゲームでも映画でもよかったと思ってしまうのだ。

漫画→ゲームはいいが、ゲーム→漫画は薦められないのが難点

ただし、問題が一点だけ。

漫画を読み、後日談であるゲームの『6』をプレイするのはいいが、『6』をプレイしたあとに読む漫画ではない。

何故なら、『6』に登場しないキャラクターが出てくるからだ。ゲーム既プレイの読者は、この時点で「あっ……こいつもしかして漫画で死ぬんじゃ……」と察してしまうだろう。事実そうなってしまったのだから非常に残念だ。まぁ筆者のことなんですが。

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