ライアーゲームと同じジャンルの映画を僕はまだ知らない。
オリジナリティの高い設定
ライアーゲームは基本的にはミステリーでありながら、人間が追い込まれていくと、いかに醜いかというものを現している。
ここまでみるとよくある話のように思うが、ライアーゲームのオリジナリティは、ゲームそのものの面白さにある。
ライアーゲームの中に登場するゲームは一見すれば、単純なゲームに見えるもの、取り掛かりがつかめないものが多い。
しかし、最後にはそのゲームのすべての設定を秋山深一は生かし、必勝法を見つける。
2回見ても、3回見ても、どの設定から必勝法が思いつくのかイメージできないことすらある。
ただ、何度も見て、秋山の思考に追いついたとき、そのゲームの流れは違う顔を見せる。
秋山のとる行動にはすべて意味がある。秋山はこの発言を使って、この人の本質を見抜いたのだな、この人の裏切りを防ぐための発言がここに用意されているのだな。といったように、必勝法を見抜いた後に見ると、秋山の思考の深さ、用心深さが浮彫になる。
そういう意味で、このドラマは、リピートしないと楽しめないともいえる。
秋山深一、神崎ナオというキャラクター
ライアーゲームの魅力はこの二人のキャラクター像にあるともいえる。
まず、秋山深一は、誰よりもかっこよく、誰よりも頭がよく、誰よりも悲しい人間として描かれている。
暗い過去を持ち、人を信じることができず、それでも最高の頭脳とそれを使って人間を操る能力によって、このドラマにおける勝者であり続ける。
秋山のキャラクターとしての特質は一般的には、悪役が持つ者である。しかし、それを神崎ナオの味方につけることで、秋山深一はこのドラマの正義で、ヒーローであり続ける。
このようなストーリーでは、悪役がかっこよく見えがちだが、悪役の特質をもった正義は、それ以上にかっこよく見えるのだなとこのドラマをもって気づかされた。
一方神崎ナオのキャラクターに触れよう。
誰よりも純粋で、どのような状況におかれても人を信じようとするところ、それを象徴するセリフが、「私は人を疑うくらいなら騙されたほうがましです」というものである。
基本的には彼女はすぐに騙され、不利な状況に陥る、それを秋山が助けるという形で、このドラマは進んでいく。
秋山はだまされても、人を疑わずに信じようとし続けて、裏切られる神崎ナオの姿に、多くの人に騙されて、借金を抱え、自ら命を絶った母親の姿を重ねるのであった。
ライアーゲームは基本的には個人戦であり、すべての人を疑って勝負しなければならない、しかしながら、秋山には絶対に自分を裏切らない見方がいる。それゆえ、秋山のみ二人のチームで参戦しているのだ、ライアーゲームはこの二人の信頼が生きるように、ゲームが作られている。
そして、この二人の関係において、最も重要なのは秋山も神崎ナオを裏切ろうという意思を一切持とうとはしないことなのである。これは、単に母親に似ているからといった感情でも、恋愛感情のような一時的な感情によるものではありません。
次の章でこの二人からみるこの作品の表したかった人間関係の本質に触れたいと思います。
作者の描く人間関係の本質とは
この作品は人を信じること、だますことの選択を人間の根本の欲求としてのお金を利用することによってえらばせている。
その点で、秋山と神崎ナオは異質な存在である。
秋山がこだわるのは勝利であり、神崎ナオのこだわりは、みんなが幸せになることである。
この二人のこだわりは対抗するようで、いくら手に入れるか失うかというステージにいないという点で共通しているのだ。
作者の描く一般人は秋山と神崎ナオ以外の人間である。特にこの2のバージョンでは葛城という存在がライバルとして、とらえられるが、彼女は頭の良さ以上に明確にお金の力を振りかざす。
一般的な感覚では、間違いなく、お金の力による結びつきは強い。しかしながら、秋山と神崎ナオの信頼がそれを倒す。一般論になるかもしれないが、このドラマは、お金がいかに力を持つものかと、それをこえる人の結びつきがいかに尊いものか、すてきかを示したいのだと考えられる。
信頼できる人間がいるということは人に力を授けるのだと思います。
ライアーゲームシリーズにおいては、秋山から神崎ナオに向けられている信頼もさることながら、神崎ナオが秋山に向ける信頼というものが大きくなっていくバックがあることが非常に興味深い。最初は藁にも縋る思いで、助けを求めた秋山深一は元詐欺師でありながら、決して自分の利益を求めてではなく、他人を救うためにたぐいまれなる頭脳を使ってくれる。
神崎ナオは人を疑わないが、秋山に対する信頼はさらにそれを超えている。詐欺師である秋山深一も最後には自分に近い意味で人を裏切らないのだと信じているのだ。そして、秋山もそれを裏切らない。自分の利益を最優先して、圧勝するわけでは無く、神崎ナオの望む全員の勝利に近い形でゲームを終わらせる。
神崎ナオと秋山の関係を、一般の人に見せつけ、求める。それが作者の理想の人間関係なのではないか、このドラマでいいたいことなのではないかと思った。
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