立体的映像効果で味わう、切なくも耽美で巧妙な心理操作復讐劇 - サキの感想

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サキ

4.504.50
映像
4.00
脚本
4.33
キャスト
4.83
音楽
3.83
演出
4.50
感想数
3
観た人
5

立体的映像効果で味わう、切なくも耽美で巧妙な心理操作復讐劇

4.54.5
映像
5.0
脚本
4.0
キャスト
4.5
音楽
4.5
演出
4.5

目次

徹底的な心理操作の巧妙さ

2011年に放映された「美しい隣人」の製作スタッフが

再結集して製作された本作品。

「美しい隣人」の続編か?と思いきや、

ストーリー的にはそういうことではなく、

ただ、一部共通点などもあったりして、

もうひとつの復讐劇、といったところだろうか。

いずれにしても「美しい隣人」と同様、

個人的にはとても好きな作品のひとつだ。

仲間由紀恵さん演じる今回の「サキ」は、

人物像も復讐の原因も、前回の「沙希」とはだいぶ違う。 

前回の「沙希」が心の闇から生じる病的な逆恨みだったのに対し、

今回の「サキ」は、不遇な生い立ち、という点は同じかもしれないが

心の病による病的な逆恨み、というよりも、

ある意味健全(?)な、というか、ストレートな復讐心、という感じ。

家庭の事情で捨て子に出され、育ての親からも愛されず、

不遇な環境で育った「サキ」は 生みの母を慕い続け、

念願かなってやっと再会が果たせるというその日に 

母が急性心不全で亡くなってしまう。

親子の名乗りも叶わぬままに・・・。

復讐の原因は、

待ち合わせ場所で倒れた母を救急車に搬送し病院に向かう途中、

偶然道中で居合わせた4人の男性たちそれぞれの

身勝手な都合やふるまいによって ことごとく足止めをくらい

心不全という一刻を争う事態であったにも関わらず 病院への到着が遅れ、

結果、死亡してしまったことへの恨み。

(復讐の相手は5人だけど、残りの1人は実の弟)

当然4人の男性たちは、サキの存在も、

自分たちのせいでサキの母親が亡くなったことも、知る由がない。 

でも、サキにとっては、どうあっても許すことの出来ない

母親殺しの敵(かたき)なのだ。

「サキ」は、徹底的に心理学や心理操作の手口を研究し、身につけ、

それを武器にターゲットを意のままに操り、自殺や破滅に追い込む。

それにしてもスゴイな、と思うのは、復讐の方法が、

ターゲットが自分に恋心や個人的関心を持ってもらわないと成立しない 

ということなんだよね。

フィクションだからとはいえ、

そんなにウマイこといくのかね??と、つい思ってしまったんだけど

でも世の中、恋愛詐欺とか宗教詐欺とか保険金詐欺とか、

サキのような心理操作の手口によるものが実際よくあるわけだから・・・

サキの尋常ではない心理操作習得の痕跡(おびただしい書物)を見れば

それも可能なのかもね。

それにしてもまあ、だれもかれも、

見事にサキの術中にハマっていく。

オモシロイくらいに。

そしてほとんどの人が、「サキに出会えてよかった」と

思っているのだ。

個人的な悩みやコンプレックスを抱えていた自分が

サキと出逢えたことで変わることができた、と。

もちろんそれはサキの意図的な心理操作によるものだけど

その手口が実にアッパレで・・・

そんな風に接せられたら、弱みを持った人間なんて

ひとたまりもないだろうなあ・・・と

思わずにはいられない。

そしてつくづく、「人の心」を扱う、ってことは

扱う人の心や状態次第で、

神にも悪魔にもなりうる、ということを、

この神のように美しく神々しい哀しい悪魔は

私たちに教えてくれているのかもしれない。

ひとつだけ、単純な疑問として思わずにはいられなかったのは、

救急車で搬送時、たまたま偶然道で居合わせた、

どこの誰かも分からない4人の人物を、

どうやって特定できたんだろう??

って、その辺がほぼ描かれてなかったので

ちょっとリアリティは欠けるかな、と思ったけど

まあ、ドラマだしね(笑)ってことで。

印象的な食事シーン

この作品の見どころとしてあげたいのが

「サキ」の「食事シーン」

一人暮らしの「サキ」が、

一人優雅に調理をして食事をするシーンが

たびたび印象的に描かれているんだけど、

これがなんともエロチックなのだ。

彼女が食べるのは、ほぼ、動物性のもの。肉。

ソテーしたあわび、生ガキ、ボイルしたカニ、チキン・・・

ゆっくりと口に運び、ゆっくりと噛みしめ、

赤ワインで流し込む。

ドアップで映し出される口元と

ゴクリと音が聞こえてきそうな喉元。

まるで、「獲物」をじっくりと味わう魔女のような・・・

そしてとっておきなのはコレ。

彼女は、5人の復讐の相手の数だけ、

サーロインステーキの肉を注文している。

一人ずつ復讐を遂げると、

その祝杯なのか、弔いも兼ねてなのか、

自宅でその肉を焼き、

相手の生まれた年の赤ワインと共に食す。

じっくりと、じっくりと

味わいながら・・・。

これらの食事のシーンは

かなり猟奇的。

演じる方も大変だったんじゃないかと

思ってしまった。

なんていうのかな、

すごく動作は優美だし優雅なんだ。

ゆったりとしていて上品で・・・

「サキ」の人物像がそうだから、なんだけど、

でも、その優雅な食べ方から、

野生的なエロチシズムや 猟奇的な怖さなんかも表現する、となると 

単に上品に食べるだけでも、ダメだし、

見ている者の色んな想像力を掻き立てるような 魅惑の演技に、 

ナカマユキエ、スゲー☆

と、思ってしまいました(笑)

映像効果の素晴らしさ

この作品のもうひとつの印象は

映像の見せ方と演出が素晴らしい、ということだった。

例えば食事のシーンでも、

生ガキを音をたててズルズルとすすり喰らう口元のアップから

それを赤ワインで流し込む喉元を

ガラステーブルの下から見上げてガラス越しに映し出す、など

立体的なアングルと見せ方が とても印象的。 

どの食事シーンもそんなカンジで、 毎回、

「今回は何を、どんな食べ方で見せてくれるんだろう?」 

と、つい気になって見入ってしまっている自分がいた。

また、復讐の獲物の象徴ともいえるサーロインステーキ。

冷蔵庫の内側からのアングルで、

「サキ」が冷蔵庫を開けて

肉をまじまじと見ている様子を 映し出す。 

だんだんひとつずつ減っていく肉。

じっくりとじっくりと

獲物に近づき、しとめるタイミングをいつにしようかと

冷蔵庫を開けて肉を眺めながら思いめぐらす「サキ」の心情が、 

そのアングルと映像から伝わってくるようで。 

その他、全編を通して、

見る者の想像力を何倍にも引き出してくれるような

とても立体的で奥行きを感じさせる演出だな、と思いました。

高嶋政伸さん&富田靖子さんの怪演

高嶋政伸さんも富田靖子さんも共に、

「怪演」には定評のある方々だと思うんだけど、

私も個人的にお二人の「怪演」っぷりは大好きで、

今回もかなりの壊れっぷりを見せてくれました。

微妙な表情とか、

恐怖にひきつった顔とか

怒りに狂って血走った顔とか、

メーターが不意に振り切れてしまうような 

イッちゃってる演技が かなりヤバイんだよね。 

そんなお二人の演技も

この作品の不気味さに大いに色を添えてくれていたと思います。

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