有名フリーホラーゲームの映画版 - 青鬼の感想

理解が深まる映画レビューサイト

映画レビュー数 5,784件

青鬼

2.002.00
映像
2.00
脚本
2.50
キャスト
2.50
音楽
2.50
演出
2.50
感想数
1
観た人
1

有名フリーホラーゲームの映画版

2.02.0
映像
2.0
脚本
2.5
キャスト
2.5
音楽
2.5
演出
2.5

目次

動員数は良かったらしいが、内容は正直ひどい

昨今、アマチュアのクリエーターが作ったフリーゲームが、徐々に世間に浸透している。アマチュアの作ったゲームながら、それらの完成度は高く、ネット世界からの認知度も高い。

『青鬼』は、ホラーを題材にしたフリーゲームとしてはおそらくもっとも有名な作品であろう。『ib』や『魔女の家』など、フリーゲームのなかでは一定のファン層がいるホラーゲームのなかでも、群を抜いて動画サイトでの実況数が多く、人気実況者と呼ばれる動画投稿主はほぼ必ず『青鬼』のプレイ動画を挙げているほどである。それほど、『青鬼』は知名度のある作品なのである。

その『青鬼』が、なんと実写映画する運びとなった。主演にはAKBの”あんにん”こと入山杏奈を起用。宣伝も力を入れており、かなり予算と力の入った作品となっていた。

しかしながら、題材である『青鬼』はネット上では有名な作品でも、世間一般的にはほとんど知られていない。どれほど集客効果があるか謎であったが、予想に反して『青鬼』はヒットした。

公開当初は9館の上映規模であったが、公開から二日間の全ての劇場で、全ての上映回が満席になるなど健闘を見せ、結果として上映館数は全国で70を超えた。上映時間一時間ほどの短編作品としては、異例のヒットである。

その功績を受けてか、『青鬼』は第二弾にあたる『ver2.0』が2015年7月に公開。破竹の勢いで映画界に旋風を巻き起こした…ように見えた。

だが、評判に吸い寄せられて映画を観てみると、出来の悪さに閉口せざるを得ない。

『シックスセンス』のオマージュとおぼしき脚本はお粗末の一言

まず、ひどいのが脚本。

謎の怪物・青鬼がいるジェイルハウスに学生たちが閉じ込められるという設定だが、序盤で説明がされないためなぜ彼らがそこへ行ったのかわからず、観客は完全に置いてけぼりになる(後半でこの伏線が回収されるのだが、そこに至るまで長すぎてかなり意味不明)。しかも、ジェイルハウスは卓郎の家の敷地であるらしい。なぜ人の家の敷地に怪物が住む屋敷があるのかまずもって不可解だ。

そこを譲歩するために、あのジェイルハウスで死んだという主人公・アンナの弟が青鬼になったと仮定しよう(原作ゲームの『青鬼』が元人間であったという説は、ファンの間で有名である)。そうすれば、卓郎の一家が所持するジェイルハウスに、死後なんらかの理由で変異したアンナの弟=青鬼がいる理由がつく。

しかし以上の説明は、筆者の勝手な脳内補完に過ぎない。仮に筆者の説が当たっているとしても、映画本編で全く説明がない限り、観覧者たちの間では議論のしようもないだろう。

しかも、たとえ青鬼の謎が解消されたとしても、構造的な欠陥がありまくりの、謎の仕掛けまである屋敷を個人が所有しているとは到底思えない。つまり卓郎の家の敷地にジェイルハウスがあるという設定自体に無理があるのだ。

こうした設定だけでも欠陥だらけなのに、挙句の果てにオチが夢オチ(か妄想オチか、それすらもはっきりしない)という、ホラーにおいてもっともやってはいけない最低の結末だった。アンナが助かる(ゲームをクリアする)のも「立ち向かえばいいんだ」という『青鬼』ゲームファン噴飯ものの妄想以下の結論であり、ブルーベリー色の怪物に丸呑みにされてしかるべき内容だ。

シュンの謎もはっきりいってどうでもよい。映画『シックスセンス』のオマージュなのかもしれないが、そんなものを差し込む暇があったらゲームファンを震撼させた「青鬼たちの牢獄」の演出でも差し込めばよかったのではないだろうか。

カメラワーク、演技、全てがひどい。唯一救いになるのはファンサービス

逃走ゲームバラエティー番組を彷彿とさせる、バストアップ煽りの逃走劇。ご都合主義の展開。とても喰いちらかされているようには見えないグロ演出。恐怖演出も粗末、粗末の一言で、はっきりいって映画として成立していないほどである。

しかし、『青鬼』という作品と正々堂々向き合ったことは事実で、異妖な怪物・青鬼を見事CGモデリング化した点は認めざるを得ないだろう。

特に、『青鬼』が出現する際、作中でおなじみのBGMが使われたりと、ゲームを知っているファンは嬉しい演出も多い(それにしては使われ方が雑だが…)。

”割れた皿”、”クローゼットに閉じこもるタケシ”、”ピアノの仕掛け”など、『青鬼』を知っている人がにやりとする演出も多々ある。

しかし、BGMのように、そういったファクターがほとんど活かされないのが致命的だ。割れた皿で壁紙を切り裂くこともなく、ピアノの仕掛けを解除して行きついた地下室は卓郎が序盤でカギを開けていた。

せっかく良い『青鬼』を世に知らしめるキッカケになったのだから、もうちょっと頑張って欲しかった…というのが正直なところだ。

非常に辛口なレビューになってしまったが、ここ数年、ネット上で人気のゲームが実写化映画される流れが来ている。『恐怖の森』、『Five Nights at Freddy's 』など、いずれもファンからの評価が高いゲームばかりだ。

どれも題材は良いだけに、『青鬼』の二の舞にならないことを祈るばかりである。

あなたも感想を書いてみませんか?
レビューンは、作品についての理解を深めることをコンセプトとしたレビューサイトです。
コンテンツをもっと楽しむための考察レビューを書けるレビュアーを大歓迎しています。
会員登録して感想を書く(無料)

関連するタグ

青鬼が好きな人におすすめの映画

ページの先頭へ