何がここまで『進撃の巨人』ブームを作ったか - 進撃の巨人の感想

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進撃の巨人

4.644.64
画力
4.21
ストーリー
4.64
キャラクター
4.64
設定
4.79
演出
4.57
感想数
7
読んだ人
46

何がここまで『進撃の巨人』ブームを作ったか

4.54.5
画力
3.5
ストーリー
4.5
キャラクター
4.0
設定
4.5
演出
4.5

目次

アニメ化を皮切りに、人気が加速した作品

もはや『進撃の巨人』について説明はいらないだろう。今やその知名度は漫画ファンの垣根を超えて、世間一般にも認知されるまでに至った。

壁の内側に住む人類、人を食う巨人、巨人への絶望的な戦いに挑む兵士たち…。悲壮感漂うこれらのワードを聞くだけで、『進撃の巨人』の面白さの一端が垣間見えるというものだ。

別冊少年マガジンで連載していた『進撃の巨人』は、2013年4月のアニメ化をきっかけに、一気に知名度を挙げていった。

だが、アニメ化したからといって、その作品が必ずしも面白いものとは限らない。昨今、キャラの認知度も高くないのにコンビニでくじ引き景品として取り上げられたり、有名なお菓子とタイアップするコンテンツが多い。ものによっては明らかに出版社のゴリ推しとわかったりして、ファン以外の客はかえって気持ちが引ける。明らかに客足も中途半端なコンテンツの商品がワゴンセールで半額で売られたりすると、どうしようもなく物悲しい気持ちになってしまうのに…。

しかし、『進撃の巨人』は、編集部のゴリ押しだけでは収まらない”本物”の漫画である、と断言できる。

残酷で悲壮な物語、それぞれの責任と戦う若き兵士たち、そして世界の謎。

作者・諫山創が全力を尽くし、この物語の創作にあたっているのがよくわかる。

引き付けられる残酷なストーリー

『進撃の巨人』の有名なセリフに、ミカサの「世界は残酷なんだから」というものがある。これは作品全体のテーマにもなっている言葉だ。

なぜならば、『進撃の巨人』のキャラに絶対安全圏たる”聖域”がないからだ。主人公エレンの母親も、仲間のマルコも、数多の巨人を屠ってきたリヴァイ班の四人も、エレンを子供のころから見守ってきたハンネスも、みな死んでいく。善人であっても悪人であっても、登場人物たちの希望も読者の願いも作者の意図すら無視して、ただ”残酷”に死んでいく。

この無慈悲なまでの現実が、読者を引き付けてやまない。愛着のあるキャラがいつ死ぬか、全ては作者の選択次第で、読者たちは物語を固唾を飲んで見守るしかないのだ。

昨今では、登場人物たちがただひたすら無残に死んでいくだけのスプラッタ・サスペンスが多くなったが、『進撃の巨人』はこれらの漫画とは違う。

登場人物のひとりひとりの死にはちゃんと意味があり、多くは生き残った者の精神的成長に繋がる。エレンしかり、ジャンしかり、身近な人の死に触れて、キャラクターたちは自らの生き方や戦い方を振り返っていく。

『進撃の巨人』の物語は確かに”残酷”だが、死を粗雑に扱った話ではない。これは、まだ未読の人にも、『進撃の巨人』に対して誤った解釈をしている人にも、声を大きくして改めて訴えたいことだ。

残酷な世界で生きる人間の強い意志

『進撃の巨人』の世界は残酷だ。その残酷な世界のなかで、登場人物たちは自らの道を進んでいく。それもまた、『進撃の巨人』の大きな魅力の一つだ。

例えばエレンの同期生たちは、訓練終了直後に巨人の襲撃を経験して、調査兵団に進むか比較的安全な憲兵団に進むか悩む。また、王政へのクーデターの際に、人間を殺すかどうかの選択に迫られる。いずれも、十代半ばの少年少女には決めあぐねる苦渋の選択だ。

だが、それでも彼らは、立ち止まることなく自らの道をしっかりと決めていく。合理主義だったジャンが、正体不明の女型の巨人を前に、隊のために足止めを企てるシーンは、ジャンの人間的成長を現す重要なシーンだ。

自ら定めた道を真っすぐに突き進んでいくのは、若き兵士たちだけではない。

裏切ったライナー、ベルトルトからエレンを奪還する際、調査兵団団長であるエルヴィンは巨人に腕を食いちぎられてしまう。兵士たちはみな混乱して、馬を止めて隊長を救出すべきか悩むが、巨人に腕を食われてなおエルヴィンは「走れ!」と一喝する。

有能な指揮者でありながらどことなく謎めいていたエルヴィンだが、ここで初めて自らの強い意志を露呈する。調査兵団の面々と一緒に、読者はエルヴィンのセリフに心を震えさせられてしまうのである。

未だ多く残る謎。今後の展開からも目が離せない

連載途中にありながら累計発行部数5000万部を突破した『進撃の巨人』であるが、まだ物語は終わっていない。

クーデター以降、徐々に明らかになっていく世界とエレンの謎。巨人であったライナーやベルトルト、アニ、そしてユミルの知る真実。猿型の巨人の目的やエレンが持つとされる”座標”の意味…これらの謎が完全に解けるまでは、まだ時間を要するだろう。

ここまで知名度や物語が大きく育ってしまうと、ちゃんと完結するか読者は不安に思ってしまう。

だが、連載当初からちりばめられた伏線の数々と、それをわずかずつ回収されているのはすでに証明されている。作者・諫山 創は、この物語を粗雑に扱うつもりは毛頭ないのだ。

読者と『進撃の巨人』ファンたちは、この屈指の名作が一体どんな終わりを迎えるのか、楽しみにじっと待つことにしよう。

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