乗ったら死ぬロボットと少年たちの物語 - ぼくらのの感想

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ぼくらの

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映像
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ストーリー
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キャラクター
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声優
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音楽
3.50
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乗ったら死ぬロボットと少年たちの物語

3.03.0
映像
2.0
ストーリー
4.0
キャラクター
2.5
声優
2.5
音楽
3.5

目次

基本はロボットと少年の王道ストーリー。だが…

ロボットと少年の組み合わせは、『機動戦士ガンダム』以来の王道のアニメテーマだ。

アニメオリジナル作品、もしくはアニメ化された漫画原作のロボットものも、多くは王道に倣っている。『ガンダム』においては歴代の主人公はほとんどが青少年だ。アニメの視聴世代に合っており、感情移入できること、少年の精神・肉体的成長を描けることなどが、多くのクリエイターがあえて王道を選ぶ理由だろう。

『ぼくらの』も、その”ロボットと少年”ものの漫画原作のアニメだ。原作者は、鬼才・鬼頭莫宏。人間の複雑な心理模様を描き、それを主人公・主役として正当化する力を持つ類まれなる作家だ。

ただし、『ぼくらの』は普通の”ロボットと少年”ものとは一線を画す。人類の未来と地球を守るために乗るロボット。それに乗った人間は、死んでしまう。

『ぼくらの』は自然合宿に参加した少年少女が、偶然超巨大ロボットに乗って戦う運命を決められてしまうことから物語が始まる(ちなみに、漫画版とアニメ版、小説版ではそれぞれ物語が違うため、ここではアニメ版の内容について考察したい)。

乗ったら死ぬという宿命、しかもロボットーージアースの契約者となったのは年端もいかない子供たちという悲惨さ。残酷な『ぼくらの』の物語は、物語にベストマッチした主題歌「アンインストール」と共に有名になった。

声優陣はベテラン揃いの豪華なメンツばかり。思春期の少年少女の心を表現するにふさわしい配役だった。

『ぼくらの』の重厚で悲惨なストーリーは、ロボットアニメに飽きた世代の注目を引いた。

キャラ一人一人の偶像劇

『ぼくらの』が従来のロボットアニメと大きく違う点は、キャラクター一人一人にスポットがあてられるというところだ。

基本的には『ぼくらの』は一話くぎりの短編形式で、一話分のエピソードが終わって物語が完結する。その一話とは、エピソードごとの主人公がジアースに乗って敵性体と戦い、死ぬまでだ。

つまり、一人のキャラクターにスポットがあたるのは基本的に一話限り。その一話のなかで、主人公たちは葛藤し、己の人生を振り返りながら、自分の生きた意味、そんで死んでいく意味を見出していく。

登場するキャラクターが多く、それぞれに立場と過去があることから、視聴者はいずれかのキャラクターに感情移入することが出来る。一番自分に近い立場の、十代の少年少女たちが死んでいく無常観は、視聴者を歯がゆくも切ない気持ちにさせることだろう。

ジアースに乗れば自分が死ぬ。だが、負ければ愛する家族や友人までもが死ぬ。死にたくないという思いと、地球を守るため戦わなければならないという葛藤のなかで生きるそれぞれの想いは、筆舌にしがたいものがある。

筆者は個人的に、わが子を産むことなく死んでいったチズや、ようやく生まれた義弟の幸せを願いながら死んでいったマキの物語に深く心を揺さぶられた。死んでいった彼らが生存するifの未来を想像してしまうのは、感情移入に過ぎるだろうか。

惜しむべくは、作画崩壊と中だるみ

ストーリー面では文句ナシの名作だが、これはそもそも漫画原作者である鬼頭莫宏の才能に依るものだ。

アニメとしてはどうであろうかと考察してみれば、ところどころ惜しい点が目立つ。

まず、少年たちの物語から政治・利権問題が絡んだ大人の物語への変遷していったこと。これはあくまで少年たちの悲惨な偶像劇として人気を集めていた『ぼくらの』の、足を引っ張る形になった。

視聴者が見たいのは主人公たちの人間模様と成長物語であり、政治的な駆け引きは一切求めてはいない。あくまでミクロな世界観が見たい、といった視聴者ニーズとは逆行する形となり、視聴者を離れさせた。

また、ところどころ目立つ作画の荒れーー作画崩壊も視聴者をがっかりさせた要因の一つだ。

昨今の多発する作画崩壊は、アニメ業界に蔓延する問題である。これは視聴者にも原作者にも全くの落ち度はなく、制作側の一方的な問題だ。視聴者からすれば、粗雑品を見せられているような気持ちになって、全くいい気分がしない。

特に物語の終盤、クライマックスにおいても作画崩壊が続いたとなると、視聴者は作品を評価しないだろう。円盤の売り上げにも関わってくる。制作スケジュールや予算の問題があるのだと予測は出来るが、制作側にはもう少し兜の緒をしめて作品制作にあたってもらいたい(もっとも、これは『ぼくらの』に限った話ではなく、もっとひどいアニメ制作会社は星の数ほどある)。

以上のような問題もあった『ぼくらの』であるのが、良作であることには間違いない。

欠点を差し引いても、少年少女たちの物語はあまりにも刹那的・かつ魅力的で、何度も見返したくなる。

アニメはメインの主人公・ウシロが戦いを終えたことで完結を見た。原作漫画とは展開が違うものの、きちんとアニメオリジナルの展開の結末を描けたところは評価すべき点だ。

叶うならば、『ぼくらの』だけでなく、鬼頭莫宏の他の作品もアニメとして視聴してみたいと筆者は思う。

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