小林秀雄の不思議な力を体感せよ
小林秀雄の入門としては最適な一冊。本書は、小林秀雄の生涯を追いながら、彼の文章に潜む魅力と危うさを追いかけている本である。新書なのでさくっと読みやすい。 小林秀雄は、一般に「日本の近代文芸批評の確立者」として見なされている。国語の教科書で彼の文章を読んだという人も多いのではないだろうか。小林は、対象の作品をただ解読して説明するのではなく、その作品から自立した「独立物」としての文芸批評を作り上げた。筆者の高橋昌一郎は、新聞に載った小林の写真を見て「その人物は誰か」と尋ねてきたアメリカ人に、「リテラリー・クリティック(=文芸評論家)」「コメンテーター(=批評家)」ではなく「フィロソファー(=哲学者)」と答えたという。本書は、小林の誕生から逝去まで、その一生を丹念に振り返りながら、彼の論理に接近している。小林自身の文章はもちろん、彼の妹や、周辺人物の文章がふんだんに引用されており、小林秀雄と...この感想を読む
3.03.0
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