旧来のハリウッド映画とニューシネマの境目に位置する作品「動く標的」 - 動く標的の感想

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旧来のハリウッド映画とニューシネマの境目に位置する作品「動く標的」

3.03.0
映像
3.0
脚本
3.0
キャスト
4.0
音楽
3.0
演出
3.0

この映画の原題は「ハーパー」だが、邦題は原作の題名「動く標的」となっている。 当時は、ロス・マクドナルドのハードボイルド小説が、それほど人気を博していたのだ。

ところが、映画化に際しては、主演のポール・ニューマンが、「ハスラー」「ハッド」と過去の自分の主演作がHで始まる題名でヒットしたため、勝手に主人公の名前をアーチャーからハーパーに変えてしまったんですね。 これは、正直、ミステリファンからすれば許せないことですよね。 多分、ポール・ニューマンは、ハードボイルド小説のファンではないんでしょうね。

それはさておき、ハーパー(ポール・ニューマン)は、ロサンジェルスに住む私立探偵だ。 そんな彼に旧知の弁護士グレイヴス(アーサー・ヒラー)を通じて、富豪の妻(ローレン・バコール)から人探しの依頼が入る。

私の夫が行方不明だ、誘拐事件かもしれないというのだ。 邸を訪れたハーパーは、入り組んだ人間関係に巻き込まれていく。 先妻の娘(パメラ・ティフィン)や雇われパイロット(ロバート・ワグナー)をはじめ、いわくありげな人物が次々と現われて、話の糸をもつれさせていくのだ。

ただ、この「動く標的」の一風変わった味わいは、プロットのひねりよりも、登場人物の行動形態や背景のユニークさに由来しているように思う。 旧来のハリウッド映画とニューシネマの境目。 古典的フィルム・ノワールとネオ・ノワールの境目。 そんな過渡期に特有の匂いが、この映画には強く染みついている。

1960年代のカリフォルニアに特有の風俗描写は言うまでもない。 朝起きたハーパーが、出がらしのコーヒーをゴミ箱から拾って、もう一度使う有名なシーンなども、あの時代なればこそ新鮮に感じられたのだろう。 逆にいうと、手や背中の動きをやたらと強調する、アクターズ・スタジオ流のメソッド演技は、今観ても新鮮な驚きがありますね

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