純粋にハラハラドキドキと楽しめたパニック映画 - スカイライン-征服-の感想

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純粋にハラハラドキドキと楽しめたパニック映画

3.53.5
映像
3.5
脚本
3.0
キャスト
2.5
音楽
3.5
演出
3.0

目次

期待せずに見たB級パニック映画

この映画はさほど期待せずに観た。パッケージ自体なんとなく安いイメージだったし、低予算パニック映画だろうと勝手に判断し、時間つぶしになればいいかと言う程度だった。それが思いがけなく楽しめて、途中で止めることができず、結局一気に最後まで観てしまった。
こういう映画は当たり外れが非常にある。あまりにタイトルがひどすぎて期待せずに見たら面白かったり(「パニック・マーケット」。サメがマーケットに!しかも殺人鬼も!と安すぎるうたい文句にかかわらず、まったく悪くなかった)、逆に予告が素晴らしすぎてわくわくして観たら、オープニングから正視できないほどだったり(「クローバー・フィールド」しかり「グエムル」しかり)して、タイトルやパッケージだけではその良し悪しの判断はとても難しい。
この映画は、恐らく賛否両論あると思う。そして多くのパニック映画同様、全ての映画に深みやメッセージ性などを求める人には向いていないだろう。
しかし個人的には娯楽として十分に楽しませてくれた映画だった。

思いがけず楽しめた迫力あるCG

この映画は低予算を謳っている(この予想は的中した)だけあって、俳優陣でビッグな人はいない。唯一主人公のジャロッドを演じているエリック・バルフォーだけ、「24」で見たことがある程度だ。その分、製作費のほとんどをCGに費やしたのではないかというくらい、CGに粗さが目だたなかった。確かにCG大作映画特有の画面の暗さはあちこちにあったものの気にならない程度で、出てくる宇宙船やエイリアンには迫力があり、それだけでもかなり楽しめた。
こういう映画でCGをケチってしまうと、痛々しくて観ていられない代物ができあがる。そんな映画だったらきっと最後まで観れなかったと思う。この映画が最後まで観れた理由はそのCGの迫力と、そんなエイリアンに追われるハラハラ感に尽きる。
特に、車で逃げようとマンションから飛び出してすぐ、恐竜タイプのエイリアンに車ごと踏みつけられるところとか、屋上に逃げたのにでかいのがよじ登ってくるところとか、個人的にはツボすぎて、かなり楽しめた。

いろいろどこかで観たことあるようなシーンはあるけれど

この映画を批判する人は、多分、いろんな映画の寄せ集めというようなことを言うかもしれない。それは確かにある。いきなりなんの前触れもなく宇宙船が責めてきて、それを一般市民目線で描くところなどは「インディペンデンス・デイ」や「クローバー・フィールド」のようだし(特に、パッケージは「インディペンデンス・デイ」によく似ている)、エイリアンの容赦ない攻撃や人間を食べるところなどは「宇宙戦争」のようだし、イカのように触手を動かし飛ぶ飛行体は「マトリックス」に出てきた飛行体によく似ているし、恐らく2があることを示唆しているかのような唐突な終わり方は、「アイアンマン」だけでなく、多くの映画が使う手腕だ。にもかかわらずこの映画が面白かったと言える理由は、そのベタさ加減にあると思う。
あえて奇をてらうことなく、ステレオタイプにすることでストーリーが明確になり、わかりにくいところなく純粋に映像を楽しむことができるのではないだろうか。
だからあちこちの映画で見たことあるような気がするのだけど、決して悪くない仕上がりになっているのだと思う。

エリック・バルフォー含む俳優陣の演技

無名とまではいかないまでも、この映画に出ている俳優はそれほどビッグネームはいない。エリック・バルフォーだけ「24」のマイロ役が記憶に残っているくらいだ。あの役もなんだか中途半端なプログラマーで、あまり好きになれない役柄だった(とは言え、それは監督の采配なのだろうけど)。今回はそんなエリック・バルフォーが主役だ。この映画に彼が最初出ているのに気づいた時、「24」の印象があったからこそその演技にさほどの期待はしていなかったのだけど、決して悪くなかった。それもこの映画を最後まで楽しめた理由のひとつだと思う。彼の演技には、友達のテリーを助けられなかった時の一瞬の表情や、エイリアンの光を浴びたことでなにかしら体に変化が起こったのか、いきなり凶暴な表情を見せるところとか、なかなか「おっ」と思うところが多かった。
他にもテリー役のドナルド・フェイソンも良かった。黒人特有のコメディタッチな動きだけでなくパワフルな行動力もリアリティがあって、彼が出ている間はエリック・バルフォーよりも光っていたかもしれない。
あとすぐ死んでしまったけど、どこかで見たことがあった人がいたので調べてみたら「LOST」に出ていた俳優だった。
そういう感じで無名ではないけれど、それほど知名度のない俳優ぞろいだったにもかかわらず、演技はリアルでこちらがハラハラするくらいだった。
ビッグネームだったらいいというわけではないのだなという当たり前のことに、こういった低予算映画は気づかせてくれる。その気づきの瞬間があったことも、この映画を観てよかったと思える理由のひとつだ。

もったいない、生かしきれていない設定

ジャロッドは、パーティで遊んで起き抜けに、宇宙船が出す、それを見た相手を引き寄せる力を持つ光線を浴びてしまう。すんでのところで恋人に助けられるのだけど、浴びた時間が人より長かったのか、この光線を持つことでなにかしら体に変化が起こったのか、なぜかこの彼だけがエイリアンに襲われても他の人間と違う結果になる。他の人間は脳を食べられたらそこでジ・エンドなのに、ジャロッドだけは脳を奪われてもその記憶はそのままで、エイリアンとしてよみがえる。そして殺されかけていた恋人を助けるのだ。
この記憶が残ったまま脳を奪われる設定は、マンガ「HUNTER×HUNTER」のキメラアントたちを思い出させる。この映画の公開は2010年なのでどちらが先かわからないけれど、もしこの映画が「HUNTER×HUNTER」からヒントを得ていたとしたら、ちょっと面白いなと思った。
とはいえ、せっかくのこの設定が生かしきれていないと感じたのは事実だ。ジャロッドが特異体質だとわかったのは映画が終わる少し前だからだ。もっと早くこの設定が出ていれば、もう少し映画に深みが出ていたかもしれない。もしかしたらこの設定は2でより生かされるのだろうか。

確かにつっこんでしまうシーンの数々

この映画をもうひとつだと思う人々は、きっと「なんでそこでそうなる」とか「なんでそれを気づかないのか」と映画に入り込んでいない人特有の無粋なツッコミを数多くするのだと思う。そしてそういうシーンが多くあるのも間違いない。でもこんなパニック映画でそんなまともなツッコミをしてしまうなら、そもそもこういう映画は観ないほうがいい。こういう映画は、そういうのを気にせず軽く見られる人のためのものだ。
確かに、あれほど窓から攻撃されているのにどうしてまだ窓際で寝るのか、とか、どうして今ブラインドを開けるのか、とか、双眼鏡で外見ているのにどうしてあんなでかいエイリアンが近くにいることに気づかないのか、とかいろいろあるにはある。
ジャロッドが脳を奪われながらもエイリアンとして復活し、恋人を救うのはいいのだけど、少しくらい体への拒否反応とかなにかしらないか、とかリアルな疑問もある。
そしてこんなあからさまに、「この映画が売れたら2もやりますよ」的な終わり方はいかがなものか。
とか思うのだけど、ツッコミながらも楽しめる映画は確かにあるのだ。ツッコミながらも映画にどんどん入り込んでしまう。ツッコミばかりして楽しめない映画はそのストーリーに興味や魅力がなく、入り込めないからだ。そんな気がした。

スカイラインー奪還ー

この映画のタイトルは「スカイラインー征服ー」である。確かに征服以外に言葉がないくらい、容赦ないエイリアンたちの攻撃だった。そしてこの映画の終わり方が示唆していたように、きちんと2は製作されていた。とはいえ公開が2017年なので、「スカイラインー征服ー」が終わってすぐではなさそうだ。2にあたる映画のタイトルは「スカイラインー奪還ー」だ。当然エイリアンとなったジャロッドも出てくるのだろう。気になって予告だけ見てみたけれど、今回の作品とは違い、俳優陣も映像も一気にお金をかけたような印象だった。観てみたい気はするけど、あまりの違いに少し寂しくなってしまった。
この映画は最近観たパニック映画の中ではなかなかの映画だった。個人的にはディザースタームービー含めパニック映画は大好きなのに、ここのところ外れが多かったので(今思い出したけれど「第9地区」もひどかった)、この分野ではもうそれほど面白いのには出会えないかも落ち込んでいた気持ちを、この映画は思いなおさせてくれた。
まだまだ観てない映画はたくさんある。もっともっと観て新しい名作を見つけよう。そう思わせてくれた映画だった。

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