放送当時、女子中高生を夢中にさせたドラマ
大映テレビが大ヒットした80年代
このドラマ、放送されていた当時はクラス中の女の子が見ていたと思います。それほど、次の日はこのドラマの話題で持ちきりでした。最初のナレーションを全部覚えて真似する友人もいたくらいです。あの低い声のおどろおどろしい感じのナレーション…。いまでも少し空で言えそうな気がします。その子は何度も「やってやって~」とせがまれてクラスの人気者になっちゃったくらいです。大映テレビというのでしょうか。「スチュワーデス物語」とか「スクールウォーズ」とか…。そうそうキョンキョンの「少女に何が起こったか」なんていうのもありました。そのオーバーな演技や、現実味のないドラマチックな出来事の連続するブラウン管を私たちがワクワクしながらみつめていた80年代。ああ懐かしき思い出よ。
と、いうわけで、その思い出にどっぷり浸りたくてレンタルDVDを借りて全話見返してみました。そうしたら、なんでこんなことを…というくらいおかしな点がいっぱいあって、ツッコミどころが満載でした。時代の流れって残酷ですね。まず「乳姉妹」の話を知り合いの若い女の子にしたら、「それってアダルトDVDかなんかですか?」と言われてしまいました。リビングのテーブルに置いておいたら勘違いされそうですもんね、このタイトル。もしかしたら親御さんに「子どもは見てはいけません」と言われた家庭もあったのでは?
女の子なら憧れる夢の設定
子どもの頃、お母さんに叱られると「私はホントはこの家の子じゃないんだわ。きっとお金持ちの家の子でいつか本当のお母さんが迎えに来るんだわ。」と思いませんでしたか。私はしょっちゅう思っていました。と、いうことはしょっちゅう怒られていたということなんですけど。でも、ホントにお金持ちの娘側はいいけれども、実は貧乏な漁師の家の子だった千鶴子さん側はたまったもんじゃないですよね。天国から地獄へ突き落とされてしまった気分でしょうよ。自暴自棄になるのも仕方のないことです。初めは仲良くしてあげようと思っていた乳姉妹のしのぶちゃんが、みんなにちやほやされているのを見るのはほんとうにつらかったと思います。そりゃ、いじめたくなるのも無理ないわ。婚約者の雅人兄さんまで、しのぶちゃんに惹かれていく様子だし。でも、私はこのドラマのなかで、唯一まともだったのは、その鶴見辰吾演じる雅人兄さんだと思ったわ。自分が養子で跡継ぎであるという自覚がはっきりしていました。千鶴子に対しても、しのぶに対しても正しいことを説いていました。一時はしのぶに心奪われても、千鶴子の心が自分から離れて行くとなると追いたくなる…。当然の気持ちだと思いました。
ドラマの中で、私が最高に笑ったのは、千鶴子が鬼神組のリーダーの小沢仁志にそそのかされて、銀行強盗をするシーン。その時の顔がバレバレのほっぺた真っ赤っかのマスクがとても良かったです。分かりやすくて。
あとは、千鶴子さんがしのぶちゃんを気に入らなくて校門のフェンスの先にトマトをブッ刺していくシーンかな。あの大量のトマトを持って登校してきたのかなと思うと思わず笑ってしまいました。しかし、それは千鶴子さんのどうしようもなくやり場のない怒りを表現した重要な名場面なのです。
ドラマの結末は思わぬ方向へ
千鶴子さんとしのぶちゃんの入れ代わり事件はいろいろな人たちを巻き込んでいきました。割を食ったのはしのぶちゃんの妹のたえ子ちゃんかなぁ。「私、こんな人が本当のお姉ちゃんなんてイヤ」などと余計なことを言って千鶴子さんを憤慨させたり、漁師の親父がクズすぎたり。しっかり者の娘の幸せを必ずぶち壊すクズ親父の酔っ払いぶりも定番です。お嬢様と呼んでいた子が自分の娘だと分かると「千鶴子」といきなり呼び捨てにする変わり身の早さが潔いです。
千鶴子さんとしのぶちゃんは不良になって大暴れしたり、いい子になって反省したりを繰り返しながら悩み生きていきます。子どもの入れ代わりの話は、映画「そして、父になる」がありますが、そちらが感動的であるのに対して、このドラマはいったいどこへ向かっていくのでしょうか。物語のラストは、子どもの入れ代わり事件とは全く関係ありません。元「東京渡り鳥連合」のリーダーのミチオというトランペッターを千鶴子さんが支えて生きることに視聴者を誘導していくのです。なんで?どうして?と思わなかったのが不思議です。振り返って思えばおかしな話です。どちらかと言えばしのぶちゃんの方に肩入れしていたミチオが、千鶴子さんの恋人になっていくのですから。その頃にはなぜかしのぶちゃんと千鶴子さんはとっても仲良し。何度目の仲直りだったんでしょうか。結局、ラストシーンはミチオの死。今までの話は結局何だったんだろうと首を傾げたくなりました。
このドラマは吉屋信子の小説が原作です。小説とドラマの違いを確かめてみたくなるような結末でした。
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