絵柄のせいで読みにくい一冊 - COPPERSの感想

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COPPERS

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画力
3.50
ストーリー
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キャラクター
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設定
4.00
演出
3.50
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1
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絵柄のせいで読みにくい一冊

3.03.0
画力
3.5
ストーリー
4.0
キャラクター
3.0
設定
4.0
演出
3.5

目次

オノナツメ作品の中でも読みにくい作品

オノナツメ作品はほかにも読んでいるが、突出して「読みにくい」作品だと思う。というのも、もともとオノナツメ作品は絵柄がかわいらしく、落書きタッチで書き込みがあまりない作風なのだが、それが災いしてキャラクターのかき分けが難しい、という難点があるからである。ストーリーは別として(オノナツメ作品のストーリーはどれもしっかり作りこまれている)、この「COPPERS」に関しては、キャラクターの差別化が難しかった作品ではないかと思われる。似たような年代、似たような背格好では、今登場しているキャラが誰なのか、見分けが付かない上に、キャラへの感情移入が難しいからである。そのため、何度か繰り返し読んで確認しなければならないなどの面倒な作業が必要だ。イケメンのおじさんが好きな女性ならいいかもしれないが、短い時間でさっと読みたい男性には向かない作品だろう。実際、ドラマCDに展開されたが、そちらの方が(声に違いがあるので)わかりやすい内容になっている。

好みが分かれる作風

COPPERS」は、オノナツメ作品の中でも初期の「not simple」に近い感じの作風だが、人によっては「雑なマンガ」という感じに捉えられるため、好みが分かれる作風だろう。いい感じに脱力している、または省略してある、ストーリー重視、という感じなのだが、そのシンプルな手法(とくに初期作品の作風)には賛否両論ある。好きな人は好きだが嫌いな人は嫌い、という感じだ。また、オノナツメ自身、別名義でBL作品も描いていることから、男性描写が独特だ。日本というよりも海外ドラマや映画の雰囲気に近く、読み慣れないと馴染めない人も多いだろう。「COPPERS」は「カッパーズ」と読むが、NYを舞台とした作品で、そもそも日本のマンガとして読まないほうが自然に読める。

不思議と食べ物が美味しそう

作中、作画の関係もあるが、あまりたくさんの書き込みはされていない。極力省略したようなマンガで、画面もとてもシンプルに構成されている。しかし、なぜか登場する食べ物はとても美味しそうに見える。オノナツメ作品には必ずパンやドーナツなどの食べ物が登場するのだが、この「COPPERS」においてもドーナツやサンドイッチといった描写が多い。また、男性がドーナツを好む、といった描写が多いのも特徴だろう。リアルに描かれているわけではないし、食べるシーンも簡素なのだが、なぜか無性に食べたくなるのは、オノナツメマジックと言っても過言ではない。

花がない?見所が見つからない

「COPPERS」という作品が面白くない、というわけではない。ストーリーはしっかりしているし、さながらアメリカの連続ドラマのようだ。絵柄がほのぼのとしているが、動きもあるし人間ドラマもしっかる描かれている。しかし一方で「これ」という花がない。通常、どんな作品にも「ここを見て欲しい、このキャラクターを見て欲しい」という部分があるが、NYPD(ニューヨーク市警察)を舞台に、登場人物も多く、全体がぼやけてしまっているような気がする。これはおそらく、同人誌時代の続編という形で書かれた作品(元になったのはオノナツメが個人で活動する同人誌であった)だからではないだろうか。つまり、読み手は映画のように「ここを見て!」というキャッチーなものを期待しているが、実は長編小説や長編ドラマのごく一部を魅せられたに過ぎない、ということだ。そのため、なんとなく花がないように見えたり、見所がどこなのかわからない、といった感覚になる。全100話ある一話完結の連続ドラマのうち、たった数話しか見れていない、というおいてけぼりの感覚になってしまうのだ。一応2冊発行されて完結しているが、続編もあるということなので、この2冊だけで判断するのではなく、もっと長い目で見ていかなければいけない作品だろう。

日本人には馴染みがない

海外ドラマが好きな人にとっては雰囲気を想像しやすい世界観だろうが、なぜかなかなか「世界観に入り込めない」という難点がある。面白いか面白くないかで言ったらおもしろいのだが、喉が渇いたときに食べるバウムクーヘンのように、スムーズに喉を通っていかないのだ。なぜか、と考えたときにやはり「文化の違い」が挙げられるだろう。オノナツメ自身は何度も海外に行った経験がある(留学経験あり)ということで、海外への関心が強く、現地の空気を知っているのだが、読者も同じか、と言えばそんなことはない。せいぜい海外ドラマを見たことがある、程度の感じの人が多いだろう。しかも作品はとてもシンプルな作画なので、読者の想像に委ねているところがある。「これが特徴です」と言われればそれまでなのだが、やはり噛んでも噛んでもうまく咀嚼できない、飲み込もうと思っても喉を通っていかない、という感覚になってしまうのは否めない。どこか「知っている人だけ楽しんでください」というか「わかる人だけがわかる」というか、一部の人にとっては咀嚼に時間のかかる作品だろう。

「かわいいおじさん」が好きな人

では「いいところはひとつもないのか?」と言えばそんなことはない。とくに、かわいいおじさんが好きな女性ファンにはたまらないマンガだろう。甘いものを食べたり、頭髪を気にしていたり(頭髪が薄いという表現もちょっとわかりにくい)、イケメンの可愛げのあるおじさんが活躍するマンガなので、そういうのが好きな人には良いマンガのはずだ。装丁も凝っているし、たいへんおしゃれな作品だ。好きなキャラクターも出てくるだろう。オノナツメ作品にはお馴染みの、落語で言うところの与太郎的なキャラクター(ドジだけどいいやつ)も登場する。男性がキャラクターに共感できるかどうか、は別の問題として、女性がかわいいおじさんを愛でる、という意味で言えば良い作品ではないかと思う。

「アキ」という日本人

オノナツメの初期作品に「LA QUINTA CAMERA 〜5番目の部屋〜」という作品があるが、ここにも「アキオ」という名前の日本人が登場する。「COPPERS」にもアキ(中野秋光)という日本人が登場するが、一種の自作品へのオマージュなのだろうか。もしくは作者自身の存在を投影したキャラクターなのだろうか。

タバコとドーナツを堪能する

同人誌からの流れがある、ということで、やはりオノナツメらしさが発揮された作品であることは間違いない。オノナツメと言えば“タバコとドーナツ”なのだが、もちろんどちらも作中に登場する。作風から言っても、正直、さらい屋五葉、ふたがしらといった日本設定ものより、こちらの方(海外設定)が作者は描いていて楽なのではないか?と推測する。また、描きたい世界観やキャラクターも、どちらかというと、海外のイケメンおじさんなのかな、と思うので、「COPPERS」は作者が描いていて楽しかった作品のひとつではないかと思う。ただ、総合して言えることは「読みやすい、わかりやすい作品ではない」ということと「読者を選ぶ」ということだ。おしゃれでかっこいい作品ではあるし、ストーリーもしっかりしているが、漫画として読みやすく魅力的か、と言えばそうではないのではないだろうか。辛口な言い方にはなるが、一般受けするような作品ではないように思う。ただ、オノナツメ作品が好きな人にとっては欠かせない重要な作品だろうと思う。

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