あの雑なアニメーションは何だったのか…？ - Scratch !　スクラッチの感想

「Scratch!」を視聴した感想です。

もう本当に申し訳ないのですが、「少年漫画賞に応募したが、落選した応募作品」のようだと思いました。
面白いとかつまらないとか、語るレベルではないですよね。
人にお金を取って見せるレベルに、至らない作品だと思います。
描きたいテーマはあるのでしょう。
しかし、観ている人がどう感じるか？という配慮が、全体的に欠けているように思いました。

色々と「ヤバいな」と感じる場面はありましたが、特に途中で荒いアニメーションに切り替わった時が一番ヤバいと思いました。
福田雄一監督の「勇者ヨシヒコ」でも、ギャグ的なネタとして、雑なアニメーションでお送りする事がありますけど、これは本気で良かれと思ってやっていますからね…。

まだアニメーションがちゃんとしていればいいんですが、どう見ても適当ですからね。
しかも途中から意味不明の効果連発で、いよいよ何がしたいのか分からなくなってきます。
主人公が「ちょっと待ってよ！あり得ないよ、こんなの！」と言っていましたが、それはこちらのセリフですよ…。
このアニメーションのシーンがまた、長いんですよね。
「何を見せられているんだ…？」と、終始ポカーンとしてしまいました。

この演出の方は舞台経験者なんですかね？
舞台だと照明を使って、こうした「自転車で逃げるシーン」を演出することはあると思います。
ビビッドな色使いといい、途中の「ちょっと待ってよ！あり得ないよ、こんなの！」みたいなセリフといい、舞台演劇にありそうな演出だなあ、とは見ていて思いましたが…。

これは映画なんで…。

過激なアクションとは…？

また、この作品はbmxのアクロバティックなアクションを謳っていますが、全然迫力がなかったですね…。
せいぜい大ジャンプをするか、タイヤでクルクル回るだけ。それでヤクザが「おおお」みたいに狼狽するのもおかしな話です。
しかもそれで闘うわけではなく、単にクルクルするだけという…。
ジャンプのシーンも、踏み込みの瞬間は映さないので、躍動感に欠けました。

また、そもそも追っ手のヤクザが全然怖くなく、緊張感がありませんでした。
ヤクザにも見えないというか…。
ヤクザなのにすごく優さしいですよね。何度逃げられても、話し合いで解決しようとしてくれるので。
しかも拳銃とかも出てこないので。
車で煽っても、ギリギリの所で寸止めしてくれますしね、本当に優しい。
普通に考えたら、車で拐われて山で捨てられて終わりなんじゃないですかね…。

また、脚本ですが、申し訳ありませんが、セリフが全て古くさいというか…センスが足りない気がしました。
「こいつは腹を空かせたドーベルマンだ」みたいなセリフ、ギャグじゃなく真面目にやってるんですよね…。
セリフをお洒落にしたいのは分かるのですが、ちょっと空回りしていますよね。
「何でホットドッグ屋なのかって？そいつはラジオが聞けるからに決まってる」みたいな…。
昔の洋画の吹き替えみたいですよね。
もう万事がこうなので、苦笑いするしかありませんでした。

制作側と受け取り側の、テンションが違いすぎますよね。
もしこのようなセリフ回しでいきたいのなら、もっとハードボイルドな世界観を見せていかないと、現実世界にクサい物言いの人達がいるだけになってしまいます。

また、セリフが主人公もヤクザもホットドッグ屋も、全員同じですよね。
セリフのトーンというか、口調が。
キャラクターの性格によって、普通は変えると思うんですけど…。
ヤクザと一般人が同じような話口調なのは、どうなの？と思いました。

一度客観視してみてほしい

また、説明不足な部分も所々見られました。
まず、追っ手のヤクザ。彼氏側のヤクザなのか、彼女側のヤクザなのか、最後まで分かりませんでした。

また、彼女がマンションで何度もヤクザに止められるシーン。
彼のマンションの前なのか、彼女の自宅なのかが分かりませんでした。

また、ヤクザから逃げる途中、サンタクロースの格好の呼子に、ビルへ誘われますが、何者なんでしょう。水商売系の呼子なのかもしれませんが、だったら小道具で看板くらい用意できないんでしょうか。

また、裏路地で飲食店の店員に生ゴミをぶつけられ、「とうとう一般人にまで懸賞がかけられた」と主人公が震え上がりますが、普通に見たら運悪くゴミが当たったようにしか見えませんでした。
そういう風に観客に見せたいのなら、店員がどこかに連絡しているとか、目付きが異様だとか、セリフ以外で演出しないと分からないと思いました。

このように、制作側が「観客にはこう見えているだろう、ここまで描けば分かるだろう」というラインと、実際観ている側にかなりギャップがあると思います。アクションも脚本の出来も、結局はそうした配慮のなさの結果だと思います。

そこはプロとして作品を作るならクリアしてほしい所です。

今回視聴した感想としては、そのあたりにアマチュア感があり、残念だと思いました。