少女達の淡い恋心を見事に描いた作品 - センチメンタルジャーニーの感想

理解が深まるアニメレビューサイト

アニメレビュー数 2,474件

センチメンタルジャーニー

4.004.00
映像
4.50
ストーリー
3.50
キャラクター
4.00
声優
4.50
音楽
3.50
感想数
1
観た人
1

少女達の淡い恋心を見事に描いた作品

4.04.0
映像
4.5
ストーリー
3.5
キャラクター
4.0
声優
4.5
音楽
3.5

目次

原作ファンの期待を裏切らない、せつなさ炸裂の隠れた名作

このアニメの原作はシスタープリンセス等の爆発的なヒット作を生み出した月刊誌、「電撃G'sマガジン」でゲーム開発と連動して連載されていた小説「センチメンタルグラフティ」である。しかし、アニメ版は原作小説を元にオリジナルのアニメとして制作された。

オリジナルとは言え、親の仕事の都合で日本全国を転々としていた少年と、各地で出会った12人の少女と少年との間に生まれた、幼くも切ない恋心を描くという原作のテーマからは逸脱しておらず、『12都市12少女物語』として主人公への切ない想いが描かれている。放送前は原作のあの「切なさ」が出るのかと不安視されていたが、放送が始まるとその美麗な作画と思春期の少女たちが胸に抱く想いを見事に表現したシナリオはまさにせつなさ炸裂となっており、原作ファンも、原作を知らないアニメファンも満足できる作品に仕上がっていた。

しかし、全12話で各話1人ずつのオムニバス形式となっていた為に、少女たちが想いを寄せる少年は同じでも、それぞれの少女たちとの間に話の繋がりは全くなく、原作ファンはまだしも、原作を知らない人たちからは「よくわからない」という不満の声があったのは隠しようのない事実である。テーマは同じでも原作とは違うのだから、いっそのこと12人の少女が何かのきっかけで知り合い、主人公との出会いや何故恋心を抱くようになったのかを語り合う今でいう「女子会」のような形式でも成り立ったのはではないかと思われる。

映像の綺麗さは昨今のアニメに引けを取らない

このアニメを制作したのはガンダムなどのロボットアニメでお馴染の「サンライズ」である。アニメ界の老舗が制作しただけあって、原作のキャラクターデザインを踏襲した作画や、細かな動き等はさすがの一言であり、セル画時代の作品だがその美しさは昨今のデジタル作画にも劣らないレベルとなっている。ファンの間でもサンライズが制作してくれてよかった、ここ以外だと悲惨な事になっていたのではないかと言う意見が大半を占めている。

サンライズが力を入れた作品であるにも関わらず、現在の所、DVDBOXが発売されているだけであり、Blu-ray化はされていない。評価の高い美麗な映像をBlu-rayで観たいというファンの声にも答えて欲しいところではある。

横浜だけ手抜きではないのか?

12都市12少女物語だけあって、各県の有名観光地が舞台となっており、通っている高校の制服や学校名などが一人一人細かな設定がされている。だが、その中の一人、横浜を舞台とした少女「星野明日香」だけは手抜きなのではないかと思う所がある。それは、通っている高校が「清華女子高等学校」であり、制服も緑を基調としたセーラー服であり、育成シミュレーションゲームの名作の一つである「卒業~gradation~」と全てが同じだからである。

他の11人はイチから作られているのになぜ横浜の明日香だけは使いまわしなのかと当時から疑問に思う人も少なくはなかった。「卒業」に関わったスタッフが「センチ」にも関わっていた為にファンサービス的な意味合いもあったのだろうが、設定使い回しでは手抜きと思われても仕方ないだろう。

なお、原作にもアニメにも「卒業」キャラは誰一人出てこず、ファンサービスの意味があったのかどうかは甚だ疑問である。

隠れた名作となってしまった大きな原因はゲームである

原作小説の連載開始、アニメ化と順調に進んでいた本作だが、ある時を境に人気が地に落ちるという事態が起こる。それは、本作を元にプレイステーションで発売された「センチメンタルジャーニー」という人生ゲームのようなボードゲームと、ドリームキャストで発売された原作の続編である「センチメンタルグラフティ2」が原因とされている。

「ジャーニー」の方はアニメとほぼ同時期に発売の予定だったが一年延期し、売り上げは低迷。再起を図ろうと「セングラ2」を発売するも、プロローグで前作主人公を交通事故死させ、12人の少女が前作主人公の葬式で初めて一堂に会し、その後、新たな主人公と恋に落ちるというそれまで「センチ」を愛してくれたファンを完全に裏切る行為を行った為に、ファンは一斉に「センチ」を見捨てたのである。その結果、TVアニメとしては高クオリティで切なさ溢れる素晴らしいシナリオの本作も、話題に上がる事もなくなり、数多のアニメ作品の中に埋もれ、知る人ぞ知る作品となってしまった。

ゲームがファンを裏切る行為を行わなければ、「切ない恋心」というテーマを持ったこの作品は今でも何かしらの媒体で続いていたかもしれない。全てを台無しにしたゲームが無ければ、と悔しい思いをしているファンもいる事だろう。

しかし、アニメ以外の所で大きく足を引っ張られてしまったが、名作であり、いつまでも手元に残しておきたい作品である事に間違いはない。

あなたも感想を書いてみませんか?
レビューンは、作品についての理解を深めることをコンセプトとしたレビューサイトです。
コンテンツをもっと楽しむための考察レビューを書けるレビュアーを大歓迎しています。
会員登録して感想を書く(無料)

関連するタグ

センチメンタルジャーニーを観た人はこんなアニメも観ています

センチメンタルジャーニーが好きな人におすすめのアニメ

ページの先頭へ