注目してほしい、マチコ先生の温かな人柄 - まいっちんぐマチコ先生の感想

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まいっちんぐマチコ先生

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画力
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演出
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注目してほしい、マチコ先生の温かな人柄

4.54.5
画力
5.0
ストーリー
4.0
キャラクター
4.0
設定
4.5
演出
4.0

目次

やはり色々あった表現の自由との戦い

最近の少年誌は、昔に比べると随分漫画の性描写が寛容になったように思う。小学生向けの少年誌でも、特に女体の描写などがかなりきわどく、いかがわしい大人向け雑誌と遜色ないようなものもある。それに比べると、ギャグ絵のまいっちんぐマチコ先生のセクハラ描写が問題になったのが、時代と共に夢のように感じる。

生徒や同僚教師によるマチコ先生へのセクハラ行為の描写について騒がれだしたのは、原作の連載開始からあったわけではなく、アニメ化で世に広く知られるようになってからである。

確かに若い女性教諭の胸に触ったり、スカートをめくったりという行為は、冷静に考えると大変問題だ。それに、この作品を読んでその程度は許容範囲なのだと子供が思ってしまうと困るというのはある。しかし、常識を持った子供なら、これはあくまで漫画だから許されるということは理解できるのでは?という気もする。

マチコ先生は人気を博していた昭和50年代当時、学習研究社の「科学」と「学習」という小学生向け教育雑誌のうち、「学習」の方で連載やイメージキャラクターのような存在だった。

アニメ化によるセクハラ描写が一気に周知されたことで、見る目に厳しい父兄らから学研にも色々抗議があったようだが、学研が著者えびはら氏を手放さなかったのは、セクハラ描写を超えたマチコ先生の人柄など、原作・アニメ双方にある本当にえびはら氏が訴えたかったことの根っこを理解していたからではないだろうか。

確かに女性視点だとセクハラに対してはマチコ先生がかわいそうに思える時もあるが、この作品のテーマはセクハラ容認ではなく、マチコ先生という魅力的女性の人となりであるように感じる。

マチコ先生は人格者

子供の頃の記憶だと、マチコ先生はスカートをめくられては「まいっちんぐ」と言っているイメージが強いが、おそらくアニメの音声や表紙のパンチラにインパクトがあったからだろう。

この作品は古い作品なのにアニメ、実写、舞台など最近まであらゆるメディアで愛され続けている。色々表現のことで問題視されたのにこれだけ愛されるのは、前述マチコ先生の人柄が魅力的だからという部分が大きい。

大人になってこの作品を読むと、お決まりのセクハラはともかく、マチコ先生が自分を困らせるいたずらをする生徒も分け隔てなく接していること、実はそういった生徒への対応に悩んでいたこと、特別な感情がない異性の同僚教師へも思いやりを持って接していることが印象深い。

時に過労で倒れる直前まで生徒に笑顔で挨拶し辛さを見せない姿や、イケメン同僚教師との映画の約束より、三枚目でも足を骨折してしまった同僚教師を放っておけないマチコ先生。そんな人柄は読み手に純粋にこんな先生がいたらいいなと思わせる。

性的ないたずらに悩まされている教師なのに、学研の児童誌にキャラクターが起用されたのは、マチコ先生が小鳥にも挨拶をするような優しい先生だからではないだろうか。えびはら氏はマチコ先生をいたずらの対象のみとして描いていたのではなく、優しい人柄の女性教師という部分の方が描写のウェイトとしては大きいのだ。

セクハラを真に受けてはいけない

この作品のセクハラ描写ばかりに目が行く人は、原作をあまりよく読んでないのではと感じる。

アニメにしてもそうだが、作品の主軸はセクハラではなく、マチコ先生と彼女を慕う生徒や教諭との関わりがメインになっている。いたずら好きのケンタは、クラスメイトの女子ヒロミ達にも、喧嘩した際に裸にして木の枝に逆さにして吊るしてしまうなど恐ろしい行動に出るが、これは実際にこういうことを容認して女性を馬鹿にしているのではなく、この作品の世界観においてはケンカをデフォルメしたものと容易に理解できる。

ケンタたちはいたずらはしても遠足に行けばマチコ先生とお弁当を食べたがる可愛い生徒だし、マチコ先生もそういう時間を大事にしようとする優しい教師なのである。この作品の描写を一方的に有害視する人は、麻衣マチコという一人の女性教諭の温かさをどう評価してるのか非常に謎である。

デッサンの狂わぬ綺麗な作画の理由

マチコ先生を読んでいて、絵心のある人ならまず気づくだろうことは、作画が非常にきれいで、デッサンの狂いが全くない点である。あっさりした画面と安定した描写は、藤子不二雄(当時二名の作家の名称だったため敬称略)や手塚治虫を自然と彷彿とさせる。

著者えびはら氏について調べてみたところ、やはり彼は藤子不二雄のフジコスタジオでアシスタント経験があったようだ。えびはら氏の美しい作画は、フジコスタジオでの長い経験の賜物だったのだ。

マチコ先生へのいたずらは、なんとなくドラえもんでしずかちゃんがのび太に風呂を覗かれるような、実際あったらとんでもない事だが漫画なのでどこか憎めない印象もある。男の子はそういう妄想を多少なりともしてしまうけど、その対象の相手に愛情もあるというメッセージは、藤子不二雄の影響を強く感じる。過激ないたずらがある一方で余りいやらしさがないのも、その安定したギャグ絵によるところが大きい。

単純な絵柄でも、実はデッサンが安定した狂いのない作画を維持することというのはかなり難しい。

そういう意味では、えびはら氏は非常に画力があり、根底に藤子不二雄という日本を代表する作家の元で下積みをされていたという事は注目に値する事実だろう。

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