笑えてちょっと切なくもなる作品
実写化成功
出演している俳優さん、みんないいなと思いました。
山本美月さん演じる「トン子さん」は、あれは銀河鉄道999のメーテルがモデルでいいんですかね?
山本さんてすごい松本零士の女性キャラ顔なんだなって思いました。
目の感じといい、鼻の感じといい、まさに売り二つです。
あと庵野秀行役の安田顕さん、あのガリガリの感じとか、風呂に入ってなさそうな感じとか、ぽさが出ていました。
この作品は原作のマンガは読んでいないのですが、庵野秀行さんの奥さんの、安野モヨコさんのマンガは読んでいて、そこに出てくる若い庵野さんのイメージにぴったりでした。
福田監督って漫画原作の映画やドラマを結構撮っていますけど、すごいぴったりの人を挙げてきますよね。
映画「銀魂」の志村新八役の菅田将暉さんもそうなんですけど、普段やりがちな配役ではないのに、ぴったりハマる人を見つけてくるというか。漫画原作を実写化すると、大体残念なことになるのですが、福田監督はなるべく原作に忠実にする努力をしている印象です。
また、「福田組」と呼ばれる、福田監督作品の常連さんにも笑わせてもらいました。ムロツヨシさんは相変わらず安定したギャグセンスでしたし、佐藤二郎さん演じる「集英社週刊少年ジャンプの編集者」は「なんだこれ」と言う感じで、見る度に笑ってしまいました。
ジャンプの編集さんは超アウトローな感じなんですね(笑)。
最終回では、「勇者ヨシヒコ」でお馴染みの山田孝之さんも、「お好み焼きの食べ方が異様に汚ないトン子さんの彼氏」として友情出演しており、福田監督ファンには嬉しい作品となっています。
アーカイブ的な楽しみ方もできる作品
このドラマには、多くの漫画作品、漫画家の名前が実名で登場します。この時代の若者に、どのような影響を与えたのか、愛をもって語られています。
わたしはこの世代ではないので、名前しか知らない作品も多く登場しましたが、知らない立場から見ても面白く受けとることができました。
見ていて当時はジャンプよりサンデーだったんだな、とすごく感じました。今も連載されていますが、高橋留美子先生や、あだち充先生の当時の人気はカリスマ的だったのか…と思いました。
そしてそれを語るモユルが、好きなことをとにかく語りたいという、昔のオタクで、いいなと思いました。創世記のオタクだと思います。
面白いなと思ったのが、あだち充先生の野球漫画にあまり野球のシーンが無いことで、モユルが「あだち充は野球の描き方を知らない!!頑張れあだち充!!」と上から目線でエールを送るシーンがあって、すごい笑っちゃいました。怒られないのかな。
熱い所もある作品
十代の頃って、何であんなに自信満々だったんだろう…主人公のホノオモユルを観ていると、同じように無鉄砲だった若い頃の自分を思い出さずにはいられません。
モユルの根拠もなく自信満々で、「俺は絶対に何者かになる」と信じて疑わない姿は、バカだけど若いエネルギーに溢れていて好感が持てました。
同時に、同級生の庵野秀行の圧倒的な才能を見せつけられ、自信を失って落ち込む様も、青春という感じです。
ホノオくは漫画家志望で、周りの学生も皆芸術家志望。
そんな環境にいれば、嫌が応にも「才能」の二文字を考えずにはいられなくなってきます。
そして、物語の主人公を天才にするのではなく、天才に嫉妬する凡人を据えたところが面白いと思いました。
多分モユルの年齢くらいに、人は自分の才能の限界に気付き、夢を諦めたりするのだと思います。自分が何者か分かるというか。
特にそれを表現しているのは、学科の映像の発表会です。
皆が発表していく中、庵野のチームはパラパラ漫画を応用したアニメーションを発表します。
皆がそれを爆笑しながら観ている中、モユルは一人、心の中で叫びます。
「おいお前ら、悔しくないのか?どうして笑って観ていられるんだ」と。
このモユルの、庵野の才能に対して焦る気持ちや、ひりつくような悔しさは、自分の経験とも重なってすごく伝わってきました。
さらにこの後、最後の大オチで皆が爆笑するのですが、その事に庵野が「違う!ここは笑うところじゃない!悲しいシーンなんだ!」と怒鳴ります。
それが庵野と周囲との感覚の違い、才能の差をよく現していると思いました。
この後すっかり自分の才能に絶望したモユルが、運転免許を取る方向にシフトチェンジするのも、ダメなヤツな感じが出ていていいですよね。
それで結免許は取れなくて、仲の良かった女の子にも去られ、結局またマンガに戻ってくる、というのも、熱いものがあると思いました。
そして、最後にジャンプに読み切りの乗ったモユルに、庵野が「サイン、してくれよ」と言うところも感動的です。
あれほど何者かになりたかったモユルが、庵野に嫉妬してやまなかったモユルが、サインを求められても全然調子に乗らない。
モユルがちょっと大人になってしまったようで、いい最終回だと思いました。
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