ただのロボットの殴り合いではない。 - リアル・スティールの感想

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ただのロボットの殴り合いではない。

5.05.0
映像
5.0
脚本
5.0
キャスト
4.5
音楽
5.0
演出
5.0

目次

親子の絆

離婚をして息子と離れて暮らしていたが、元妻の病死をきっかけに息子と再会し、初めは仲が良いわけではなかった二人であったが、ロボットボクシングを通じて親子の絆を深めていく。

いまの時代となっては離婚はよくある話だが、離れて生活をしていた親子が、共通の趣味を持ち、その趣味に反発し合いながらも熱中し、お互いをパートナーと呼び合う様子はとても希望を感じられた。初めは息子と距離を取ろうとしていた父親が、物語の後半には、自らの子どもを手放したという過去の行動を反省し、息子に歩み寄ろうとする姿に、私は素直に感動した。徐々にお互いを認め、親も子も成長していく親子の絆の物語であるが、男同士の友情物語でもあると言えるだろう。

迫力のあるロボットボクシング

人間同士で戦いをするのではなく、人間がロボットを操作し、ロボット同士で戦わせる近未来型SFボクシング。

まず注目したいのが人間の身長を遥かに超えた大きさのロボット同士の戦いシーンである。リアリティのある効果音と、細部までこだわったアクションによってSFということを忘れ、実際にロボットボクシングを見ているかのように、映画の世界観に引き込まれる。また、カメラワークのおかげで、ロボット同士の殴り合いは大迫力だ。

ゴミ捨て場から見つかったスパーリング用ロボットの「アトム」は、息子の手により、元からついていた模倣機能の他に、音声反応機能が取り付けられ、小柄ながらも様々な試合に出場に勝利を収めた。そしてだんだんと名を轟かせて言った「アトム」は、有名な絶対王者と言われている「ゼウス」と対戦することになったのだが、その試合が一番の見どころで、絶対王者と言われる「ゼウス」の激しいパンチや、攻撃をされて何度も殴られる「アトム」の壊れる様子がリアルに映されている手に汗握る一戦であった。なんと言っても、「アトム」の模倣機能による、「ゼウス」への反撃が実に爽快で、映画内の観客だけでなく、映画を見ている誰もが興奮できるシーンで、何度でも見たくなった。

「アトム」が、息子の声に対し、まるで人間かのように反応するシーンがいくつかあるのだが、そこには操作する側の人間と、操作される側のロボットとの新しい、人間と物体以上の関係が見えてくる。

将来、どでかいロボット達の繰り出すパンチをテレビなどで見る日が来るのではないだろうかと考える。そのような未来はそう遠くないのではないだろか。そうだと仮定した時、ロボットによる事故がない場合は、ロボットボクシングを現実、実際に見てみたいと思う。ロボットに興味のない私でもそのような感心を抱けるきっかけとなった。自分の世界観、価値観を広げられることが出来た。

ボクシングへの愛

若かりし頃、主人公はボクシングの選手であり、世界的有名な選手との試合では、持ち前の粘り強さで世界を驚かせた。

しかし、時代がロボットボクシングに変わり、自分自身がボクシングをすることが無くなり、借金まみれになりながらロボットボクシングを行う主人公だったが、息子が発見したスパーリング用のロボット「アトム」に、息子からの頼みで、自分のボクシングの技を覚えさせる。

終盤では「アトム」の模倣機能を使い、自らの体でロボットを操作し、相手を翻弄させた。

主人公は、「世の中が、人間同士の殴り合いでは満足しなくなった。世の中の人々が、もっと激しい暴力を求め、ロボットに殴り合いをさせた」というような台詞を言っているのだが、表情や声のトーンから、呆れや悲しみが伝わってきた。私はその台詞を聞いて、彼から、自分のするボクシングは必要としていないと世の中が判断したのだという諦めの感情をを感じた。しかし、模倣機能のあるロボットを使っての大勝負の時、彼は現役時代の頃のように、勝てないと言われていた試合でも、最後まで粘り、食らいついた。その姿を見て、涙したのは、映画の中の息子や恩師の娘だけではないだろう。

恩師の娘との関係

主人公がボクシング選手であった頃の師匠には娘がいる。引退した後も、ロボットボクシングのために無茶をする主人公を何かと支えている女性である。

一度主人公が息子を義理の姉に引き渡した後、主人公が息子との時間を埋め、親子の絆を取り戻そうとするときに背中を押した人物である。

親子の大勝負であるロボットボクシングの会場に現れ、真剣に声をあげ、最後まで彼を信じ支えている。

私は、この女性と主人公との関係に興味を持った。なぜなら、二人はストーリー前半では親友、または家族同然の関係のように接しているにも関わらず、主人公が息子のことで悩み苦しんでいる時に、わざわざ何時間も運転し、彼女に会いに行き、キスを交わしたからだ。この二人は、確かにお互いに愛を感じている様子なのだが、恋人だということも、恋人になったということも明言はされていない。言わなくてもわかるといい大人の関係なのだろうかと推測される。

この女性の存在により、リアルスティールは親子の絆の物語だけではなく、恋愛要素が含まれていることになり、男臭くない、大人も夢中になれる物語となっている。

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