大学生の恋愛を、中学生がしてみたら・・・・? - きまぐれオレンジ☆ロードの感想

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きまぐれオレンジ☆ロード

3.503.50
画力
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ストーリー
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キャラクター
4.00
設定
3.00
演出
3.50
感想数
1
読んだ人
4

大学生の恋愛を、中学生がしてみたら・・・・?

3.53.5
画力
4.5
ストーリー
3.0
キャラクター
4.0
設定
3.0
演出
3.5

目次

今でも古臭さを感じない斬新な作画

連載初期と後期では随分作風が変わった作品であるが、この作品のポップな作画は、平成の今でも古臭さを全く感じない魅力がある。

きまぐれオレンジ☆ロードは、連載当時の1984年頃リアルタイムでジャンプを読んでいた読者層には非常に評価が高い漫画である。正直ストーリーにはツッコミどころがありまくりなのに高評価である理由に、当時のジャンプの読者層である小中学生男子から見ると、背伸びをした大人の恋愛をするオシャレさのようなものがにじみ出ていたからではないだろうか。

特に、ミステリアスな鮎川まどかの魅力は、最近の作品の人気女性キャラにも勝るとも劣らない大人びた魅力がある。それに、当時としては、友情や格闘、スポ根を重視していた週刊少年ジャンプらしくない漫画であったことも目新しかった。女性キャラクターに関しては、時代を先取りしていたとも言える。

やや蛇足感があるエスパー設定

きまぐれ☆オレンジロードというと、まどかとひかるちゃんの間でどうも煮え切らない態度をとる恭介の、男性から見たら羨ましい両天秤(両手に花?)の青春というストーリーが真っ先に思い浮かぶ。

しかし、意外に恭介が超能力者である設定を忘れてしまっている人も多いのではないであろうか。そもそも恭介が転居してきた理由が超能力のせいで奇異な目で見られることを避けたためだったのだが、その後もたまに能力を使うことがあるものの、はっきりいって蛇足感が否めない設定である。

近年の超能力恋愛ものに、少女漫画ではあるが超立!!桃の木高校という、アルコさんの作品がある。雑誌は違うが同じ集英社の作品であるが、この作品では超能力がきっかけで仲良しグループになった男女の間に恋愛感情が生じ、奇異に見られがちな能力を認め合ったり、お互いがかばい合うことで、恋愛にうまく超能力設定が生かされている。

しかし、オレンジ☆ロードでは、恭介がエスパーである必要性が全くなく、タイムリープなどのエピソードもあるものの、一番問題なのは恭介がひかるとまどか、どちらかなかなか決められない事ではないだろうか?超能力設定のみが唯一週刊少年ジャンプらしいと言えるが、どうせなら能力をふんだんに使うか、全く普通の少年にしてしまうか、どちらかの方が良かったのではという中途半端感が否めない。

漫画の規制の時代背景を感じる

最近は、未成年の漫画雑誌でも、性的描写についてはかなり昔より寛容になったように思う。一方で、飲酒や無免許運転と言った犯罪や、行うと社会制裁が大きい行動については、昔より今の方がずっと規制が厳しいように思う。

鮎川まどかは不良、という設定であるが、古くからある女ヤンキー漫画のロンタイベイビーや、ビーバップハイスクールなどに出てくる女生徒の不良に比べると、まどかは見た目はまったく怖くないし、ちょっとけんかっ早くてバイトをしていてタバコを吸う、素行は大人っぽいがいわゆる窃盗をしたり恐喝や暴走行為をするような不良とは少し違うようだ。

オシャレな恋を書くにあたり、バイトやディスコに行くこと、飲酒、タバコなど、ちょっと大人の恋愛を描こうとする為に、背伸びをさせるために不良設定にせざるを得なかったのかもしれない。

平成の今でも、中学生をバイトに雇ってくれる店などほとんどないし、飲酒やたばこなどはやんちゃというより犯罪の領域で、カッコいいで済む問題ではなくなってきている。

この物語は、正直大学生同士の恋愛として書くのなら、タバコも飲酒もバイトも、まどかが年齢不相応に色気があることも何も問題がなかったように思うのだが、読者の共感が欲しいために年齢設定を下げたのかもしれない。

しかし、いくら大人びてはいても、3年ほど前にはランドセルをしょっていた子が、ディスコなどに行き慣れているような様子は、今観てもやや違和感がある。この作品は、もし今リメイクするなら、大学生という年齢設定で作ったらかなり面白く作れるのではないかと思う。

無駄な超能力設定も失くして、スマホなどの文明の利器を使用し、恭介がLINEで誤爆をする話などを盛り込んだら、一気に共感は得られそうである。

なぜにこんなに優柔不断?

恭介なりに、女同士の友情への配慮など思うところはあったのかもしれないが、全編を通し恭介はどう考えてもひかるよりまどかの方を気に入っているようである。なのになぜ、ひかるに誤解を招くような、気があるような態度をとるのだろうか。女性読者としては、やや不誠実さにイラッとくる人もあるだろう。そもそもあまりこれと言ってパンチがなく、不細工ではないけど取り立ててイケメンでもない恭介が、持てていることも解せず(強いて言うなら優しい所もあるという事だろうか)主人公特権というやつでモテているとしか言いようがない作品なのだ。読み返してみると、無駄な超能力と無駄な優柔不断のせいで、この物語は読者に何が言いたかったんだろう、いい加減な態度をとることで二人の女の子を手玉にとれる幸せがテーマなのか?と疑問も感じる。

深く考えずに読む分には面白いかもしれないが、当時の読者が40代、50代になった今読むと、絵柄が新しく瑞々しいのに、内容がこんなだったかな?とストーリーの印象のが若いころとは変わってしまう可能性が多い作品と言える。

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