好みが分かれそうなPV的作品
ハードラックヒーローに続き、V6ありきの作品
2003年に公開されたハードラックヒーローに続き、SABU監督とV6がタッグを組んだ第二作目である。ホールドアップダウンもハードラックヒーロー同様、V6のメンバー6人が二人ずつのタッグになって、最初は何の縁もなかった3組のペアが、数々のハプニングから関わりを持って物語が進んでいく展開になっており、カミセン3人とトニセンの井ノ原氏のみが、前作と異なるペア設定になっている。
この作品は2005年に公開されたが、ハードラックヒーロー同様全国での全館上映にはならず、大半のV6のファンはDVDを購入して視聴しないと観られない作品であった。
同じV6の出演作品でも、cosmic rescueは、そのスケールの大きさと、出演していたメンバーの個性ありきでの作品ではなかったため、全館上映しても良い出来栄えだったと感じるが、この作品についてはメンバーの個性ありきのため、どうしてもこの作品に惹きつけられる層が限られてしまうという点はあったろうかと思う。尺も97分と短く、アクションコメディとしても万人受けするタイプの作品ではないマニアックな仕掛けも多いため、知る人ぞ知る作品となっている。
ほとんど出ていない岡田准一氏の存在感
ほとんど出ていない、というのは語弊があるかもしれない。岡田氏が自ら演じているのが、物語の最初と最後だけで、冷凍車でうっかり氷漬けになってからは、岡田氏の人形が出演しており、物語の大半を岡田氏の演じる沢村光一は人形が役割を担っている。
これには岡田氏のファンの賛否がありそうであるが、この作品に限っては一番この人形が目立っているというのも皮肉な話である。それこそ物語の鍵である大金が入ったロッカーのキーを沢村が飲み込んでしまい、それを追う話なのだから、人形でも差し支えはなかったのかもしれないが。
岡田氏はちょうど、2005年は、テレビドラマ大化の改新、冬の運動会、タイガー&ドラゴンをかかえ、映画も東京タワー、フライ,ダディ,フライが発表された年だったので、多忙で人形になってしまったのかという感も否めない。せめてもの救いは、挿入歌のソロを岡田氏が担当している事だろうか。
挿入歌のユメニアイニは、人形ばかりだった岡田氏の出演方法に対する、ファンへのサービスだったようにも思う。
香椎由宇氏の演技が印象的
この作品に限ったことではないが、香椎由宇氏は、コミカルな演技も真剣な演技も非常にうまい。特筆すべきは彼女は見た目が非常に清潔感があり真面目な印象であるが、それを生かした、真正面からじっと相手を見つめて目で威圧したり、きょとんとした表情で相手を観察するような演技が非常に魅力的なのだ。この作品でも井ノ原・三宅組の強盗シーンで生かされているが、後に2006年に放送されたTVドラマ、マイボス☆マイヒーロー南百合子役でも、射るような目で正面から見つめるシーンは、やくざ役の真喜男(長瀬智也氏)に、「鉄仮面」と呼ばせるのに非常に説得力があった。
香椎由宇氏は1987年生まれであるので、ホールドアップダウンやマイボス☆マイヒーローを撮影した際はまだ未成年であったはずなのだが、とても大人びた表情が魅力的で、V6のメンバーとあまり年の差を感じない点が素晴らしい。
あまり意味がない名前
この作品は、一応登場人物にフルネームで名前が付けられているが、作中に名前で呼ばれるシーンがほとんどないため、DVDのパッケージなどで登場人物のフルネームを知ってもどうもピンとこず、名前と顔がなかなか一致しない。正直、坂本氏と長野氏の役は、刑事A・Bでも良かったし、井ノ原氏と三宅氏は泥棒A、泥棒Bでもよかったし、森田氏は、ドライバー、岡田氏はストリートミュージシャンという役で良かったような気もする。こうもキャラとキャラの名前がなじまない作品も珍しいというか、名前がついていたのか?という感じだ。細かい個人設定より、刑事や泥棒といった立場上の追いかけっこを楽しむ作品のせいか、刑事の木場正巳役の坂本さん、と言われてもどうもピンとこない。辛うじて泥棒二名は名前が判明するシーンがある物の、ストーリー上あまり必要のない情報であり、いまいち役名を示されても誰のことか記憶に残らないのは不思議な感じがする。
見ていて辛いシーンも
この作品は基本、アクション系のエンターテインメント作品なので、ブラックジョークのようなものもあるし、これはこれで架空の作品としては成り立っているのかもしれない。
しかし、坂本氏が警察官なのに意味もなく上司を銃殺してしまったり、洋館のシーンで「皆死んじゃえー!」と、いわゆるメンバー同士が殺し合いをするようなシーンは、笑えないファンも多いのではなかったか。しかもあのシーンは他作品のオマージュ的シーンらしいが、わからない人に全くわからないであろう。ちなみに私は全く良さがわからなかった。
森田剛氏などはドラマや映画でDV彼氏や殺人鬼の役などもやっており、必ずしも悪役がいけないというわけではないのだが、この作品はメンバーPV的な作品であるので、もう少しハートウォーミングな笑いに徹してもらった方が良かったようにも思う。終わり方自体はハッピーエンドだが、坂本氏が上官を殺害してしまった件がうやむやになってしまっている点は後味が悪かった。
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