後生の因縁。 - サークルゲームの感想

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サークルゲーム

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後生の因縁。

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画力
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ストーリー
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キャラクター
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設定
5.0
演出
5.0

目次

聖千秋先生の新境地。

聖千秋先生、大好きな漫画家さんです。中学校の頃から現在(48歳)に至るまで、その作品の殆どを読んできました。大好きな作品は多々あれど、このサークルゲームはその中でもお気に入り一、二を争う作品です。この漫画が連載中、月刊雑誌だったのですが、翌月の発売日が楽しみで楽しみで待ち切れなかったのを今でも鮮明に思い出す事ができます。それまでも聖先生の作品には時々、不思議なお話がありますが、それまでは短編でした。このお話はその中でも群を抜いて不思議なお話というだけでなく、コミックにして5巻完結という長編という事もあり、それまでと一風変わったこの作品は聖先生の新境地だと当時から感じていました。大きな転機というか、この作品を境に確かに、聖先生の作品はどこをどう?とは言えませんが、大きく変化したと思います。それとこの漫画で聖先生作品初だったのは、金髪の外国人が出てくるという事です。父親が外交官で赴任してきたので、外国が舞台ではなく、日本が舞台で、他のメインの登場人物はみんな日本人。聖先生はブラッドが外人である事、金髪である事をふまえ、他の登場人物は殆どみんな黒髪にしたと読み、徹底したこだわりを感じました。その聖先生の目論見は見事にメインではたった一人の外国人をしっかり漫画の中で感じる事ができていました。

この世の中で不思議な事。

この物語は「後生の因縁」という事が大きな軸になっています。主人公の石橋いづみと栢野リカの二人は、同じ人間の生まれ変わりであるというものです。その人物は玉環という古代中国の皇帝を受けた宮廷の権力者であるにも関わらず、中国に訪れてきた異国人を好きになりますが、その思いは成就する事はありませんでした。ところが、異国人に裏切られた皇帝は玉環をスパイとみなし、頭から剣で真っ二つに引き裂いて殺します。その時に心が二つに分かれ、その後、その二つの心は二人の人間にそれぞれ宿り転生を繰り返す・・・というものです。本当にあったお話なのかは分かりませんが、この「後生の因縁」の語源がここから来たのだと言われたら、妙に納得できてしまいます。この漫画を読んで、世の中で起こる不思議な事というのはこういった目に見えない過去からの因縁に起因してる事も実際あるのではないか?と思いましたから。例えば、出先に不吉な事が起きて出かけるのをやめようかな…と思ったりとかするとか、運命に翻弄されるかのように人生が運んでしまうとか、人のせいでも、誰のせいでもないのに、事が違う方向に捻じれて進んでいってしまうとか、そういった事です。人のせい、運命のせいにするのか?と言われても不可抗力の場合もあります。この漫画の主人公もさんざん、そういった運命に翻弄されていきます。

でも、この漫画から感じる本当のメッセージは・・・。

自分の人生は自分で切り開くという事なのだと思います。この言葉はこの物語のキーマンとなる、玉環が思いを寄せたべっこう色の髪のゾクド系異人の生まれ変わりの役まわりに描かれている、前出の金髪の外国人ブラッドです。彼の言葉で、いづみは運命に翻弄される人生に逆らって立ち向かい、そこからどんどん運が開けていくのです。玉環は、いづみかリカのどちらかに、名声や権力を捨てても好きな人に思いを告げたい、添い遂げたいという思いを受け取って欲しかったという結末だったのですが、いづみがその思いを、リカが名声を受け継ぎます。でも、リカは名声を選びつつも、心の奥底でブラッドの事はずっとある・・・という最後も凄く上手く描かれていて、物語全体的に本当によくできているな・・・と感銘し、また読後凄く良い気分になり、自分の人生においても色々と考えさせられる作品でした。

外国人から見た日本人。

最後にこのブラッドも自分の意志と反していづみに酷い言葉を言ってしまう場面があるのですが、意志とは反しているものの、本心で、ずっとそう思っていたのかもしれないと告白する部分。ここは重かったです。”1人じゃ何もできないくせに、徒党組めば強気になる””他人のすることに集団で騒ぎ立てる”「程度が低いんだよ、おまえらニホンジンは!」というくだりです。これは読んでてかなり応えました・・・。勿論、一概に国民性・・・とは言えないと思います。どこの国でもそういう人はいます。一人じゃ何もできないくせに、多勢になると態度が大きくなる人です。でも、日本は特にそうかもしれない・・・と、イギリスに長く住んでいて、子育てもしましたから、感じる部分はあります。日本は特に個人主義ではない教育を受けてきたように思いますし、また、確かに他人の事がこれほど気になる国民性を持っているのは、日本が顕著だと思います。こうして漫画から、ああ・・・と客観的に自分を見る機会を学ぶ機会があり、またそれが抹香くさく感じず、素直に色々受け入れられる。こうした作品に出合える事は人生の喜びにも繋がりました。

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