絡み合い深まるドリフターズの謎 - ドリフターズの感想

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ドリフターズ

4.634.63
画力
4.25
ストーリー
4.25
キャラクター
4.63
設定
4.75
演出
4.63
感想数
4
読んだ人
12

絡み合い深まるドリフターズの謎

5.05.0
画力
4.0
ストーリー
3.5
キャラクター
4.5
設定
5.0
演出
5.0

目次

漂流者(ドリフターズ)か、それとも廃棄物(エンズ)か

読者の中で作品以上に期待と推察が飛び交う話題の1つが『次に登場する偉人は漂流者(ドリフターズ)か、それとも廃棄物(エンズ)か?』というものです。
作品の性質上、漂流者or廃棄物かを推察出来るエピソードが一切なく、そして登場する偉人が漂流者or廃棄物になる可能性を(偉人の歴史を辿っていくと)どちらも含んでいるように思われるからです。
『うつけ』と呼ばれた『織田信長』は『国を奪る』漂流者となり、『聖女』と呼ばれた『ジャンヌダルク』は『国を燃やす』廃棄物となりました。
その『違い』がどこにあるのか?
その本当の理由がどこにあるのかは原作者である平野耕太先生の頭の中でしか明らかになる事はないでしょうが、作品全体を俯瞰で見下ろす事で、漂流者として成り得た理由、そして廃棄物となった理由を想像する事が出来ます。
(それが正解であるかどうかは、今後描かれるストーリーで判明するのか、それとも読者に委ねられたままなのかはまだ分かりませんが)
どちらの陣営においても共通しているであろう感情(分かれ目となった理由)は『憎しみ』にあると私は予想します。
(ただ1人、島津豊久を除いて)

二つの国

ドリフターズ本編の中心とも言えるオルテを巡り、漂流者と廃棄物との間で戦争が勃発します。
ですが、この戦争の最中で『もう一つの国』が廃棄物の長である『黒王』の手によって作られていきます。
本来は学も知恵も持たないはずのコボルトやゴブリンといった種族が、廃棄物達の手によって知恵を得て、文字を理解し、そして1つの巨大な組織となっていきます。
文明を得る事によって化物達が人と同等の役割を持ち、やがてそれは『国』と呼べる集合体へと変化していきます。
『国取り合戦』として読んでいたはずの物語が、いつしか『2国間の戦争』という強大なスケールの物語へとスライドしていくのが分かります。
この2つの国が漂流者と廃棄物の手によってどのような発展、あるいは衰退へと向かっていくのか。
偉人同士の戦いの影に隠れがちの物語ですが、注目していきたい部分の1つです。

十月機関(オクト)とは何なのか

物語を読み進めるにつれて、まず読者の多くが初期の頃から疑問に思う組織の1つだと思います。
漂流者に協力し『安倍晴明』を『大師匠』と呼ぶ、第3の勢力と呼ぶにふさわしい集団です。
漂流者と廃棄物の仕組みを熟知し、そしてオルテを中心とした世界の中では異端とも呼べる魔術を使いこなす事が出来ます。
彼らは自分達の事を『魔導士の集団』だとと名乗っています。
ですが、その力は安倍晴明によって確立され、見出された集団にも思われます。
(事実、安倍晴明は己の事を『廃棄物を滅ぼす使命を受けた』と発言しています)
そんな強大な力を持つ者がいれば、オルテを統治する事など簡単な事なのではないか?
そう考えられる読者の方も多くいると思います。
ですが実際の十月機関の力は個々では強大な力に太刀打ちする事が出来ず、『漂流者の力』が関わる事によってはじめて真の力を発揮する事が出来るのだと知ります。
彼らの力が漂流者と味方であり続けるのか、それとも漂流者の目指す先によっては敵となる可能性があるのか。
物語の影を支える彼らの動きからも、目を離す事が出来ません。

近代兵器が召喚された理由は?

ドリフターズの読者の中には、この点について違和感を感じた方も多いと思います。
『何故、第二次世界大戦の近代兵器(の所有者)が召喚されたのか』
ブッチやキッドといった織田信長の鉄砲と関わりを持つ事の出来る銃火器の名手である2人が召喚された理由は推察する事が出来ます。
ですが、『戦艦飛竜』と共に召喚された『山口多聞』や、『紫電改』と共に召喚された『菅野直』の立場が、(コミックスの5巻現在では)余りにも文明がかけ離れ過ぎている事に少し違和感を感じます。
紫電改はドラゴンとの戦闘でその威力を発揮しましたが、弓が戦の主力となっている(後に火薬も作られますが)世界では、その性能が有力かどうなのかを判断する事が難しいようにも感じられます。
特に飛竜は動く事もままならないため、現状では紫電改の補給船と成り得るのかも怪しい所があります。
ですが、山口多聞と菅野直が出会う事で、2つの点は1本の線へと繋がりました。
今後、紫電改でなければ戦う事の出来ない戦局が訪れるのか、そして座礁したままの飛竜は今後どうなるのか。
オルテに大きく関わる島津豊久とは離れた、異なる物語から目を離す事が出来ません。

源義経はどちら側につくのか

オルテへとたどり着き、黒王からすらも「お前は好きにせよ」と言い放たれた源義経。
自身も「面白そうな方につく」と言い放つ姿勢は、漂流者と廃棄物とで成り立つ世界ではまさに異端としか言いようがありません。
そもそも、漂流者(または廃棄物)であるという概念は、本人の意思によって決める事が出来るのか(本人が望む世界によってどちらにつくかが自動的に決められるのか)すら(読者には)分からない世界のため、まるでジョーカーのような彼の立ち振る舞いは、読者にとって恐怖と不安の対象になるとも言えます。
彼の力がどこまでのものなのか、そして彼が『面白そう』だと決める陣営はあるのか。
あるいは、新たな勢力となって漂流者or廃棄物の前に現れるのか。
平野先生だからこそ描き出せる、畏怖の象徴であると感じる事が出来ます。

そもそも『2人』は何者なのか

ドリフターズを推察する上で最も厄介(困難)とも言える存在が、漂流者と廃棄物をオルテへと招いた『紫』と『EASY』の存在です。
彼らについては全くと言っていいほどストーリーにも情報がなく、読者はストーリーの中から彼らの断片的なやり取りを繋ぎ合わせて想像をする事しか出来ません。
少ない情報の中で分かっている事は、『紫とEASYは対立をしている』『2人は歴史上の人物をオルテへと送り込む事が出来る』『オルテで起こる情報は独自の媒体(紫は新聞、EASYはパソコン)を介して知る事が出来る』という程度ぐらいです。
その立ち位置はまるで平野先生自信が作品の中に入ってしまったかのような、戦乱の巻き起こる世界を天から見下ろしているようにも思えます。
お互いがお互いを憎しみ、漂流者と廃棄物をコマのように扱う姿は(紫が白を基調とした回廊なのに対し、EASYが黒を基調とした回廊を支配しているため)まるでチェスの対局を見ているかのような印象も感じられます。
彼らが何者であるのかが判明していくのか、そしてどちらが勝利を得るのか。
物語に隠された彼らの正体は、まだまだ謎に包まれたままのような気がします。

今後、登場する偉人は誰なのか?

ドリフターズの読者であれば誰もが期待をするであろう要素の1つが『次に送り込まれる偉人は誰なのか』という部分だと思います。
コミックスを購入されている方であれば既にご存知の事でしょうが、カバーをめくったコミックスの裏に(没になったのだろう)偉人の候補がオマケで描かれています。
「あの偉人は出ないのか!」と、オマケを見ると残念に思う反面、「なら、ここに描かれていないあの偉人が今後出て来る可能性はあるのか?」と期待に胸を躍らせる方も多いと思います。
既に『黒王』の存在が世界的にも有名な『あの人物』ではないかと噂されているため、宗教的や歴史的に取り扱う事が難しい(倫理観的に糾弾されかねない可能性があるため)人物も出て来るのではないのか…?と、読者が心配してしまうような人物を送り込んで来てくれるのも、平野先生だからこそ出来る期待感の1つだと思います。
常にクライマックスであるかのような劇的な展開を見せるドリフターズですが、連載が続いて行く限り新しい偉人が参入する事を読者として心待ちにしています。

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ゲンジバンザイ!!

現実にいた歴史上の人物が異世界で国盗り合戦。「漂流者」や「廃棄物」と呼ばれる、紫やEASYに呼び寄せられ、時代にかかわらず名を馳せた歴史上の英雄たちが異世界に召喚されていく設定はおもしろいですよね。異世界へ召喚される作品はごまんとありますが、これは他の作品と違います。最初に思ったのは紫は何を基準に「漂流者」を選別したかなんですよね。EASYは「廃棄物」に選んだ人たちを調べたらわかる気もしましたが、「漂流者」は生死不明、または存在したかどうかも不明な人物が多い。それが基準なのかもしれませんが、そこに何か伏線があるような気がします。「漂流者」。主人公を島津っていえば義弘がよく出てくるのに、ここに豊久を持ってくるっていう平野先生のアイディアがすごい。歴史好きの人じゃないと知らない人物だと思いますし、私もこの漫画で初めて知りました。豊久は自分を「功名餓鬼」と自嘲しながら、自分でも気づかないうちに王の器...この感想を読む

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