バンド魂と下心のミックスがお上手
榛名優の魅力
少年誌マガジンでまだ連載が続いているこの物語。いい加減にそろそろ最終局面かな…?というところではあるが、バンドに真剣に取り組む姿・色恋だけじゃないところが爽やかで、魅力的な作品だ。
主人公である榛名優は、ツイッターばっかりやってる非リア充として、日陰でコソコソっと、目立たずうるさすぎず生きていこうとしているような男だった。それが、風夏との出会いによってぶっ壊れて、どんどんペースにのまれて…恋とやりたいことがいっぺんに始まってしまったのだった。優という名前らしく、彼は本当に優しくて、ヘタレだけど彼なりに一生懸命気を遣って行動するんだよね。だけど、「ま、俺には関係ない」と言ってたいていの面倒ごとは避けてしまう根暗野郎であったことは間違いない。全部、風夏のおかげで回り出した世界で、彼はその世界の中をただひたすら走っていく。
ヘタレだけど、大事なときにはヘタレじゃないし、始まったことから手を抜いたりなんかしないのは、彼の才能でもあると思う。自分にはできないってわかっているからこそ、純粋に、貪欲に努力ができる。風夏と出会って動き出した彼の時間は、彼女がいなくても進み続けていて、前を向く彼はやっぱりイケメン。照れながらも嘘をつかないところ、歌ってる姿はかっこいい。
風夏、碧井、たまちゃんこと小雪、沙羅などなど…とにかく優はモテる…!普段のヘタレとバンドやっているときの姿のギャップがたまらんよね。歌がうまいとか、楽器ができるっていうステータスって、若干イケてない人もイケメンにみせてくれるから不思議。そして優には本当に下心が少ない…からすごく心配。
まさかのヒロイン死亡
さすがにこの展開には大地が揺れるレベルだったと思う。まさか本当に序盤の段階でヒロインの風夏が死ぬなんて…!天才が引っ張る無名のバンド。それがどこまで駆け上がっていくかっていう物語になると思っていたのに、トラックに轢かれてまさかの事故死。この展開には、前代未聞すぎるってことでだいぶファンがざわついたらしい。
それでも、もはや連載は18巻を過ぎて、まだ続いている。それくらい、彼らのバンドの行く末を見守りたいって人が多いんだと思う。かく言う私もそうだ。この漫画は、天才が引っ張るバンドじゃなくて、みんなが努力して、つかみ取っていくバンドの漫画。絶対伝説になるはずだったバンド。道しるべは風夏であることに変わりなくて、だから、伝説を本当にするために、みんなが走ってる。…こういう物語もアリなんだなーって思った。悲しいだけじゃなくて、乗り越えるところまでちゃんとみせてくれるマンガっていっぱいあるけれど、誰かの死で散り散りになったメンバーが、もう一度再結成して、そこからも紆余曲折があって。音楽には才能が必要だろうけど、それだけじゃない。気持ちも、努力も、仲間も。全部噛み合ってないと作れないのがバンドなんだ…!という気持ちが、青春だなーすげーなーって思わせてくれる。その点で,他の作品とはまた違った雰囲気だ。「ONE PIECE」でエースが死んじゃったことも激震だったけど,完璧なる主人公格が死んじゃうのは本当にありえない衝撃だった。
一番すごいのは、那智先輩が卒業したのをきっかけに、真琴・沙羅・優の3人も高校を中退してしまったこと。それくらい、熱くなれて、後先考えてなくても食らいつけるのって、すごいことだと思うんだ。真似したいって思っちゃうわけでもないけどさ、それくらいの意気込みを持って取り組めることは、絶対一生大事にしたほうがいいし、誰かに何かしらの影響を与えることだよね。
報われないたまちゃん
優の恋物語も重要な要素になっているこの漫画。たまちゃん(小雪)は最初から当て馬で、絶対に報われないポジションにいて…読んでるほうが若干辛かった。だって優の心は絶対風夏のものだから。風夏が死んじゃったら、それこそたまちゃんに勝ち目はゼロ。絶対勝てないまま,たまちゃんが宙ぶらりんになっちゃったことは,素直に悲しいことだった。そして歌手を引退…
かと思いきや,華麗にバンドの中へ飛び込むたまちゃん…!やっぱりこの女,ガッツがある…!かわいいだけの女じゃない。歌がうまいだけじゃない。どんな舞台でも歌姫になってやるっていう彼女の心意気。それはもはやかっこよすぎる…。優への恋心だけで歌ってた,かわいい女の時よりも,純粋にバンド音楽を極めて駆け上がっていこうとする彼女は素敵だった。
最初のとき,ただ優を大好きで,片想いだと世間の前で暴露してたよね。その時は,なんだこの女…って呆れたけど,あきらめないこととか,同じ土俵で戦おうとするところとか,心の強さは称賛に値する。
優以外のメンバーだったら可能性あるのかなーとも思ったけど,真琴も那智先輩も無理だよね。できたら真琴と那智先輩がくっついたら最高に盛り上がるんだけど,一方通行のままになりそう。音楽に恋しちゃってそうだもんね,那智先輩が。真琴もなんだかんだ,大事なところでは身を引いてしまいそう。優のこともすごい好きだと思うんだよね,真琴は。ただ,平和的な意味でのLikeかなー。Loveが実って年上おじさまを捕まえる可能性も高いし,もしくは万が一那智先輩とうまいこといっても,ずーーっとプラトニックになってそう。
高みを目指して駆け上がるバンド漫画
付け焼刃で結成されたはずのバンド。でも確かに可能性を感じていて,風夏を中心に夢も描けた。そこから風夏を失って,崩れて,バラバラになって…今度は優がそれをつなげる。でも確かに,風夏だけのおかげであのバンドが生まれたわけじゃないんだよね。みんな,優のためにがんばろうって気持ちもかなり大きかったと思う。誰よりも頑張っているって思う人,信用できる人の純粋な言葉。素朴で,ストレートで…助けたいって思わせてくれる人。風夏が引っ張ってくれたバンドだったけど,結び付けてくれたのは確実に優だった。思えば風夏が音楽をやると決めたのも,優のおかげ。お前なしでできるバンドじゃない。だけど,お前がやるっていうなら,みんなついていく。…いいなーこんな主人公いいなー。まさに愛されキャラ!
序盤で沙羅はギタリストとしてかなりのテクニシャンだと紹介されたが,あまりすごさは伝わらなかった。個人的にはそこが心残りで,沙羅が優にだけは心を開くことも確かにおもしろポイントではあるが,せっかく伝説のバンドのギタリストの妹だっていうのに,輝きが少ないなー…と思った。みんなが完璧じゃなくて,天才は風夏だけで,地道な努力を重ねていく姿を強く印象付けるには,あまり能力値が最初から高いのは良くないことなのかもしれない。
いつか真琴が那智先輩と
できればね,この二人,うまくいってほしいなとも思うんだよ。今のところただのギャグ要員で,イロコイは全部優だけなんだけどさ。ボーイズの恋が実ったら,もっと演奏に色が出て楽しそうじゃないか。
もしかしたら,沙羅だけが浮いてしまうのは悲しいから,那智先輩あたりとくっつく可能性もあるよね。で,真琴は泣く泣く別の憧れの人を見つけるっていうエンドも悪くない。優に片想いしっぱなしじゃ,ちょっと悲しいからね。たまちゃんも,沙羅も,那智先輩とだったらなんかうまくいきそうだなーって思う。頼りないキャラから,頼れるキャラへと変わってもいいんじゃない?まぁ,今のところ彼にはそういうのまったく,一切,微塵も感じられないんだけどね…優だって,まわりの女の子が盛ってるレベルで,当の本人はあんまり興味がなさそう…いや,ないわけじゃないけど,それより音楽の道を大事にしそうだもの。
そろそろ終わりを迎えるんじゃないかと思っているが,彼らがラストを飾るステージがどんなことになるか,まだまだわからない。風夏が戻ってくるわけでもないし,彼らなりのバンドの終着点は,もう到達しているともいえる。あとは表に出れるのか,出れずに伝説になるかだ。
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