ラブコメらしく突っ走る物語
仕事と恋が切り離せないナカ
ナカがモデルを始めたきっかけは不純と言えば不純。自分を振った先輩を見返してやりたいからだった。「モデルのウミみたいな可憐な女の子がいいんだ。」モデルになるための勉強なんかしたことないうえに、緊張すると極悪人面になってしまうというモデルとしては壊滅的な特徴を持つナカ。オーディションに行くのはいいが常に惨敗…そんな彼女が、モデルのウミの秘密を知ることで、思いもよらない仕事と恋の渦にのまれていくこととなる。
ナカはルックスが抜群にいいという特徴があり、緊張する事さえなければ、モデルとしてはこれから輝けるはずの人物。そこを堤が拾い上げてくれて、どんどん有名になっていく。きっかけはウミがもたらしてくれたジャンクだけど、ナカを成長させてくれたのは間違いなく堤だから…ナカもウミも、堤には絶対頭が上がらないよね。
ナカがようやくウミへの気持ちに気づき始めたとき、逆にウミはナカへの気持ちをなかったことにしようとする。2人は常にすれ違って、想いは空回りし続けて。もうカッコつけてないでさっさと告れ!思い切って言え!と何度叫んだかわからない。完全に両想いだと誰もがわかっていて、でも誰も教えてあげないもんね…。そこには、彼ら独特の関係性である、モデルの仕事がある。恋にうつつを抜かせば将来の仕事を失うことになるかもしれない。期待されているからこそ、引き離そうとする力が働く。しかも、ウミは男であることを隠して女モデルを続けてきて、そこにプライドも持っている人物。どっちか一つになんて決められないほど、モデルの仕事も恋も一大事な2人。序盤はラブコメ要素が強いが、徐々に仕事への考え方、成長するからこそ変わっていくこと、変わらないことにも焦点を当てた、熱い青春物語へと発展していく。
悩んだってバカップル
ナカがぐるぐる悩んでも、ウミがぐるぐる悩んでも、結局お互いがお互いのことを大好きであるってことで、その気持ちを認めて、隠すことなく走るしかなかった。結論、失いたくないならそうする以外にないのだ。恋するだけならそれで十分なのに、2人にとっての大事な仕事が幸か不幸か邪魔をする。仕事で上へ駆け上がるたび、大好きなのに嫉妬もする。応援できないときもある。ウミの秘密を守るため・先輩を見返すため、モデルの仕事を続けてきたはずのナカ。だけどとっくにモデルの仕事が大好きになっていた。そこにウミの存在は絶対に切っても切り離せないものだし、ナカは両方を獲りにいくか、両方を失うかのどちらかしかなかったね。
逆にウミは、ナカと出会いさえしなければ、それなりの引き際を持ってモデルの仕事を全うして終わったかもしれない。引っ掻き回されたのは、ウミのほうだったと思う。ナカのことを想うたび、ぐちゃぐちゃに引っ掻き回されて私生活も仕事もめちゃくちゃになり、どっちか一つに絞ろうとしても、ナカを切り離す選択がどうしてもできないウミ…自分の性別の問題も、モデルの仕事も、ナカとの恋も。3つのことをクリアしなくちゃならなかったウミは本当に苦労人だわ。学校では生徒会長としての仕事、学校のテストもこなしていて、鬼姑のくせに努力はハンパない。結果で物を言わせるウミは、最初からきっと男前な奴だったと思うよ。
ウミに勇気づけられて、強くなったナカ。ナカという人そのものを好きになってしまったウミ。後半は殴る蹴るの暴力コメディーも、愛の縛りに変わっていってニヤニヤさせてくれる。
堤もバカになればよかったんだ
もう1つの恋である堤の話。彼もまた複雑だったね…モデルの仕事で輝いた実羽が、フィルター越しに自分を見てくれなくなったことが悲しくて、捨ててしまった堤。実羽はあんたが好きだから、必死でついていこうってがんばってたんだよ…?もうひねくれすぎの男だった。ナカとウミに興味を持ち、自分のカメラを見ながらウミを思い浮かべるナカに、徐々に苛立ちを覚える堤…結局、何も変えられなかったし、手に入らなかったわけよ。ナカへの気持ちは恋なんかじゃない。自分の思い通りにできるモデルがほしかった堤。実羽とうまくいかなかったことをどうにか肯定しようとする彼は、本当に小難しい奴だった。自分たちがうまくいかなかったから、ウミとナカも…でも彼らは自分なんかよりずっと必死で、もがきまくって答えを見つけていった。ウミとナカをいじめながら、逆に彼らからから学んでいく堤なのだった。
実羽はずっと堤を好きだったし、フラれてからだってずっと好きで…ちーさんのことはただの友だちだった。ちーは本当に好きなキャラクターだっただけに、実羽への気持ちを押しとどめるかれが切なくて、堤なんか捨ててしまえ!と思ったこともある。しかし、堤がガラにもなく実羽に告ったときのシーンが最高に素敵で、やはり堤と実羽は結ばれてよかったよね、って思った。過去が暗い分、番外編も堤、実羽、ちーの3人の話が多くて…ナカとウミの結婚式じゃなく、実羽と堤の結婚式だったのはウケた。おい、主人公はまだいいの?
ちーさんと苺大好きだ
ちーさんの過去は、実羽への気持ちが実らないことを知っているからこそ暗くて…堤のことも、実羽のことも大好きだから、動けなかった彼が切なすぎた。あの黒目多い感じ、超好き。イケメン。関西弁マジで神。
そんなちーさんの心をとかしてくれたのは、年下の苺。見た目は非常に…実羽と全然違っているんだけど、ちーさんを想う気持ちがすごくあったかくて、周りを見て行動できるのがちーさんとよく似ていて。いいキャラだった。年下のくせに誰よりも大人びた言動と行動のできる苺。ちゃらんぽらんしながら動けず縮こまっている千洋をよく救ってくれたなーと感動。ちーさんは、ずっと誰かに寄りかかりたかったんだよね…京都でのあの告白、誰よりもかっこよかったよ…!
苺の気持ちに何となく気づいていたちーさん。それが、明確な言葉になって、自分とは全然違う大きさに、胸を打たれた。わかってたはずだけど、あー俺は幸せもんやって。あのシーンは、はっきり言ってウミとナカたちよりも刻み込まれているわ…
ちーさんと苺は、苺が常にしっかり者で行動している気もするが、大事なところはちゃんとちーさんが引っ張ってくれるんだろうなーそして夜はちーさんが盛大に盛り上げてくれるのだろう…きっとウミとナカ、堤と実羽よりも絶対楽しいことになっている気がする…。
青春らしく走り切る
それぞれの恋が走り抜けて、みんなで仕事をする。モデル、カメラマン、映像担当、服飾担当、メイクアップアーティスト…必要な人材がこれだけそろって、みんながみんなの仕事を信頼してて…最強じゃん。
メイクの遊佐は、なんで登場したんだろう…っていうぽっと出のキャラだったけど、ウミに男としての嫉妬を教えてくれた重要なキャラクター。そして、トータルコーディネートする最後のラストにつなげるには、メイクアップアーティストは絶対に必要だったし、登場しなきゃならないキャラクターだったね。
ウミが男モデルとしての道を選び、いろいろな人に認めてもらって、確かに反感もあったけど負けずに向かっていく終盤は素敵だった。そういう不屈の精神みたいなものって、すごく大事なことだし、仕事と恋に向き合うことが教えてくれるものって大きいと知る。
それにしても、この16巻という長さの物語は、彼らにとってはたったの8か月足らずだったらしい…とんでもない急成長である。彼らの続編はいらないけど、ウミとナカのがっつりラブシーンは見たかったな…。
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