遊の繊細さと光希のタフさが魅力だった物語
ありえない同居
二組の夫婦が同時に離婚し、パートナーを入れ替えて結婚する…。そこまではまぁあるかもしれないことだしいいのだが、2組の夫婦・家族がみな同居する謎の設定が話題だった。物語の中ではあまり尾を引いていないけれど、よーく考えるとものすごーく変。夫婦の営みをして授かった子どもがいて、いきなり違う人を選ぶだけでもなかなかハードなのに、昔大学のころにもともと愛し合っていた相手と再び恋におちちゃうんだもんね。しかも同時に。好きになっちゃったんだし、どっちも捨てがたいから持っておこう的な?旦那のことも好きだけど、出会ってしまった元彼も別に嫌いになったわけじゃない。どっちもとれないからみんなで暮らしちゃおう!ってかなり異様。こじれてはいけないから、離婚した相手と乳繰り合うことはないと思いつつ、非常に複雑ね…。
光希は大反対で、世間体考えてもどう考えたっておかしいと言う。遊はやはり自分が両親の子どもではないということを考えているために、彼らの意見をどうしても優先して、自分は部外者だから…的な行動に走りがち。家族の中で反対するのが光希だけになれば、彼女も折れざるを得ないだろうよ。娘に対して一芝居打つ当たりも非常に…困った両親だ。おかげさまで、光希と遊の恋はこの両親に否定できるものではなくなっちゃったんだけどね。どう考えたって、これだけ好き放題やって光希や遊を困らせておいて、今更あなた達の恋愛はだめよ、なんて自分勝手すぎる。
気づく気持ち
もともと遊はイケメンで、ちょっとしたところでちゃんと優しいから、光希が好きになるまで時間はかからなかった。もともと銀太のことが好きだったけれど、好きになってはいけないと考えて時間を過ごしてきたから、遊のあらわれたタイミングが何とも絶妙なタイミングだったんだろうなー…。
遊が光希を好きになったタイミングは全然わからないけどね。保健室でキスしちゃった、とかマジで「え?」って感じで、いつからそんなことに?と動揺を隠せなかった。しかも散々期待させておいて、好きだ嫌いだは全然はっきりさせないこの男。手を出してはいけない男のような気がしてヒヤヒヤ。まさかのドロドロ系なのか?
光希が遊に恋して、思いを伝え合うまでには遊の心の闇に迫らなくてはならない。光希のタフな精神、正直にぶつかっていこうとする一生懸命さに遊は助けられたし、好きになったんだと思う。ラストまでずっと、光希が遊を救い上げてくれる形だったなー。遊に助けられていたこともあったけど、女が強くならないと、恋愛ってうまくいかないもんだ。
この物語における両親たちの存在が本当に欠かせなくてイライラするね。遊がこんなに苦しんだのは、あんたら両親がぽろっと話していたことを誤解したからなのに、自分たちは本当に能天気で…。まぁだって遊は確かに自分たちの子どもだし、光希とも血がつながったりしていないんだから、そりゃ堂々としていてもおかしくはないんだけどね。こじらせるようなことをするんじゃないよ!とは言いたい。
繊細過ぎる遊
遊がね…事実確認を誰にも知らせず行い、自分の気持ちをわかってくれる三輪さんと出会うまで、非常に心が苦しかったらしい。家族を壊さないように、一生懸命笑顔を作って、影で泣く。こういう男は女の母性をくすぐっちゃうんだよなー…。
でもさ、自分の本当の父親を突き止めて、どうするっていうんだろう。育ててくれた人を恨む?過ちを犯した父を憎む?自分の生き方が変わる?遊は本当に繊細で、弱い人間。血が繋がってないってことが、いったい何だって言うんだ。一緒に暮らせば、他人なんかじゃない。そこにたどり着かせてくれたのは光希だった。
それなのに、今度は光希と自分が血が繋がった異母兄妹かもしれないっていう話に。こっちのほうは大して調べもせずに即決。京都まで逃げやがった。せっかく自分の中での光希の存在が一番になり、家族に隠れながらも愛を育んで、穏やかになったっていうのに。いったい誰のおかげだと思ってんだ!家族も捨てる、光希も捨てる、いつまでも悲劇の王子様きどってんじゃねー!!と言いたい。繊細だからって、何やったっていいわけじゃないねん。京都に光希が来てくれなかったら、救い出してくれなかったら、この恋はあっという間に終わってしまった。
あの両親にしてこの子あり。よく見ればどう見たって遊はあのちょっと神経質っぽい表情の両親の子だよ。あんなタラシの男の血を引き継いでなんかいないよね。三輪さん父は本当に…どうかしている金持ちだったわ…。それをフッた母、素敵。
茗子ラブ
茗子となっちゃんの恋は、すっごく微笑ましい限り。禁断の関係ってなんでバラしたくなるんだろう…なっちゃんは教師を辞めることになり、茗子は置いてけぼりに。禁断の関係をバレずに続けてくれるマンガって全然ないよね。必ずどこかでバレるか、バレる寸前までいく。それが物語をおもしろくするんだろうけどさ、実際バレないかもしれないじゃん。高校卒業したら、いくらでも好きになっていいのに、学生の間はダメって、なんでなんだろうね。こういう世間体を考えなくてはならない文化も、いずれは変わっていくのかなーって思いつつ、これだけ古い漫画も今の漫画も先生と生徒の恋に関しては難しく描くから、まだまだ先のことになるかもしれない。
茗子はそりゃーもう美人で、文学少女で、小説を書くことができて、なっちゃんにはしっかり甘えるできた女。なっちゃんもまた茗子にはぞっこん。大人の優しい包容力。好きだ。「私も連れてって!」と新幹線までおいかけたシーンでは、断られちゃってこっちも落ち込んだ。茗子は失恋に終わるのかなーって思ってたけど、なんと復縁に成功!これに関しては作者さんありがとう!と言いたい。茗子は高校卒業してなっちゃんと結婚することになり、実家の家業を手伝いつつ、小説を書いているのだろう。これはこれで素敵なお話だった。
光希と茗子の友情に関しては、光希が茗子に自分のことをなんでも相談していただけに、辛いものがあった。茗子だって光希には話したかったかもしれないが、やはり先生と生徒の恋は…否定されたらどうしたらいいかわからないもの。苦難乗り越えそれでも一緒にいたいと決める。茗子は本当にかわいい奴だった。
こねくり回しておかえりなさい
遊が光希から逃げてしまい、それでも好きなまま時を過ごして数年。大学生になったって、何歳になったって、忘れられない人。ごちゃごちゃ考えるより、光希らしく突撃するラストはまさにこの物語のいいところだ。全体的に甘いのにちょっと苦みもあるママレードみたいな遊を、ぜーんぶ甘くしてくれたということで。いい感じに仕上がったと思う。
ドロドロしていると思い込んでいただけで、実際にはドロドロではなく、ちゃんとクリーンだったことがわかるこの漫画。なんだよ、全部遊が早とちりするからやん!光希の気持ちをわかったうえで試すわ引くわ押してくるわ…非常に困ったやつだったが、いい奴なので憎めないのである。こねくり回されたけど、この2人がハッピーエンドを迎えられて本当によかった!
銀太と亜梨実は、横取りしてやるつもりが恋しちゃうという話で。光希をとられたくないっていうところから、だんだん亜梨実をとられたくない!っていう気持ちに変わっていった銀太はおもしろい奴だった。登場人物がそれほど多くないし、王道な仕上がりで良かったと思う。
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