想像力を掻き立てる逸品!! - 新世界よりの感想

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新世界より

5.005.00
画力
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ストーリー
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キャラクター
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設定
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演出
4.50
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想像力を掻き立てる逸品!!

5.05.0
画力
5.0
ストーリー
4.5
キャラクター
5.0
設定
5.0
演出
4.5

目次

1000年後の世界。現在より規模が小さくなった日本。利根川流域神栖66町では皆争うこともなく平和に生きている。全人類は進化により《呪力》を手にいれ、それを活用し日々の生活を快適に営んでいる。そのため、学校では生きていくために必須となる《呪力》の取り扱い方も教えている。若き日々をゆるやかな恋や友情を存分に楽しむ私たち。だけど、今日何かが足らない。思い出せない昨日はあった大切な『何か』を。

原作は、ホラー小説の巨匠。貴志祐介さんです。有名な作品は伊藤英明主演で映画化もされた『悪の教典』でしょうか。ちなみに、私は貴志祐介さんの作品はすべて購入しております。この作品は、貴志祐介さんという天才の脳みそが垣間見られる青春作品となっております。1つ、倫理が崩壊しないかぎり、親は子を守り、教師は生徒を守り、友達は友達を守り、恋人は恋人を守ります。では、それらが守られない倫理の欠如した状態が究極の平和であるならばーー。

親友の麗子が突如姿を消した。だけど、少々の違和感を感じながらも一斑の仲間誰も麗子を探さない。そもそも、記憶に麗子はいないから探せない。教育の一環のキャンプ。そこで、主人公たちは立ち入り禁止区域へ足を踏み入れる。規則を破って。そこには、私たちを神と崇める酷く見た目がおぞましい《バケネズミ》という生き物がいる。知的生命でありながら、何とも非力で哀れな姿。しかも、在来種のバケネズミと外来種のバケネズミで争いに巻き込まれてしまう。神栖66町で守られている平和はそこにはなかった。 

ここで、注目したい生き物はハダカデバネズミでしょうか。この作品に出てくるバケネズミは、そのネズミを題材にしていると言います。無毛で出っ歯なネズミ。それらは女王をたてコロニーを形成しています。主人公たちは女王の佇まいにもおぞましさを感じますが、果たしてハダカデバネズミがそこまで、大脳を発達させ二足歩行をし、武器や毒ガスを使用し戦うでしょうか。仲間を命をかけて守る彼らは本当に下等生物なのでしょうか。

飼い猫に噛まれる。否、飼い鼠に噛まれる。だが、その飼い鼠は本当に鼠なのだろうか。神栖66町は平和だ。その理由に同族を殺すと自分も死んでしまうことがある。だが、過去に希死機構がない人間が生まれ、たくさんの同族を殺した。《悪鬼》と呼ばれるそれらは神栖66町にはいないはず。だって、少しでも平和の綻びになりそうな出来損ないのそれは、神栖66町では処分される運命だからーー。神栖66町は、平和のために倫理を破りました。ただ、出来損ないは果たして町のために大人しく処分されるでしょうか。神栖66町についに《悪鬼》が現れました。たくさんの人が死にます。戦おうとすると死にます。何故なら戦う相手は人間だからーー。

 

ついに平和が終わりました。この後主人公は対抗策を考えます。何故、バケネズミが神である私たちに逆らうのでしょうか。主人公たちは《呪力》によりこの世界が壊れた歴史を知ります。

バケネズミはズル賢い生き物です。まるで、人間のようにズル賢くーー。果たして、ハダカデバネズミを知的生命体にするのと、人間ハダカデバネズミのように退化させるのとどちらが安易なのか。ハラハラする展開です。 

  • 貴志祐介さんは倫理が壊れた世界を膨大な想像力で描くのが得意な作家さんです。私は全巻購入していますが、『クリムゾンの迷宮』もかなりの名作で、人の狂気をかくのが本当にお上手だなと思います。この世界も人間の在り方についてかなり考える題材になりますが、まずは壮大な想像力に触れながら、ストーリーを及川徹さんの美しい絵でお楽しみ下さい。

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