信頼が崩れるのは一瞬 - ホリデイラブ〜夫婦間恋愛〜の感想

ドロ沼を作り出したことを一生後悔する

始まりがすごく和やかで、いったいこの夫婦のどこにほころびが出るんだろうって思った。純平があまりにもクソ野郎だと言うしかない。こんな人もいるんだな…って純粋にときめいたらしいが、いやそこで止まらないあんたの思考はもはやまずい。そして直接会ってしまったらもう終わりなんだよ。

一番最低だなと思うのは、彼が嘘をついたこと。杏寿に対して「会社の事務の女の子の家に行って、リビングで話をしていただけなんだが、旦那が帰ってきて不倫だと騒がれて殴られた。」と言う純平…自分の犯してしまった過ちをさらに深くする、最低の嘘をつく彼がなんとも…バカだなとしか言いようがない。包み隠さず話していないなんてこと、そのキレキャラの旦那と杏寿が直接話せばすぐにバレることなのに、そこまで頭が回ってないのが本当に…イライラ。結局話を里奈の家庭の悩みを聞いただけでなく、カラダの関係まで楽しみ、ついでに心もガッチリわしづかみにされていたわけで、これは寸分の違いもない“浮気”だった。

てっきり、この漫画のタイトルが「ホリデイラブ～夫婦間恋愛～」というタイトルになっていたので、不倫をやっちまった純平と里奈を置いといて、渡と杏寿の間でもまさかの恋愛が勃発する…っていう意味なのかと勝手に思っていた。物語としては、完全に純平と里奈が浮気で、渡はそれを執拗に追い詰める旦那、杏寿は冷静にこれからどうしていったらいいかって悩む妻だった。黒井との浮気もあったけれど、あれは純平がバカやった後だし、カウントするのはなんか違う気がする。

女は一生女でいたい

結局、女は一生女でいたい生き物である。子どもがいない時間は、夫から愛されていたいものだし、女としての価値を求められたい。一生綺麗でいたいし、何歳になっても美しいと言われたい…そのためにいつも努力しているわけだ。メイクだってなんだって、やったって変わりがないとか、絶対言われたくない。着飾って、かわいくして、好きだと言われたいのが女である。

この漫画の巻末で、純平と杏寿がまだ片想いだと思っていたときのエピソードが番外編として収録されているが、これがまた…余計に不倫してしまったことの罪を強く印象付けるね。あの頃は幸せだった。いつか想いを伝えたいと考えながら、ただいつものランチタイムにそばに座っただけでドキドキして、恋が生きるパワーをくれた。６年経って、それも忘れて、毎日やりたかった仕事をがんばっているだけでも幸せなことなのに、家族のありがたみが感じ取れなくなっていく。杏寿のほうは、純平が離れていってしまうようなことも予期していたし、その点ですごく冷静に関係を見つめているよね。女性はそういうところがあるから、第六感的な力を持っていると言われるのは、普段からそういうふうに観察したり、想像したり、いろいろな場所で気を張り詰めているからなんだと思う。

純平とまったくタイプの違う黒井と出会ったことは、実に刺激的だっただろうし、救われたはず。そこで決着がつくまでがんばれたら杏寿はすごいけど、そんなに強いわけじゃない。「魔が差す」ということを自らの体験を通して学んだ杏寿は、純平を許そうという気持ちになっていく…ってのがまたいいよね。決して片方だけの罪で終わらせず、「もしかしたら自分も…」という部分も見せてくれるのが誠実な漫画である気がする。

物語も終盤になってきて、里奈と黒井、麗華がみんなグルっぽいという話も出てきた。純平を手に入れるため、杏寿と別れさせるために、これからも苦難の道は続くのか、はたまた急速に決着を見せるのか？七香もまだ小さいんだし、どこへでも引っ越しちゃえばいいんじゃねーの、とは思うなー。同じ建設業、日本全国どこにでも仕事はあるって。

里奈を嫌いになるしかない

里奈に関しては、ここからどんな黒さが出てくるかが楽しみでならない。確かに、渡の粘着質な性格・窮屈な生活を嫌って不倫してしまったのは事実だし、かわいそうな気もする。だけど、里奈は絶対黒いと思っている。相手を想うのであれば、わざわざ純平が会社にいづらくなるようなことをしてまで、悲しい思いをさせてまで、自分だけのものにしようとするのはいただけない。自分のかわいさをわかっている感じが本当に鼻につくし、渡が里奈を心底愛しているってこともわかってそうで気持ち悪いんだよ。

渡は里奈と純平の関係を許さないし、遠ざけようとすることは間違ってない気がする。かといって、里奈を許して自分ももっと寛容になろうって言った瞬間に、里奈は豹変する気がしてならないんだよね。今まで以上に上手に、男をたらしこんで遊ぶ可能性が高い。子どもを取り上げたことも、金を奪ったことも、罰として受け入れなくてはならないんじゃない？そして、心が離れたなら、潔く別れたほうがいいと思う。今どき離婚なんて珍しいことじゃないわけで、ズルズルお互いを傷つけあう関係を続けていくより、スパッと捨てたほうがお互いの健康にいいんじゃないかなー…。

まぁそんな簡単に、冷静に事が運ぶことなんてないのだ。盛大にぶっ壊れて、そして一から始める以外に、更生する方法はないだろう。里奈のどす黒さがどこまで出てくるか、麗華と黒井の本当の目的が何か、ここらへんを楽しみに読み進めていく。

窮屈に生きさせてしまったことも詫びなくてはならない

渡が里奈に対して詫びることがあるか。これは…難しいところではある。もともとのしつこい性格のせいで、里奈とうまくいかなくなったんだろうって思うけど、もしかしたら、里奈のそういうチャラいところのせいで、渡が苦労してきたのかもしれないし、こればっかりは…やはり不倫してしまった側に責任を求めるしかなさそう。でもどこかのタイミングで、渡も何かアクションを起こす必要があると思うんだよね。里奈をどこまでも黒くなるか、若干可哀そうな雰囲気になるか、やはり渡がどう行動するかにかかっていると思う。

不倫はどうしても遠ざけたい問題であるけれど、長く一緒に暮らすほど移り気になるのは確かにしょうがないとは思う。均衡を保ってきたものが崩れるのはほんの一瞬の油断だろうし、常日頃からの信念が大事なのだろう。

どんな結果もバッドエンド

この手の不倫を題材にしたマンガで、ハッピーエンドは無理だ。だってもはや過ちを犯した後だからね。そこをどう乗り越えるのか、それとも逃げてなかったことにするのか、誰かが完璧におかしい人間になり、誰かが正義ぶって前を向いて歩いていこうとするのか…どう転んでも、何かが歪んだまま、それでも生きていかなくてはならないことを証明するだけだろう。不満があって不倫するのと、不満もないくせに不倫をするのとでは、ずいぶんと罪のレベルが違う気がする。

ラストに何が待っているかは全然予想できないが、別れさせ屋的な存在が里奈を応援しているような状況らしい。そこをどうクリアして、杏寿と純平が人生を選択するのか。そこを見るまでは最後まで読み続けたい。七香のことがあるから、杏寿と純平はやり直す方向でいきそうだけどね。いちおう物語の中でも、今が一番つらいところではあるが、夫婦であることを選んでいるし、世間からの目も里奈からの猛プッシュにも負けずに、生きていく可能性は高い。すべてはハナちゃんという最強の協力者のおかげだ。調査力、推理力、行動力。これほどまでに優れた友達がいるなんて…最高すぎる。もはや探偵推理シリーズになってきている気がする…