最後まで見逃せないドキドキ展開
どうしても合格したい死にもの狂いの争い
合格すれば死ぬまで年俸1億円が保証される…。そんなびっくりするほど怪しい試験を受けるため,厳しい事前の試験をクリアしてきた8人の受験者たち。これだけ怪しい試験なのに,挑戦を決めることができたのは,その試験を実施している会社が確かに存在しているということと,病気の特効薬を開発する信頼ある会社だったためだ。試験に合格すれば一生安泰。いったいどんな試験が待ち受けているのか?怖いけれど,報酬には代えられない。強い精神力と自信を持っている者たちだけが生き残ってこれたこれまでの試練。最終試験はとても簡単だった。
質問を見つけること。
たったそれだけのために,密室空間が用意され,80時間という時間が与えられた。答案用紙には何も書かれておらず,どうやって見つければいいのかも質問できず,警備員に話しかけることも,退室することも許されない空間。…怖すぎる。完全に,「殺し合え」と言われているような気分になるよね。こういう空間に閉じ込められたとき,必ずリーダーシップを発揮しようとする人物はつくられる。この8人の中ではホワイトがそれを担い,中心となって物語を進めていくことになる。そのせいでずいぶんとだまされたよね…ホワイトが全然ホワイトな人間じゃないってことを感じさせつつ,徐々に人の道から外れていって,おかしくなっていく様子がよく伝わる。
最初に「受験者同士での会話はセーフみたいだ」と気づかなければ,各々が悶々と考えて,捻り出せた人もいたかもしれないって思うんだよね。
別に殺されるわけじゃないのに
見どころは,「パニック」。80分以内に答えを見つけて回答すればいいだけなのに,みんな殺されるんじゃないかってくらいの焦り方で,観る人の恐怖をあおってくる。警備員に話しかけただけで退場くらったあの人。残念だったけど,別に殺されるわけじゃないんだからさ…焦りすぎじゃない?のどから手が出るほどほしかった1億円がこぼれ落ちていく…それは確かに残念すぎて,悔しすぎて,発狂したくもなる。一攫千金をかけてここまでがんばってきたんだもんね。
むしろ怖いのは,このルームに居続けることだろう?ホワイトが何かしでかして,自分だけが助かろうとして殺しにかかってくるかもしれない。だまし合って,疑って,誰一人として信じられなくて。この極限状態の空気に耐えられるかどうかが試験内容ではないんだけど,それが作り出されてしまった。これもCEOの策略のうちだったのか?と考えてみると,絶対策略のうちだったよなって気づく。だって,ホワイトなんて自分がこの会社の特効薬を必要とする患者であり,自分が助かりたいという想いが絶対あったはず。ブルーネットは大事な人が特効薬の必要な病気を患っていて,その人のためにこの会社の試験に合格したいと思っていた。そんな2人を同じ空間で会話させたら,極限状態の中で絶対分裂するのは目に見えているよね。あらゆるバッググラウンドの人物を選び,一緒の空間で80分間考えさせ,どんな答えが得られるのか。むしろ,合格させるための試験じゃないよね。Examは,「試験」ではなくて,「実験」っていう意味だったんじゃないのかなって思う。
答えがシンプルすぎて度肝を抜く
最終的に得られた答えがあまりにシンプルすぎて,唖然とした。まさか,
何か質問は?
っていうのが探し出すべき質問だったなんて…気づけるほうが怖いっていうか,トンチかいって気持ちになったわ。試験の問題用紙は白紙。試験時間中は警備員・試験監督などに話しかけることは失格となる。それならばと白紙の紙に何かが隠されているか,部屋のどこかに何かが隠されているか…そう考える以外にないよね。こういう問題は,IQ値の高い人の集団であるメンサ会員とかだったら,すぐに気づけるものだったりするのかな。
こんな簡単な答えにたどり着くために,人が死にかけて,傷つけて,傷つけられた。わからないことは,恐ろしいこと。何が起こるか予想できないことは,恐ろしいこと。それが薬であり,もしかしたらそういうことも気づいてほしいがための問題だったのかなって,考えてしまった。人の弱さや,極限状態で何を選択するのか,どんな力が発揮されるのかを考える,いい機会になるね。
いつも得られる答えはいたってシンプルなことが多く,めんどくさくさせているのは,人間の感情だなーとつくづく感じる。いかなる状況においても,冷静さを見失わず,よく吟味して行動できること。これが大事なんだよね。確かに,これだけの緊迫した空間の中で生き延びる人物には,1億円を与えてもいいというくらいの,よき働きができるのだろう。
最初に退場した人物が一番怪しい
デフがこの会社のCEOだった…!っていうのはそんなに驚きがなかった。明らかに変な人物で,明らかに時計に何か細工したよね?って思ったもの。変な人がこの難関の試験をクリアできるわけないじゃん。絶対何か能力があってここにいる。そんな人たちしかいないはずなんだよ。
デフをいいように使い,みんなで協力しようと言いつつ人を陥れようとしていたホワイトは,絶対序盤で脱落すると思ったんだけどな…まさか,最後の最後まで残って,
俺が答えだ…!
って叫ぶ展開になろうとは。びっくりした。こういう演出もなかなかないよね。だからこそアカデミー賞にノミネートされたりするんだなーと思う。意外性が抜群で,密室に短時間とはいえ閉じ込められた人間たちの狂っていく様子を見ることのできる「エグザム」。別に誰かが凶悪な犯罪者なわけでもないのに,お金を巡って争いは過激になっていく。観客の誰もが,最悪のシナリオを予想しちゃったんじゃないだろうか。これは単なるゲームで,誰もクリアするわけないだろうから,1億円という莫大なお金を餌に,人間を使った実験をしている…的な,大きな話も想像できたはずだ。
いったいどんな会社のどんなポジション?
ラストでは,ブロンドが答えに気づいてエンディングを迎える。ブロンドは年俸1億円を約束され,いったいどんな仕事をするんだろうね…。人を試す試験であり,実験であったであろうこの物語。クリアしたブロンドには会社の運営権がすべて譲られたりするのだろうか。
会社が試したかったものを考えてみると,たぶんあの空間での最終試験に到達した8人には,等しく会社を運営していくだけの能力があって,あとは精神力・冷静さ・賢さにおいて,誰が秀でているのかを調べたかったのかもしれないね。窮地においても冷静な判断ができるかどうか。予想のできない展開・誰も頼ることのできない環境で,自分自身で答えを導き出すことができるのか。間違った判断に従わない勇気を持てるか。よく考えてみると,追い込まれたときにも立ち向かえるかどうかを80分間で試されたんだなーって感じた。
年俸1億円って言ってたけど,果たしてブロンドはどんな仕事をするんだろうね?まさか,この実験そのものに,あと何十年と1億円を払い続ける価値があると断言する気じゃないよね?ブロンドにはこれから重要な仕事が任されていくんだろう。もしかしたら,CEOの交代かもしれない。その時必要な手腕は,命をかけたサバイバルと同じだと教えてくれたのだろうか。
パニック映画であり,俳優一人ひとりの演技が秀逸で,ハラハラドキドキは最初から最後まで続いた。いろいろと深く考察してみたけれど,もしかしたらただのパニック映画を作りたかっただけなのかもしれない。役者さんたちの光る演技,心臓なりっぱなしの緊迫した展開を純粋に楽しめる映画だと言える。
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