逆ハーレムの定番をじっくり楽しむ
もっと早くに君と出会えていたら
本州からはるか離れたド田舎の小島で暮らす翠。男友達とサッカーばかりの毎日を過ごしていた彼女には、サッカーを教えてくれた初恋の人がいた。ある日引っ越したはずの初恋の相手・司が島へやってきて、翠に近づき処女を奪う。後から賭けに利用されていたことがわかり、「田舎の女ほど股を開くのは早い」と言い放っているのを聞いてしまう…!サッカー名門校のエースとして活躍する司を打ち負かしてやるため、翠は東京のサッカー名門男子校へと強行で進学するのだった。
もはや作者・池山田さんのおなじみの漫画。女の子が男装して男子校に飛び込みドキドキハラハラの楽しい毎日を過ごすという物語。司をぎゃふんと言わせてやるつもりで男子校にまで入ったのに、翠は純粋にサッカーを楽しんでいる様子。司に出会えばぽやっとしちゃって全然復讐ができない…序盤からとにかくカズマがかわいそうでね。恋している人に恋しちゃってあきらめられない、かわいい男子なのである。
翠は裸族ですぐ裸になるし、同室のカズマは気が気じゃない。でもそんな姿を見れるのは自分だけ…って思っていたから、司の存在はあまりにショックだったことだろう。翠がとにかくガードがゆるくて、すぐ人にさらわれたり、襲われたり、危機感のない行動ばかりで危なっかしい。惚れた弱みでカズマがいつも体を張って助けに来てくれる。天然すぎる女は本当に罪レベルだ。
司がもっと早くに翠と再会できていたら、こんなにこじれることはなかったのかもしれない。そうなるとただの涙の少女漫画になるだけで、全然つまらないことになるのだが、司だってかわいそうな男だし、それを愛しいと思っていた翠の気持ちもまた嘘ではなかったと思う。ヤリ捨てられようが、やっぱり司を見たらドキドキが止まらない、ほぼ病気レベルに翠は恋しちゃってた。大好きなサッカーも、司を前にすると全然集中できないありさまで、しょせんは司と繋がってるからサッカーやってたんだよ翠は。
ペローんと出ちゃうシーンを楽しむ
1巻のうち、いったい何度裸になるんだろうねってくらい、いつも乱れている翠。少しは恥ずかしがってくれないと、カズマだって理性が飛んじゃうよ?マイルドなラブシーンが小出しに登場するのが池山田さんの作品であり、もはやお約束。相手チームの部室であろうとトイレであろうと野外であろうと…どこでもいいのである。カズマとはキスだけでドキドキなのに、司に対してはそれどころでなくあられもない状態になる翠。いったいどっちが大切な存在…?司が突き放してあげなかったら、翠は両方を取りに来た気がするよ。怖い女。
翠のいいところは、サッカーが大好きで、男子とか女子とか関係なくとにかく努力を重ねるところ。天然無防備の悩殺スマイルで、どこへいっても観る人を魅了してしまう翠だが、誰よりも努力するところは尊敬すべきところだ。だからこそ笑顔の効果も抜群に上がるんだよね。暑苦しい場所で翠が紅一点だ。女子マネージャーがいたら絶対バレたと思う…。
ついにはカズマをさておき、翠と司は色っぽいベッドシーンへ突入。それなのに寝言はカズマの名前を言う翠…あー…司どんまい。別れるフラグが止まらない。
だいたい終わりが見えたところで、あとはもうペローんと出しちゃうシーンを楽しむほうへ注力。お風呂でばったり鉢合わせ、裸族で開脚、酔っ払って女炸裂などなど…カズマが毎日ドッキドキで、こいつこそサッカーのことしか考えていなかった人間だから、その刺激の虜になっていくのだ。
司の突き放し方はわかりやすかった
乙女なカズマが翠の隣をゲットできたことは喜ばしいこと。ずっと翠だけを見てきたから、サッカーでも、プライベートでも、翠の存在が俺を強くしてくれた、と本気で思っている。翠のかわいい仕草に悩殺され、想いを打ち明けてからは愛しい気持ちがおさまらずに見つめ続けるカズマ…くぅ、かわいい奴…。
改心した司は、翠の幸せを想うからこそ、翠を突き放す。その時の突き放し方がなかなかない方法だったので、印象深い。だいたいが、「自分の本当の気持ちを消すな!」とか「ちゃんとよく考えて、その心には誰かほかの人がいるだろう…?」とか言うよね。もしくは、一方的に置き去りにする。司は、「翠はカズマがいない日々・いずれは違う誰かと過ごすために自分から離れていくことを想像できていない」と伝えた。とってもわかりやすいセリフだ。司のことは追いかけるだけでよかっただろうけど、カズマがいたからこそ、動くことができていたんだ。いい子だから、気づかせてあげる。自分が少し我慢をしてでも、やっぱり好きな人に幸せになってもらいたいと思う。ヤサグレてた司からの変わり身はびっくりだけど、優しい司を見習わないとな、と思うよ。乙女なカズマは最後まで乙女で、自分がケガをしている間にいろいろ決まっちゃったもんね。なんだかんだ、一番愛されていたのはカズマなんだ。
逆ハーレムは本当はとっても怖い事
女が男子校に一人で乗り込むのは、現実厳しいものがあるよね。そりゃー高校生ごとき、チキンが多いだろうけれども、はじけたらどれほど危ないか…男が女装して女子校に行くのは別にいいんだよ。女はやはり自分の身の安全をきちんと確保しておいてほしい。漫画の中で、全部生徒たちありき、先生たちの介入は一切出てこないから、翠の都合を知る理解者が少ないのは実に心配。襲われても文句は言えないのだから、とても怖いことだということをよく知っておいてほしいね。憧れてはいけないよ、若者よ!飛び込んでちやほやされたい欲望は理解できなくもないが、実際かわいくない子が飛び込んできたって無理だ。男はとてもシビアな生き物なのだから。
翠が女であることは結局カズマ以外の人にもばれていて、カミングアウトも随分とあっさりしたものだった。「花ざかりの君たちへ」のように、みんなが複雑な気持ちになったり、ぐるぐる頭を悩ませたりする葛藤もなく、「それでも翠は翠だ」と言ってくれるサッカー部の奴らは実に心が広く、平和な奴らだ。翠みたいに、悩殺スマイルができたらなー…笑顔が素敵な福士蒼汰くんみたいになりたい…。
最後まで波乱を予想させる展開に汗
最終的に、翠はカズマと結婚。司はサラという人と結婚することになる。それぞれに子どもが生まれて、あの島で再会し、翠と司ができなかった恋を、子どもたちが始める…?怖すぎる。いや、無理でしょ。司と翠が親戚になるとか無理でしょ。絶対不倫フラグ立つでしょ。なんでハッピーエンドとか言っちゃってるの?と焦った。もともと大好きだったんだよ?司は少なくとも翠をないがしろにすることは絶対できないじゃん…ダブル不倫するドロドロの展開が見えたため、ラストで一気に嫌になった。カズマがまた泣いちゃうぞ。
もちろん、カズマが翠のせいでケガをしたけれど、きちんと復帰して最後の大会で全国制覇を成し遂げたことはすばらしかった。翠も最後までサッカー部に所属して活躍し、ゴールデンコンビとして名をとどろかせ、女子だったから華麗にその世界からフェードアウトしたこともカッコいいと言えると思う。ただ、どこまでいっても司との縁は切っても切り離されないもの…ということが、あまり喜びとは思えなかった。
おそらくは、サラさんがものすごく寛容で、大人で、司の弱いところも全部包んでくれるようなキャラなんだろうね。だから、結婚できたんだろうね…。
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