食という日常と、狩猟という非日常
猟師のルールがよくわかる
日本では、個人が猟をする際に数々のルールがある。例えば猟銃免許を持っているからといっていつでもどこでも何でも撃ち落としていいわけではない。夏場や日没はNGなどといった決まった時期や時間帯があり、決まったエリア、さらには決まった生き物のみの狩猟が許されているのだ。この漫画の作者は猟師の免許を持ち、実際に銃や罠での猟を行っているので、狩猟の時期、免許の取得方法、狩猟鳥獣または非狩猟鳥獣の紹介など、猟師をするにあたっての法的なルールがかなり詳しく解説されている。それだけでなく、山へ入るときの装備や心構え、役立つアイテム、マナーについても触れており、素人が猟師の疑似体験をすることができるとともに、これから猟師になりたい人へのバイブルにもなりそうだ。また作者は、もともと山で生まれ育ったということもあり生き物以外に植物にもかなり詳しい。山で食べられる草や木の実の解説もあり、読んでいるとつい山へ出かけたくなる。
仲間との友情や田舎の人情を感じる
狩猟を愛し、志をともにする仲間とのやりとりが楽しい。仲間と出猟し、散弾銃を持つ友人と空気銃を持つ作者がそれぞれの銃の良さを活かしてチームプレイで獲物を射止めたり、その後は狩猟にまつわるさまざまな雑談をしながらみんなで射止めた獲物をさばいて祝杯をあげたりとわくわくするような人との交流が描かれている。スズメバチ駆除のために仲間とドタバタ劇を繰り広げる話などもあり思わず笑ってしまう。狩猟の際に事故で怪我をしてしまった作者のことを愛情をもって叱咤してくれる大先輩の猟師や、いろんな生き物を狩って食してみようと作者をアブノーマル(?)な世界へ誘う先輩猟師との出会いを経て、猟師として、また人間として成長していく作者を見ていると、こちらも元気をもらえる。
命をいただいていることへの再認識
普段私たちは、スーパーに並ぶ食材を買って調理し食するというスタイルが当たり前になっている。肉にしてもすでにさばかれて綺麗にパッキングされた状態のものを見ることしかない。しかしこの作品では、目の前で生きている動物を狩って、血抜きや羽むしりなどの下準備をしてさばき、食するところまでがリアルに描かれている。普通に生活していると忘れがちになってしまう、命をいただいていることへのありがたさを思い出させてくれるのだ。またこの作者は、ただやみくもに狩りを楽しんでいるのではなく、命への尊厳を大事にしている。そのため、カラスのような通常は食さないような動物でさえも、射止めたからには必ず食すことをモットーとしているのだ。罠にかかった猪と対峙するシーンなどは胸に迫るものがあり、普段何気なく口にしているものがかつては温もりと命を持っていたことを思い出させてくれる価値のある作品である。
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