人になんと言われようと愛する - 理想の彼氏の感想

理解が深まる映画レビューサイト

映画レビュー数 5,784件

人になんと言われようと愛する

4.54.5
映像
3.5
脚本
4.0
キャスト
4.0
音楽
4.0
演出
4.0

目次

バツイチからのスタート

サンディは2人の子どもがいる40歳の女性。高学歴高収入で文句のない夫と結婚しており、穏やかに暮らしていた。しかし、ある時夫の浮気が判明。即座に彼女は夫に別れを切り出し、子どもたちとともにニューヨークへと赴く。

40歳で離婚するって、日本人だったら絶対ためらうよね。子どもだってまだまだ小さいし。そこを躊躇なく別れられる潔さが好きだ。サンディ役のキャサリーン・ゼタジョーンズがまさしく美魔女で、40歳だからこその経験値と熟した美しさを見せつけてくれる。大学を卒業してすぐ結婚してしまったという彼女は、今まで子どもの世話や家事しかしたことのない女性だった。それでも、その気持ちの強さと、物怖じしない性格で仕事を勝ち取っていく。だてに長く生きてたわけじゃない。

女性らしくあることも、仕事をすることも、女性だからこその悩みがたくさんある。だけど、女性が持つ役割は男性には真似できない尊敬すべきものばかり。当たり前のように側にいてくれることも、支えてくれることも、感謝すべき存在だ。それをいいことに男はフラフラと浮気してさ…女としての価値は、歳をとればなくなるの…?まだまだだって思っているからこそ悔しいだろうし、悲しい。でもそれを正直に言葉にしてしまったら、悔しすぎて泣いてしまう。それを、アラムがうまく吐き出させてくれたというか。サンディの中にもう一度恋する気持ちが芽生えた、あのボクシング観戦が印象的だ。アラムも若いけれどバツイチだったし、お互いの未練が断ち切られたあの時が、2人の心が通じ合った時だったと思うよ。

年下男子のやすらぎ

アラムは見たままの性格でちょっと頼りない。フリーターだし、気も弱いし、永住権が欲しくてアラムと結婚したフランス人妻のことをいまだに想っている男の子。24歳で、ショルダーバッグがよく似合う…サンディよりも背が低いような人だった。でもそのおかげでサンディは彼の前では飾らずに何でも話すことができたし、サンディの子どもたちもすぐ懐いてくれて、サンディにとっての癒しの存在になっていく。

サンディは元夫に未練があったわけじゃない。だけど、何も言えずに出てきたことは後悔していた。それを吐き出させてくれたアラムは、もはやサンディにとってはかけがえのない存在。もちろん、アラムにとっても、サンディは元妻を忘れさせてくれて、自分を認めてくれた大切な存在。もはや2人は付き合わずにはいられなかった…。

年上のサンディが情熱的に攻めつつも、アラムもまたかわいらしく…アメリカバージョンの歳の差カップルってこんな感じなんだ…って新鮮だった。何となく、男女ともに野獣のようなイメージを持ってしまっていてごめんなさい。とても優しい、穏やかな時間が流れていたように思うよ。40歳にもなれば24歳のアラムは息子みたいな気分になるのかもしれないけれど、一緒にいて疲れない、やすらぎをお互いに感じることができるなら、付き合えるよね。かわいくて、若くて、そんな人が歳のいった自分を好きだと言ってくれて、愛してくれる。男は若い女が好きだろうが、女だって若い男は好きなんだよ。

付き合い続けるということ

愛し合うようになって、サンディは妊娠が発覚。アラムも大喜びで、幸せの絶頂にいるみたい。周りがそんな年下(年上)なんてやめておけ・どうせ本気じゃないんだろう?っていうけれど、君たちに彼の(彼女の)何がわかるの?って感じで、愛があふれて止まらない。バツイチ同士、今度は心から幸せだと言えるはず。そう思っていた。

サンディは子宮外妊娠とわかって子どもを流産。アラムのことが大好きだったはずなのに、八つ当たりしてしまったサンディ。「ハリーポッターなんて見ているあなたは幼い」「子連れの私よりアラムにはいい人がいる」とまた一方的に別れてしまった…。このときのアラムのセリフがすごい響くね。

君を愛している 君も僕と同じだと言ってよ…!

アラムは絶対にサンディを愛している。なのに、サンディはまた前の夫と同じように、一方的に感情をぶつけて逃げてしまったんだ。サンディが、自分が40歳という年齢で、アラムを失望させてしまったんじゃないのかとか、これは夢だったんじゃないのかとか、安らぎの要素だったものすべてが恐怖の対象に見えるようになってしまったことは確かにわかる。付き合い続けるということが怖いよね。だってもしかしたら、また女としての価値を問われて、離れていってしまうかもしれないもの。アラムはそんな人じゃないって、冷静になればわかるのにね…。案の定、サンディはアラムのことを引きずったまま、仕事に打ち込みまくってキャリアを積み上げ、恋もせずに5年という時間を使ってしまった。45歳になったらそれこそもう無理じゃん…。

それでも君が大好きだ

サンディがアラムを引きずっていたのと同じように、アラムもまたサンディをずっと想い続けていた。アラムが世界一周の旅に出たのも、サンディが「旅は若い人の特権だ」と言ったから。だから僕は旅に出ようと思ったんだよ。旅に出て、いろいろなものをみて、それを子どもに伝える仕事に就く。どんだけサンディのこと大好きなの!かわいすぎる!5年経って再会を果たし、お互いに仕事も軌道に乗っていて、順調そのもの。足りないと言えば、恋をしていないことくらい。アラムにもバングラデシュ人の息子がいた。もちろん母はなし。本当に子どもが大好きだね。それを教えてくれたのも、サンディだ。アラムにはサンディが教えてくれたことが活きる糧になっていたんだ。それがもう嬉しすぎて、発狂ものだった。

名シーンといえば、テーブルの下で強く手を握り合い、もう一度やり直すことを連想させるあのシーンだね。あれ?男の方の母親を介していることも、テーブルの下で手を握り合っていることも、「猟奇的な彼女」のラストシーンとそっくりなんだが…気のせい?「猟奇的な彼女」も好きな映画だったが、サンディとアラムの時を経た恋も違った味わいがあって、別々の映画として成立していると思う。

辛くなるくらいなら、別れなきゃよかったのにさ…サンディに別れを切り出されたら、アラムが強く動けるキャラでもないし、終わるしかなかったんだと思う。もう一度引き合わせてくれた神様に、感謝しないといけないね。お互いに一生懸命生きてきて、本当によかったね。

回り道をしてもう一度

理想の彼氏とはどういうものか?それを問うているというよりは、普通にやり直しストーリーだと思うね。バツイチ同士の恋に臆病な2人が、体裁無視して心から一緒にいたいと思える人と出会えたこと。それは離れてもまた回って戻ってくる。それを運命って呼ぶんだろうなーって…キュンキュンする。

夫に求める条件なんかより、一緒にいて幸せかどうか、愛しているといつも言えるかどうか。時間が経てばそれも当たり前になるのかもしれないけれど、アラムだったら大丈夫な気がする。お互いが願い続けていたら、必然にもう一度出会えるものなのかもしれない。きっと再会した2人は固く手を握り合ってまたベッドインだろうな…成長した子どもたちも、今回からは気を利かせてくれることだろう。

ラブストーリーはやっぱり心が穏やかになるね。アラム役のジャスティン・バーサのキョドリ具合が実にちょうどよく、草食系男子をうまく演じていたなーと思う。大人になってからだと、5年って長いようで短い。それでもサンディにとってはかなりデカい5年だろうから、1年くらいでもよかったのになーなんてことは考えてしまう。何はともあれ、ハッピーエンドは実に嬉しい。

あなたも感想を書いてみませんか?
レビューンは、作品についての理解を深めることをコンセプトとしたレビューサイトです。
コンテンツをもっと楽しむための考察レビューを書けるレビュアーを大歓迎しています。
会員登録して感想を書く(無料)

関連するタグ

理想の彼氏が好きな人におすすめの映画

ページの先頭へ