変化無き世界は楽しくない
やりたい放題の少年1人旅
こんな世界を妄想している作者って…いや、ハーレムに行きたい男は山ほどいるはず。欲望の限りを尽くしたいと思うのが人ってやつだ。
どこにでもいるような、普通な高校生である淳平。朝目覚めたら、そこは自分以外に起きている人のいない世界だった…食べ物も盗み放題、電気だって使い放題。一人になりたいと願う人にはあまりにも最高な世界だ。淳平にはそれほど欲があるわけでもなさそうだったが…恋はしていた。だから、女の人には思いっきり手を出す。だってこれは夢の世界。眠っていて目覚めないならヤッちゃってもいいよね…?どんなにおとなしそうな男の子でも、もはやそれは仕事だ。
自分一人だけが生きている世界で、他に邪魔する人は誰一人としていない。それなのにライフラインはしっかりと確保されている…作者さん、そんな世界に憧れるのはあなただけじゃない。この世界において創造主にでもなるのか?と思いきや、そんな力は淳平にはない。ただ女性たちを目覚めさせることができるってだけだ。新たな惑星として、淳平はその頂点に君臨する。驕らず謙虚にいつまでもいてほしいけれど、すべてを手中に収めた時、どんな人間に変わるだろうか…と期待をさせる始まりだった。
眠っている状態を生きているとは言えないかもしれない。いつか目覚めるなら別として、ずっと眠り続けるならどうすることもできないのだ。何かしたいと思っていてもできない。ずっと夢を見続ける。そんな世界を思うと、とてもむなしいね。楽しいのは、生きている人だけ。淳平と、淳平の出会った女性たちだけだ。
伏線を回収してください
なぜ淳平は選ばれたのか?この世界は何によってもたらされたのか?現実なのか?この世界ですらも夢なのか…?全然教えてくれない…。また、背景を省いたとしても、淳平がこの世界で何を成そうとするのか?という部分が気になっていたのに、普通に幸せに暮らし始めましたなんて言われても困る。
なぜライフラインはすべて使えるのか?人間が誰一人として管理していないのに、なぜ通常運転できているのか?その謎が解き明かされないのは、やはりこの世界が現実ではない、夢の世界だからのような気がする。実はこの「眠れる惑星」のほうで目覚めてしまう人が、現実世界では深い眠りから目覚めない状態になっている人とか。そして淳平にたまたま出会って肉体関係を持ってしまった人が、この夢の世界に引きずり込まれているとか。もっとシビアな展開がちらりとでも見えたら、それだけで十分ブラックな物語になっておもしろかったと思う。
この惑星において、淳平はがんばって女の子たちを仲間にしていくが、やはり人によっては考え方が異なるもの。夢遊病ならこの世界でも動けることがわかり、そいつらを使って目覚めさせていけばいいんじゃないかとか、派閥も出来上がる。そりゃー淳平についていきたいと思えない人がいたっておかしくない。なぜこんなやつにすべてを決める権限があるんだ?って怒りたくなるのもごもっともである。世界中どこを探してもダメなのか、それとも日本だけなのか…?でも、淳平と女の人たちだけがいたって船や飛行機が動かせるわけじゃない。それならパイロットの女の人を仲間にすればいいのか?でもそうまでして発見しようとはしない。誰も伏線回収してくれないから、最期まで意味が分からなかったよ
鍵を握る人物すらいない
深町さんに関していろいろと憶測が飛び交い、もしかしたら、彼女がキーになっているのか…?と思った。でも彼女もまた普通の女子高生であり、淳平が目覚めさせてくれたことに感謝するだけ。誰一人として答えを持たない被害者なのだった。
もはや読むことをやめようかと思った。夢遊病のくだりが出てきて、何らかの進展があるのかと期待したものの、結局淳平と直接性交渉のあった人物以外は、また眠りについてしまうことがわかり…“彼女”というポジションを作ったことで淳平が王様に君臨することにもならず、狭い世界の中で生きていく感じで…何がしたかったの?という話になってしまったからだ。
淳平が王様として君臨するわけではなく、いろいろ考えを巡らせて解決しようと挑んでくれるのは尾美たちだったし、この世界は淳平ではなく女の園になっていくのかもしれないね。ただ、この世界では、どうやら妊娠することができないらしい…。淳平は、眠れる女性たちを目覚めさせる以外に能力がないのだ。これは、淳平に問題があるわけでもなさそう。夢遊病の人でも無理みたいだからね。
惑星が望んだ世界?淳平が作り出した世界…?確かに突然変異や惑星の異変はSFと言えるのかもしれないが、因果関係がわからないまま終わらせようなんてそんなのずるすぎる。
精根使い果たすまで
当初の予想では、淳平は定期的に女性を起こし、復活させて生きていくしかないのかと思っていた。選りすぐりの人物を選ぶ、惑星の生物形態を変化させるような形で。男だって元気のないときは元気がない。眠っている女性たちを起こすのだけでも大変なのに、淳平にとっては1日に複数人数なんてきついだろう。そうすると起こせる人数も限られてくるわけで…ということで、淳平からエキスを採取することで人工授精的に女性を起こそう…ということもできるだろうね。そうやって、新しい世界になっていくのだろう。男へは効果がないらしいので、まったく別の惑星になるんだろうね。世界にたった一人の生き方を描くならまだワクワクもあるが、もはや物語の方向性はどこへ行ってしまったのやら…
いずれは子どもを産むこともできるようになるのか…?淳平とみんなが仲良く生きていくような話では、この惑星の未来は終わってるよね…。眠っている人たちは死んでいるわけではないのだから、廃用して死んでいくだろうし、子孫も残せず年老いて地球の塵と消えるだろう。
世の中って、いろいろな人たちがいるから楽しいんだよなー。そういうことを作者が伝えたかったのだとすれば健全だが、理想だけをぎゅっと詰め込んで形にした物語にそれ以上の意味がないなら残念だ。せめて、あと数巻続けてもらって、これからのビジョンやこんな眠れる惑星になってしまった原因のことを描いてもらえたら嬉しかったんだけどね。冴えない男の日常に急に添えられた花を見に、少年たちはこの漫画を読んでしまったのかもしれない。
エリコと淳平エンド
自分の思い通りになる世の中を手に入れたわけだよ淳平は。だけど、どうすることもできなかった。とりあえず、偶然才女を目覚めさせたこともあり、いろいろとわかってきたこともあったけれど、自分が王様になることだってできなかったし、そうする勇気もやる気もない。
自分の思い描く通りにならなくても、せめて小さな幸せをかみしめて毎日生きていきたいよね。そしてそれは一人では誰も評価してくれないわけで、誰かがいなくちゃかみしめるものもきっと生まれない。誰かが豚を育ててくれて、誰かがその豚を殺してさばいてくれて、誰かがそれを仕入れて販売してくれて、誰かがレジ打ちをしてくれるから自分の手元においしい豚肉がやってくる。1人でいる世界と、そこに生きる何かには、きっと価値は生まれないんだよね。一人なら成長する必要もないし、変化も考えることもしないだろう。
この漫画をエロ漫画だと思って読むと全然つまらないだろうし、こんな世界、うらやましいようで悲しいだろう?って考えるようにしていったほうが読んだかいがあるはずだ。
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