結局この世界は何だったのかわからない - 眠れる惑星の感想

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眠れる惑星

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画力
3.75
ストーリー
3.00
キャラクター
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設定
3.25
演出
2.75
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結局この世界は何だったのかわからない

3.03.0
画力
4.0
ストーリー
2.5
キャラクター
3.5
設定
3.5
演出
2.5

目次

中学生男子の夢と希望

作者が夢見た世界を表現しているというこの漫画。なんだこの楽しい世界…。

ごく普通の高校生である淳平が、いつものように朝目覚めたら、自分以外の人がみんな眠ってた。あらゆる人が眠りにつき、自分以外に誰も起きている人がいない世界。食べ物も電気も何もかもそのままそこにあり、使おうと思えばいくらでも使える。これってユートピア…?だって誰も淳平を邪魔する者もいないし、好きなように生きて、好きなように欲望を発散できるわけですよ。すごい妄想してますよね、この作者…世界に自分一人しかいなかったら、生きていることが楽しいとかつらいとか、何も感じないんだろうなーと思いました。でも現実世界で息苦しく生きていると、たまに誰も自分を知らないところで、誰にも干渉されずにただ生きていたいと願うこともありますよね。単純に男の性欲を発散させることでハーレムを作り出すってだけじゃなくて、自分以外に何もない世界を望むのは、悩み多き若者の潜在的な夢じゃないかなーという気もしてきます。そして、自分一人だと思っていた世界が一人じゃなくなるのは、やっぱり性交によって訪れるんだね…なんか神話的な感じで、人の始まりはこんなふうに、誰か一人から始まったんだろうか…とか考えちゃうよね。

確かに眠っている人たちは生きている。だけど、寝ていたら死んでいるのと同じことなんだなーというふうに思いましたね。永遠に目覚めない眠り。何かをなそうと思ってできない大人と何が違うんだろうかと、作中で深町エリコも言ってました。

なぜ淳平にだけ

なんで目覚めたのが淳平だったんですかね。最後までそれがまったく回収されないんですよ。とりあえず、淳平の住んでいるテリトリーでは、淳平しか生きてなかった。そして旅行もしてみたけど、そこでも誰も起きていなかった。どうして君が?っていうところ、教えてほしかった。特にイケメンなわけでもなく、優秀なわけでもなく、人格者であるわけでもなく、ごく普通に高校生で、男の子で、性欲旺盛である。なんかウイルスでもまき散らされたのか、日本以外はいったいどんなことになっているのか、宇宙ステーションとかはちゃんと動いているのかとか…いろいろ気になってくるんですよ。

そもそも、誰も人が活動していないのに、電気やらガスやら、爆発も何も起きずに普通に使える世界って…ちょっと無理があるよね。絶対何かはぶっ壊れる気がするんですけど、この世界ではそれだけ自動化が完璧で、ライフラインがほとんどAIによって制御可能なんですかね?なんかそういう細かいところが気になるんだよな~そう考えていると、これは単純に淳平の夢の世界なんじゃないかとか思えてくるわけですよ。実は淳平は事故で植物状態になっているとか、すでに死んじゃってて魂だけうろうろしているとか、すべてはリアルじゃない世界だったんだよ~って言ってくれるんじゃないかっていう期待もありました。それはそれでつまんなっ…って思ってしまうと思いますが。この物語は、眠り、夢、欲がテーマにあると思うので、リアルには叶わないことをとにかくつめこんだ感があるんですよ。

深町さん

深町さんに何かヒントがあるのかなーと思ったんですけど、普通の女子高生でしたね。深町さんがちょっとうんざりしてた日常を、むしろ刺激的なものにしてくれた淳平に感謝はしている様子でした。だけど、好きになって付き合うのに、何かにつけ解決するには他の女と性交渉を楽しむしかないという…彼女というポジションになれば、それは嫉妬やら憎悪やら、複雑だと思います。そりゃ姿も消したくなるわな。

淳平はいきなりその世界の主導権を握ることとなったけど、悪代官にはなってないのがむしろすごいですよね。いろいろ画策しだすのは尾美だし、むしろ命運を握っているのは女たちでした。怖いな~…女って。そして性欲に勝てない男って…全然かっこよくない。いいのかエリコさんこんなやつでも…でも女は一人で生きていくにはあまりに弱い生き物だしな…女だってムラムラする生き物だし、子孫を残そうとする本能に還れば、見境もなくなるのかもしれません。そこに男が一人しかいないなら、とりあえず…って思うだろうか。物語の中では、女たちが妊娠することはないんですよね。ただ眠りから覚めることができるだけ。じゃぁこれからこの人たちってどうやって生きていくんだろうね…?動物たちは生きているみたいだったから、とりあえず惑星が人を1回リセットしようとした世界なのかもね。いや、実際にはそんなに深い意味なんてないのかもしれないけど…エロシーンを楽しみ、ハーレムを想像して楽しむだけの物語なのかも…

この世界の運命

とりあえず、淳平が直接性交渉をしないことには、一度目覚めてもまた女性は眠りについてしまうことがわかりました。そして男への行為はおそらく意味がなく、目覚めるのは女性のみ。このままいけば、毎日何度も淳平は精根使い果たすまでがんばって女性たちをどんどん起こしていくのか…?男だってだんだん元気がなくなる生き物だし、そんな生活長く続かないよね…だから、新しい何かを増やすとすれば子どもができればいいんだけど、それもできない世界みたいだし…やっぱり夢なんじゃないの?

そして、夢遊病の人だけは動き回ることができているので、淳平たちはさらなる深さに夢堕ちしていって、結局はリアルな世界には戻ってこれないのかもしれない。延々と楽しい夢から醒めない…これって誰もがほしいと思う世界だと思いますが、実際には夢は夢で、体はそこへ持っていけない。夢の世界で生き続けることと、リアルな世界で死んでいくことと、どちらが幸せで、どちらのほうが快楽も気持ちよいのかな…楽しいだろうか?…作者は何を伝えたかったんでしょうね。自分が思い描いた世界をただ書きたかっただけなのかな。結局想像の域を出ませんが、できればあと23巻くらいかけて夢遊病や淳平についての説明をがっつり入れてほしかったなーと悔やまれます。不完全燃焼感満載なんですよ。しかもね、エロイっていっても、そんなグロいわけではなくてさらーっとしてて。画もソフトな感じだから、そんなに雰囲気もないですしね。拙い感じが逆にエロいかもしれません。男の子からすると。

現実なのか夢なのかわからない

というわけで、この眠りの惑星はいったい何なのか、誰の思惑でこんな状況になってしまったのか、全然わかりません。なんかうまい具合にいくのかなーって思ったんだけど、エリコさんと淳平が楽しくやってる描写で終わっているし、3か月後の世界がリアルなのか夢なのかもわからない。結局、尾美さんの策略通り、夢遊病の人の世界が出来上がったのかな?自分の思い通りに動かせる世界になったんだろうか?

人は自分の思い通りに事が進むことを望むけど、いざそうなったら何を思うんだろうね?全員が自分の言うことをなんでも聞いてくれたら、誰かと争うことも、傷つけることもない。永遠の夢の中で、時が進むことがない世界。成長もなければ、新しい何かが生まれる必要もない。そう考えると、思い通りの世界って全然おもしろくないんだなーって気づきますね。うまくいかないから、うまくいくように試行錯誤してどんどん自分をアップデートして強くなっていき、そしてそれが新しい命に伝わっていくんだなーってまじめに考えました。なんでも終わりがあるからがんばれるんだなって思うと、夢は夢でいいやーって。そこにできるだけ近づけようとしていることが財産なんだね~…なんか全然関係ない方向に妄想が膨らんでしまったけど、こんな世界は嫌だね!

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変化無き世界は楽しくない

やりたい放題の少年1人旅こんな世界を妄想している作者って…いや、ハーレムに行きたい男は山ほどいるはず。欲望の限りを尽くしたいと思うのが人ってやつだ。どこにでもいるような、普通な高校生である淳平。朝目覚めたら、そこは自分以外に起きている人のいない世界だった…食べ物も盗み放題、電気だって使い放題。一人になりたいと願う人にはあまりにも最高な世界だ。淳平にはそれほど欲があるわけでもなさそうだったが…恋はしていた。だから、女の人には思いっきり手を出す。だってこれは夢の世界。眠っていて目覚めないならヤッちゃってもいいよね…?どんなにおとなしそうな男の子でも、もはやそれは仕事だ。自分一人だけが生きている世界で、他に邪魔する人は誰一人としていない。それなのにライフラインはしっかりと確保されている…作者さん、そんな世界に憧れるのはあなただけじゃない。この世界において創造主にでもなるのか?と思いきや、そん...この感想を読む

3.53.5
  • kiokutokiokuto
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