30歳目前の乙女たちの恋路をリアルに
4通りの恋で大満足な漫画
ふう、円城寺、みずほ、理央。社会人になってもずっと仲良くやってきた女友達4人。女友だちで長く付き合える人っていうのは、本当に貴重で、大事にしなきゃならないもの。そんな4人は決して男経験がないわけじゃない。だけど、彼氏がいてもいなくても、うまくいっているとは言えないみたい…学生の頃の彼氏・彼女がいればリア充ってことは、大人になるほど絶対ないんだよ。付き合ってから一緒に暮らして苦労をするし、付き合えなくて苦労する悩みよりも、自分の仕事と恋を天秤にかけてしまっていることに嘆いてみたり…どちらか一方を選ぶものでもないのに、時間の費やし方が全然変わるのだ。学生までの恋とは全然違う。ましてや、彼女たちはもう三十路目前。人生の分かれ目にいるのである。
30歳手前の年齢って、経験した人なら苦労があるってわかっているのではないだろうか。それは男女問わず、みな感じているはずだ。自分の在り方とか、周囲との関係性とか、これからの将来設計とか…まじめに考えるだけじゃ全然足りない。もはや行動していなければ終わってしまうような…そんな怖い年齢なのである。そのタイミングで彼女たちが何を考え行動しているのかを見ると、安心もするし、焦りもするし…女の人ほどこの漫画は読んではどうかなと思う内容だ。今踏みとどまっていること、悩んでいることを解決して、彼女たちのように強く生きなくちゃ!って思えてくるに違いない。
メインヒロインはまず恋をせよ
ふうは全然恋がわかってない女性だった。それよりも、ブランドものや自分の欲しいものを格安で手に入れることが生きがい。お買い物の内容も大事だし、お買い物という行為自体も彼女の大事なアイデンティティだ。そんな彼女は貯金もなく、給料が入ればお買い物してしまう。生活力のない女性にドン引きする男性が多いと聞くが、奥薗のように、ふうのことをわかって好きになってくれる人もいるらしい。
女の人って、年齢重ねるほどいろいろ諦めたり、人生こんなもんって挑戦しなかったり、安全圏に入ろうとするんだよ。だから、すごくワガママな生き物なんだ。男はそれをわかった上で全部包む勢いでいかないと、ついていけない。奥薗はもはやドMなのかもしれないよね。かわいい人に振り回されて、かわいがりたいんだと思う。そのまんまでいてほしいと言ってくれる人、世の中にそんなにいない。ふうは少しずつ、お買い物よりも奥薗を優先するようになっていき、微笑ましかったな…4人のメンバーの中で一番お気楽で、幸せな奴だった。奥薗じゃなかったら、ふうは誰とも付き合えてない。そんな人と出会えた彼女はうらやましすぎるよ。自分のままでいることが相手の幸せになるっていうのは、夫婦になるうえですっっごく楽なことだ。
いったんは別れの道も見えたけれど、まさかヒロインがそんなことになるわけもなく。戻ってきてくれてよかったよ。結婚を考えていないって言った言葉の意味を、しっかりと理解しなくちゃね。恋はお買い物に似ている。だけど、お買い物みたいに、お金払ってすぐ手に入るものって一番簡単なんだよ。
百合もどきの理央
数多くのセフレを持ちながら、ふうをひそかに想う理央。クールな女医がふうを求めた理由は複雑なものであったけれど、彼女が成長できたのは、自分に好意を向けてくれる人の存在だ。理央はふうのことを本当に大事にしていたけれど、それは恋なんかじゃないんだよ。それを学んだ30歳前の恋路だったと思う。
はじめは泉。彼は理央を自分の思い通りにしたかったのかなんなのかわからないが、とにかく理央を傷つけ、みずほを傷つけた。理央は自分を責めたし、自分なんかが恋なんてできないって思ってしまっていたね。いつも仕事を本気でやって、友だちのことも全力で支えて、頑張り屋さんな女性であったからこそ、悩んでいたと思う。彼女は弱く、セフレたちとつながって自分が汚れているような雰囲気を作り出さないと、真っすぐ立っていられないような…そんな感情が読み取れる。
そして東雲だ。彼が理央を変えてくれた人。理央はどんどんかわいい人になっていったし、優しい表情ができるようになっていったと思う。理央に向けてくれる好意も、優しさも、本物をくれたのは彼だった。クールビューティーな理央に、かわいい系の東雲。でも、しっかり者で男らしい東雲は、まさに理想的であった。唯一、4人の中でまともな男を捕まえたのが理央だった。今まで頑張ってきた分、存分に甘えて、そして大切な我が子を愛していってほしいなと思うね。一番子どもが似合わなそうな人に、幸せな命を授かったこともおもしろところだ。
ウジウジしてばかりのみずほの成長
漫画家になるために頑張っていたみずほ。彼氏はミュージシャンになるためがんばる男。お互い夢を追って一生懸命だったはずなのに、いつしか夢絶たれて恋もなくなって…みずほが一番かわいい系なのに、何もかも人に頼っているところがあって、がんばり切れてないのがダメだったんだと思う。
そうしているうちに泉につかまって…そりゃー最初は運命の恋!って気がするんだよ。一生懸命愛されたら、寂しい女は嬉しくてたまらない。それがいつしか束縛とDVになり、精神的にも肉体的にも追い詰められていく。どうにか泉から解放されて、新しい人と恋を始めたと思ったら、まさかの泉の子を妊娠していたと発覚…あの編集の人なら、わかってくれたかもしれないのに、みずほは逃したくなくて、あなたの子どもだと嘘をつく。男の人にしてみれば、それはひどい暴言であり、自分を否定されたのと同じくらいの威力のある言葉。別れるしかないよ、そんなことしてしまったら。
みずほは誰よりも自分ばかり大切にし、守ってもらいたくて、強くなれない女性だった。そんな彼女が変われたのは、子どもがいたから。そして大事な女友達がいたからだ。シングルマザーになることを決意して、子どもを育てるために新しい仕事も始めた。何かのために…そうでなくては、やっぱり人間努力できないものなのだろう。そして努力を始めたら、好転していく。回り道したけれど、きっとみずほは自分の子どもを立派に育てていくだろう。
自分から誰かを求める人に
もはや円城寺に関しては、翡山に恋してからは見た目完全にふうになっていた。わざとなのかはわからないけれど、カラダの相性よりも心の相性・自分が欲しいと思えるかという基準で追いかける側に変わった円城寺を表現するためだったのかもしれない。カラダの相性がいい人と結婚したいという金持ちお嬢様は、まさか自分が追いかけられるのではなく、自らダッシュで追いかける男性が現れるなんて…思いもしなかったことだろう。奥薗のことはもうすっかり忘れて、翡山のとりこである。
そして、がんばっても手に入らないことがあると知ってしまった円城寺。パリで別のお見合い相手と結婚式を挙げることになったときは、4人の中で最も不幸かもしれないと思ったよ。愛する人がいないまま、ラストを迎えてしまうのかって…金持ちに不幸を与えたいのかなとか考えてしまった。
でも完全なる演出で!これにはビビった。まさかあの翡山が自分で息切らして円城寺をさらいに来てくれるなんて…!一番不幸なのではなく、4人の中で最も情熱的で激しい気持ちの動く恋だったということだ。
恋に年齢なんぞ関係ない。4人それぞれの見つけた大切な人。その人のために、がんばっていく。そして、4人仲良くバカなこと言って仲良くしていくのはこれからも変わらないだろう。どの恋にも共通していることは、自分で決める人間になるということ。これを女性は忘れずに生きていくべきだ。
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