男らしい生き方について - ゼロセンの感想

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ゼロセン

4.204.20
画力
3.90
ストーリー
3.90
キャラクター
4.10
設定
5.00
演出
3.90
感想数
1
読んだ人
2

男らしい生き方について

4.24.2
画力
3.9
ストーリー
3.9
キャラクター
4.1
設定
5.0
演出
3.9

目次

昭和の戦争を経験した下士官が現代に蘇った。

まず第一にこの設定がとてつもなく面白く、あらすじを想像しただけで興味を引く。戦争で散った若い男たちが今この現代に生きる若者達を見た時にどう思うのだろうかと、ふと考えさせられた。この作者の作品は常にシリアスな1本の筋の中に無数のギャグを詰め込む形で構成されているが、どの作品にも共通しているのは人間臭い主人公がいざというときにはとんでもない大活躍をして、読者にある種のカタルシスを感じさせるところだろう。いじめられっこは主人公が不良をぶちのめすシーンに溜飲を下げ、不良達は単なるギャグマンガとしてこれを消費するかもしれない。私自身はいじめられる側だったため、もしもこんな先生があの時いてくれたらなどと考えてしまう。

その男の教育は現代の教育とは一線を画すものだった。

その男が生徒たちに求めたものは学力ではなく、またクラスの和でもなく、常に「男」として恥ずかしくない行動をとるというものだった。男は嘘をついてはならない。そんなきれいごとが現代の若者に受け入れられるはずもなく生徒たちは強く反発する。しかしその男の熱い魂に触れるにつれて生徒達の心に変化が芽生え始める。これが物語の中盤の流れなのだが、あることに気が付いた。現代でもこんな男が生きている場所がある。そう、自衛隊だ。私自身はあまり出来がよくなかったこともあり教師とは良い関係を築けずに中、高と過ごしてしまった。もちろんこの漫画のように体罰を今実際に行えばすぐにその教師は職を失うだろう。しかし、今の子供たちが本当に求めているのはこの先生が物語の中で見せたような嘘偽りの無い真っ直ぐな、教育に賭ける情熱では無いだろうか?果たしてどれほどの先生が自分の背中で子供たちに何かを伝えているのだろう。また、時には恥ずかしさからか後ろめたさを感じてしまう性の芽生えについても、こんな教師ならば自然と教えてやれるのではないか。手塚作品とはだしのゲンと並べてこれを学校の図書館に置くというのは過激過ぎるだろうか?中高生にならば読ませても全く問題ないと思うのだが。

作者が伝えたかったものとは?

作者自身の理想の男の姿がこの主人公に投影されているのではないだろうか。中盤のシーンで、「なんでこの教師に褒められたらこんなに嬉しいんだ・・・。」と不良の生徒が感じている場面があるのだが、なぜなのだろう?世間一般の教師から褒められることと何がそんなに違うのだろう?そこにこそ、現在に生きる教師が失ってしまった何かが潜んでいるのだろう。我々は時に、良い事を良いと言えず、悪いことを悪いと言えなくなってしまうときがある。だからこそ、この教師の正直な生き方がこんなにも輝いて見えるのだろう。

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