フィクションながら社会の闇を見事にえぐり出した作品 - 黒革の手帖の感想

理解が深まるドラマレビューサイト

ドラマレビュー数 1,147件

黒革の手帖

4.254.25
映像
4.25
脚本
4.30
キャスト
4.75
音楽
4.00
演出
3.65
感想数
2
観た人
4

フィクションながら社会の闇を見事にえぐり出した作品

4.54.5
映像
5.0
脚本
5.0
キャスト
5.0
音楽
4.0
演出
4.0

目次

様々な社会の闇を見事に描きあげている

日本社会には、普通の生活を送っている人には見えてこないような闇があります。経営者など特権階級に登りつめてきた人々の中には、正攻法でのし上がってきた人ももちろん多いですが、しばしば汚い手を使ってきた人も少なからずいます。この作品では、後者の人々の姿が大変上手く描き出されています。物語の中で出てくるのは、節税をするために架空の口座を開設する富裕層の人々ですが、こうした悪事を働いてしまう人は実際の世の中にもいるようです。節税と一口に言っても、合法的に行える手段も数多くありますが、人間というのは欲が出てしまうもので、もっと納める税金を少なくしようと追い求めてしまうのです。そして、銀行もそうした不正を行う客はお断りすればいいはずですが、儲けのために認めてしまう場合もあるのです。こうした事態にメスを入れるのが、物語の主人公だったわけですが、主人公・元子も横領という大変な悪事を働いてしまいますし、彼女もまたそれによって富裕層への道を辿っていくわけです。「半沢直樹」のように、最後に正義が勝つという分かりやすい物語とはなっておらず、悪い人しかいないという状況が物語をより面白くし、少しだけリアルさを与えているポイントだと思います。

多くの人が知らない、銀座という街の実情が分かる

この作品では、人間の持つ悪い部分がこれでもかというくらいに描写されていますが、他にも注目すべき点があります。それは、物語の舞台となっている銀座のクラブです。銀座のクラブには守秘義務があるという話が度々登場しますが、これは本当の話です。銀座に通う人といえば企業の経営者が多く、自分の会社を運営していく上での苦悩や、お金持ちならではの特別な家庭事情があったりすることでしょう。身近な人には言えないからこそ、銀座のママに話を聞いてもらって癒されたいと思うのには無理もありません。そして、話しているうちにお酒も進んでくるので、インサイダー取引のような自分が働いている悪事についてもポロっと言ってしまう可能性があります。こうして銀座のママはお客さんの様々な秘密を握ってしまうからこそ、その聞いた話を他の人にペラペラと喋ってはいけないのです。物語の中でも、様々な客がママに様々な打ち明け話をしている場面が多く出てくるので、銀座という街の実情が浮き彫りにされていると言えます。しかし、こうしたクラブでは男女が関わりを持つわけですから、ただ単に話をしてそれで終わりとは限りません。これこそが銀座の闇の部分です。普段仕事などで精神的に参っている状況の男性にとって、本当の癒しを得るには夜の生活も充実していることが大事となります。自分の話を親身に聞いてくれる女性と肉体関係を持つことを一番望んでいるわけです。あまりに酒が入って凶暴になってしまった客に襲われて無理矢理、ということも大いに考えられます。銀座が抱えている最も闇と言える部分についても、この作品では見事に描かれています。主人公はいくら仕事だからとはいえ望まない夜の生活を送り、望まない妊娠をしてしまうことになるのです。このようにして、銀座には光と陰両方の部分があり、特に陰の部分にはしっかり焦点を当てて作品制作が行われたと言えます。

行動力があり過ぎる主人公の壮絶な人生を追うだけでも面白い

社会の抱えている闇、銀座という街の光と陰を見事に描写している作品というだけで魅力的ですが、とにかく主人公・元子のスリルに満ち溢れた人生を追っていくだけでも十分楽しめます。銀行員、しかも契約社員として普通に働いていた女性が銀座で一番若いママになるなど普通考えられませんが、フィクションとして割り切って見ると、この先の展開が全く見えないスリリングさを味わうことができるのです。そもそも、ごく普通の銀行員でありながら多額の横領をする勇気のある人など現実にいるでしょうか。この物語がフィクションたる大きな理由として、悪いことであるとは言え主人公ほど行動力を兼ね備えた人間が世の中にほとんど見当たらないという点が挙げられます。何としても立派な店を持って銀座という特殊な街でナンバーワンになりたい、というのと同じくらいの大きな野望を抱いて生きている人が、現在どれだけいるでしょうか。特に現在、若者をはじめとして日本全体が"安定志向"に向かってしまっているとよく言われます。今の世の中では、多少の失敗を覚悟してでも夢を叶えようとする人材が登場しそうな雰囲気が全く漂っていないように感じられます。だからこそ、やっていることは決して許されないとはいえ、元子の存在は現代においてあまりに特殊で、放っておけないものに感じられます。この物語が一種異様な輝きを放っているような印象を受けるのも、そうした理由からと言えるでしょう。そして、主人公は最後の最後には大変痛い目にあってしまいますが、悪事はいつまでも見過ごされないという強烈なメッセージを伝えているのも、当たり前かもしれませんが物語の魅力の一つだと思います。

あなたも感想を書いてみませんか?
レビューンは、作品についての理解を深めることをコンセプトとしたレビューサイトです。
コンテンツをもっと楽しむための考察レビューを書けるレビュアーを大歓迎しています。
会員登録して感想を書く(無料)

他のレビュアーの感想・評価

ハラハラ!ドキドキ!

まず出演者がそれぞれ個性があって役にぴったり!音楽とドラマの内容が合っていて内容に引き込まれて行きます。主演の米倉涼子さんをはじめ、主要キャストが豪華なところも見所ですね。釈由美子さんや小林稔侍さんがいい味出してます。原作も好きで読みましてが、ドラマはドラマの良さがあってとても面白いです。小説からの人も、ドラマからの人ものめり込める内容になっています。まさにサスペンス好きにはたまらない!ドラマだと思います。女の本音、怖さ、裏の顔がよく描かれている作品。実際にこんな女性がいたら‥‥なんて考えたらとても怖くなるくらいリアルな部分があって、見ていて見入ってしまいます。1人で観ても楽しめますが、夫婦で観るとまた違った視点で観れたりして楽しめると思います。また様々な人間関係が渦巻く様子を見ていて、毎回ハラハラさせられます。1話見るとまたすぐ次が観たくなっちゃう、そんな話でドロドロしたドラマが好き...この感想を読む

4.04.0
  • foomyfoomy
  • 72view
  • 521文字

関連するタグ

黒革の手帖を観た人はこんなドラマも観ています

黒革の手帖が好きな人におすすめのドラマ

ページの先頭へ