伝染病の脅威はいつでも近くにある
いよいよ現実味を帯びているからこそ怖いお話
今までに漫画、映画、あらゆるジャンルでテーマに取り上げられてきた「感染による人間の衰退」。この「エマージング」もまさにその物語の1つである。あらゆる薬もあるが、あらゆる脅威もあるこの時代で、いつでも感染するリスクがあるからこそ、読んでいると背中がざわざわしてくる作品だ。インフルエンザどうのこうの言ってる場合でなく、本当に瞬殺されるウイルスもどんどん登場し、島国日本ではいつも隔離だなんだとニュースに頻繁に登場する。
この作品では、人物画、感染とそこからの拡大、症状のグロさなど、本当に怖すぎる展開目白押しである。人間が爆発するって…だいぶやばい。しかも街中で。間違いなく感染するし、どうしようもない…あの血しぶき、久々に読んでもまだキモイシーンである。
手洗いうがいをしっかりしましょう!って言うけど、手で目を触らないとか、同じ空気吸わないとか、本当に難しい…極限までいったらそれこそ潔癖症状態で、一瞬も気の休まらないことになってしまうし。感染予防って終わりがないし、やはりワクチンってやつがいつでもあってくれないと安心できない。でも薬で戦えばまた新たなウイルスや細菌が生まれるし…いつまでも終わることの無き戦いなのである。逃げたって逃げれないなら、人間が強くなるしかないかもね。そのうちどうにかして生き残るために地球捨てようとするんじゃなかろうか。そして貧しい人は地球に取り残されて滅びそう…SF超大作がよぎる…。
感染拡大のスピードがガチで怖い
2巻という短さでひときわすごいところは、感染拡大の様子が本当に細かいところ。1人の男性がどんどん体を膨らませ、街中でいきなり血しぶきをあげて大爆発したかと思えば、その血しぶきを目とか傷口などの粘膜に触れさせてしまった人、空気感染で何かの胞子みたいなやつを呼吸で体内に取り入れてしまった人、そしてその感染者の活動するコミュニティからまた同じように感染し、どんどん拡大していく…あーこうやって人はウイルスで死ぬんだなと痛烈に感じさせる描写だ。老若男女問わず、あらゆる人間の死までのタイムリミットが近づき、本当に膨らんでいくから恐怖すぎる…。「バイオハザード」よりこえーわ。だって絶対死が待ってるからね。
とりあえず、咳が出るときは、大丈夫と思ってもマスクはしなきゃいけないと思った。ゴホゴホ咳をしまくって、どんどん感染していくところなんて本当に恐怖。自分もそうだし、大切な人を守るには、感染させたら絶対ダメだ。
そして、病院も安全じゃないなーって思えてくる。医者だって自分を守りたいし、患者助けなきゃだし、もうどうしていいかわからなくてパニックになってもおかしくない。患者はどんどん押し寄せてくるうえに治し方は未知。苦しんでる人をただ見てるしかないこの辛さもまた…苦しい。こんな病気があったら…いったいどこに逃げたらいいんだろうね…。海か?宇宙か?生き物は生きていくために進化するのだから、この争いはどちらかがくたばるまで絶対終焉しない。
登場人物の特徴
普通の女子高生を主人公に進んでいくこの物語。あかりはちょっとぽやっとしたところがあり、彼氏もこの人で十分幸せ!と言うような、高望みしない女の子。友達もいるし、彼氏もいるし、毎日大変なのは勉強くらい…そうだよね、女子高生。あかりは彼氏が好きだし、彼氏もあかりを彼なりに大事にしていて…かわいらしい2人。そんなあかりには、たまたま切り傷があって、たまたま爆発してしまった男の人の近くにいて…血を浴びてしまった。ここから始まっていく恐怖がもうね…揺さぶられる。みんな思うだろう。「私のせいじゃない」「私が何をしたって言うの?」「このまま死ぬのか?「死にたくない…」あーーー重い。顔のにやける少女漫画読んでる場合じゃない。社会問題に立ち向かわなければと思わされるよ。
そんな中で、未知のウイルス発見に歓喜する輩もいるという事実…。患者を救おうとして悩む人間もいれば、自分の功績として研究することがやっとできるんだと喜ぶ感染症研究所の室長…。人間怖いね。研究所にいれば絶対大丈夫だってか。苦しんでいる人を救うことに繋がっているのは確かなのに、なんか人間としてどうなのとか、偉そうに言いたくなる。最終的には人のためになっているからこその医療・そしてその研究なのだが、人の心が通っていないような気持ちになるのは、だいぶ悲しいことだ。事実、現実でもそういう人が多いように思う。みんな他人事だからね。
きました行政の闇
トントンと感染は進んでいき、対策もトントンと…は進まないのが怖いところ。感染症が発生したと知っても、自分たちの身を守ることに注力する官僚ども。イメージを裏切ることなく、どこまでも悪代官。自分たちはとりあえずお金を稼げればよくて、会議とかいろいろ連絡とか大っ嫌い。クリーンな政治家なんていないよ~…ってイメージをしっかりを植え付けてくる。許可が出なきゃ動けねーんだよ…!と怒るのはいつも現場だね…。何かがいつも起きるわけじゃないから、日々の業務なんて体たらくになることだってあるだろう。だけど、何か起きた時のためにあるのがあんたらなんだから、来る日に向けて消防士みたいに訓練がんばってくれよ…。もう消防士コンテストとかなんでもいいからさ…。
確かに組織を動かすとき、金も時間もかかるだろうけどさ。何のためにあるのかってこと、忘れずに仕事してほしいものだ。まぁどこの会社だって、あくどいやつらはいるだろうけどね。日本ってホント平和。殺人事件が1つ起これば大ニュース。そうだよねめったに起きないし。毎日何秒かに何十人と死んでる国からしたら、ここは別世界なんじゃないだろうか。だからと言って、わざわざ死にに行くようなことをしたいってわけではないんだけどさ。苦しむ人が目の前にいるとき、傍観者を決め込むのか、立ち上がって身を削れるか。難しい問題だけど、できればいつでも後者でありたいなーと思うね。
頼るのは抗体を持つ人間
確かにね、ウイルスがあっても生き延びられるって言う時、やはり薬を作り出すのではなくて、抗体をなぜか持っていて生きられる人からワクチンを作るっていうのが定番。今回のそのパターンだった。しかも、なんとあかりの彼氏…!確かに、キスしてても大丈夫だったもんね!その時点でこりゃー彼氏抗体持ってんなって思ったけど…そのあとは読み通り裏切るもなくトントンとウイルスは終焉していくこととなる。極論、打つ手がないとなったときに頼れるのは、そういう奇跡みたいなものしかないってことだ。
どんどん膨れ上がったあかりは、ワクチンの接種後にちゃんと標準サイズまで戻れてて、よかった。後遺症もなかったね。何より、生きていてくれたからよかった。
いつでも感染症は起こる可能性があり、場所もタイミングもまったく未知数。常にそういう得体のしれないものとの闘いは、体の中では起きてるんだよね。で、人間の免疫ってやつが一生懸命いらないものをはじき出してくれてる。改めて、人間のつくりってすごい。感謝しないといけないだろう。
いつの日か、ウイルスに全然勝てなくなる日がやってくるのかもしれない。それが一番の恐怖だろう。甘いラブな物語ばかり読んでないで、日々大切に生きていくための術をもっと学習すべきかもしれない。小学校からがっつり危機管理ってやつを教えてやってほしいね。
- あなたも感想を書いてみませんか?
- レビューンは、作品についての理解を深めることをコンセプトとしたレビューサイトです。
コンテンツをもっと楽しむための考察レビューを書けるレビュアーを大歓迎しています。 - 会員登録して感想を書く(無料)