未来日記が注目された三つの理由 - 未来日記の感想

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未来日記

4.504.50
画力
4.50
ストーリー
4.50
キャラクター
4.00
設定
3.00
演出
3.00
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未来日記が注目された三つの理由

4.54.5
画力
4.5
ストーリー
4.5
キャラクター
4.0
設定
3.0
演出
3.0

目次

我妻由乃のヤンデレの本物度合

未来日記は、与えられた特殊能力を使って戦うデスゲームものの設定を持っています。このような設定の作品は山のようにあり、人気が出ずに埋もれてしまうことも珍しくありません。
そんな中で、未来日記が特別な作品となったのには三つ理由があると思います。
一つは本作のヒロイン・我妻由乃のヤンデレっぷりです。由乃のヤンデレっぷりはあまりにも衝撃的で、未来日記を語る時に最初に出てくるキーワードになっています。
初っ端から、敵とのバトルが始まるのですが、由乃は一般人が巻き込まれていることを一切気にせずに……というよりも利用さえして主人公の天野雪輝を助けたのでした。行動だけではなく、表情も素晴らしかったですね。
未来日記の後から、ヤンデレキャラを取り上げる作品が多くなった気がします。しかし、どの作品のヤンデレキャラも我妻由乃の衝撃を越えるものではありませんでした。
由乃のヤンデレが素晴らしかったのは、作品内で由乃がヤンデレになった理由を明確に説明しており、それが非常に納得できるものだったからでしょう。だからこそ、作者も確信して由乃をヤンデレとして描写することができたのだと思います。
ループを使うことによって、キャラクターに深みを出すという手法は、のちに「魔法少女まどかマギカ」においても使われるものですね。
長い人生の時を生きていない思春期の少年少女の行動動機には、あまり深いものを与えることができないのです。だから、他の作品でトレンドだからとヤンデレを導入すると「ヤンデレだからヤンデレなのだ」という自己言及的な状況に陥ってしまいます。
ループ状況を利用した見事なヤンデレ設定だったと思います。

未来日記というガジェットを使ったデスゲームの面白さ

デスゲームものは様々なバリエーションが登場しているのですが、未来日記が工夫したのはそれぞれが能力として与えられるものを日記にした点でしょう。
これだけでかなり読む者を惹きつけることができています。
ただ、バトル自体はデスゲームとして合格点で、傑作の域にはいっていないと思います。
やっぱり、オタク作品として設定がいり込み過ぎてしまうんですね。
物語の面白さとしては、多様なキャラクターと、由乃と雪輝の関係性、そしてループを利用した入り組んだプロットのほうにあるのだと思います。ただ、未来日記と言う言葉はものすごくキャッチ―でした。(ウッチャンナンチャンの番組内での企画を思い出す人は私と同年代ですね(笑))

雪輝と由乃の関係性、それは現代の若者達の不安そのもの

最後の理由は、未来日記における由乃と主人公の天野雪輝の関係性が、まさしく現代の若者のそれに強く響くメッセージ性のあるものだったからだと思います。
未来日記の作者・えすのサカエの描く世界観は基本的に壊れています。未来日記もそうですし、次作のビックオーダーも壊れています。ここでいう壊れているというのは、あまりにも安易に神のような存在が出てくるような中二病的世界観のことを意味しています。
ある意味似たような設定のビックオーダーもアニメ化がなされましたが、未来日記ほど心惹かれるものではありませんでした。中二病具合が目立ち過ぎて、少々空回りしてしまった印象です。
では、何故未来日記は同じような状況に陥らなかったのでしょうか?
物語の終盤で、由乃はこんなことを告白します。
「私は依存できる人間なら誰でもよかった(雪輝でなくともよかった)」
由乃がここで言っているのは、現代社会における人間関係の交換可能性のことだと思います。
私達が学校社会で出会い、友達になる相手というのは偶然の産物に過ぎません。もしも、別のパラレルワールドのような世界があって、あなたが全く別の人と入れ替わっていたとしたら、友人はあなたではなくその別の人と友達になっているでしょう。
誰でもいいのです。私とあなたが知り合いになり、友達になり、親しくなることに必然性なんてないのです。世界が周回するのをみた由乃ならば、一層そう思ったでしょう。
この不安はまさに、現代の若者の不安そのものであると言えます。
これに対しての雪輝の解答は本当に素晴らしいものでした。
「(君のことが好きなのは)ずっと側にいてくれたから……」
そうです。雪輝は私とあなたが偶然出会い側にいたということを肯定的に捉えなおしたのです。
確かに誰でもよかったのかもしれません。
でもそんな時に側にいたのは、側にいてくれたのはあなただったのです。
私はこのやり取りで、未来日記は時代に名を刻む作品になったと考えています。
未来日記はオタク作品で山のような設定があり非常にごたごたしています。それでも、現代の若者の心象描写はそこらへんの純文学よりも完璧にできてしまったのです。そうした意味で、未来日記はオタク的ガジェットが大量に使われていながらも、多くの人の鑑賞に耐える作品になっているのです。まさにこの会話への流れは一つの奇跡だと思います。
そしてこの言葉こそが、エヴァンゲリオンが出した思春期の子ども達の人間関係に関する問いに対する、2000年代以降の答えなのだと思います。
シンジ君もこうやって周りの少女達に向き合えていればよかったのに……と思いますね。

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