変女における純愛回帰と優しい世界 - 変女〜変な女子高生 甘栗千子〜の感想

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変女〜変な女子高生 甘栗千子〜

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変女における純愛回帰と優しい世界

4.54.5
画力
4.5
ストーリー
4.0
キャラクター
4.5
設定
4.0
演出
4.0

目次

第一巻からの作風の変更

「変女」を現在刊行されている1巻~6巻までを通して読むと、微妙に物語の方向性が変わってきていることに気付くはずです。
「変女」はヒロインの変態女子高生・甘栗千子が「勃起」や「オナニー」などの変態的な言葉を日常的に使い、それと共に主人公の高村とエロコメディを展開する――というのが基本のフォーマットになっています。
第一巻ではほぼそれだけでした。
千子は高村を誘惑するように行動し、高村はかなりストレートに千子を性の対象としてみています。とりわけ、高村が便利屋の就職してしばらくしてからの無人島編はちょっと無理矢理感がありました。まさにエロコメ特有のシュチュエーションを無理矢理に作り出しているという感じがあったのです。
その理由としては、作者が第一巻の巻末で語っていることに理由があったと推測できます。
「この「変女」という漫画を描いた2年前はみんなに「いらない」と言われました。唯一、アニマルの編集さんが「いる」と言ってくれました。」
おそらく「変女」はそこまで期待されて立ち上げられた漫画作品ではなかったのです。なので、作者も人気を得るためにエロコメが生きるシュチュエーションを次から次へと投入していかなければならなかったということなのでしょう。
確かに第一巻における千子のキャラクターは衝撃的ですし、エロコメシーンも十分にドキドキさせてくれます。ただ、それだけの繰り返しに終わっていたとすれば、よくあるエロコメディで終わっていたと思います。

第二巻以降、甘ラブ恋愛要素を取り入れ始めた

変女がラブコメ・エロコメとして化けはじめたのは、第二巻の11話からだと私は考えます。ここまで悪く言ってしまえば、千子は主人公の高村に楽しいエロ体験をさせてくれる都合のいい女の子にしか過ぎなかったと思います。男性向けラブコメというのは総じてそうなので、仕方ないとは言えるのですが、本当の意味で読者にキャラクターに嵌まらせるためにはそれだけでは足りないのです。
第11話において初めてエロ関係以外の千子と高村の関係を作者は描き始めたのでした。
それ以降も、ギャグ回や、純粋にエロコメだけの回などの間に、こうした甘ラブ回を入れてくるようになりました。
そして、甘ラブを取り入れることで千子のキャラクターデザインもエロ重視であるだけではなく、かわいさと美しさを重視する方向に変わっていきました。
こうして二人のエロ以外の関係性を深めていくことで、より一層読者はエロコメシーンに嵌まることができますし、甘栗千子をたくさんいるエロコメの女キャラの一人から、特別なヒロインへと変えることに成功しているのです。
青年誌連載をしているエロコメはただ単純にエロシュチュエーションを繰り返しているだけというものが多いです。画力があれば一定期間は読者もついてきますが、やはり長期に渡って心をとらえ続けることはできないと思います。エロコメディでも人間関係をしっかり描かないと生き残れない時代がやってきているのです。
ただエロいだけではなくて、純愛。それが現代ラブコメのトレンドだと思います。

ライバルが弱い安心できる世界としての変女

ラブコメにおいては、強力なライバルヒロインを登場させることで、物語の緩急をつけるのがお約束です。変女にもこれまで二人の追加ヒロインが登場していますね。
いわずとしれた瀬戸流河と桃木りりです。
流河は主人公のいとこで、最初から主人公に対する好感度Maxの状態で、変女の世界に入ってきます。しかし、流河はいい子過ぎて、全く千子の恋のライバルとして機能しないのです。すぐにギャグキャラになってしまいました。流河の活躍で最近の変女はより面白くなっているのですが、ラブコメにおけるキャラクターとしては不合格なのです。
桃木りりは流河よりは、高村に接近して恋のライバルに昇格してもおかしくない感じなのですが、たぶんそこまではいかないだろうと感じさせるものがあります。
結局のところ、作者は高村を巡る女達の争いという形の物語を描こうとは思っていないのです。既に高村と千子のカップリングは強力に確定しているようにみえます。
高村と千子の二者関係を描くことに注力しているのです。
これも青年誌のラブコメの文法からは少し外れている感じですね。他の漫画だったら、流河もりりも、もっと強引に高村に迫っているはずですからね。
ただ、変女の世界は物凄く優しい世界なんです。善人しか登場しない世界と言ってしまえば言い過ぎかもしれませんが、みんな本当に相手のことを思って行動します。
こういうところも、今の読者に受けている部分なのかもしれませんね。突然「けものフレンズ」という深夜アニメが流行した原因の一つには世界観があまりにも優しいからという理由がありました。
変女の世界も、他の恋愛漫画と比べてぎすぎすしていない、とても心地の良い世界なんです。

ラブコメ・エロコメは純愛回帰しており、優しい世界が好まれる傾向になってきています。変女はそのトレンドの最先端を走っているのです。

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